昨年暮れに登場し、近年希に見る衝撃を振りまいたオーディエンス録音の『LIVE AID』。存在すら知られていなかった名門キニーの秘宝マスターで綴られた“真実のLIVE AID”は、どこまでも素晴らしく、あまりにも圧倒的でした。そんな奇跡のマスターの可能性を最大限に引き出した一大決定盤の登場です。本作に収録されているのは、もちろん「1985年7月13日ウェンブリー・スタジアム公演」。映画『ボヘミアン・ラプソディ』のハイライトにもなった伝説のステージです。『LIVE AID』は、その現場を真空パックした「超高音質オーディエンス録音」と公式DVDを超える「最高峰FMサウンドボード」の2バージョンをセットした1枚でした。本作はその2バージョンに加え、両者を融合させた第3の「マトリクス・バージョン」も収録したライヴアルバムなのです。それでは、3つのマスターを収録順にご紹介していきましょう(衝撃のマトリクス・マスターは【セクション3】。待ちきれない方は、どうぞ読み飛ばしてください)。
【セクション1:夜の部も追加された超極上オーディエンス録音】
まず登場するのが、衝撃のキニー録音。昨年発掘されるまで、誰も聴いた事のなかった名門キニーのオリジナル・カセットからダイレクトにCD化したものです。前回作の『LIVE AID』では昼のステージだけでしたが、本作ではその後に発掘された別カセットの夜の部も追加収録。当日夜(21:48)にフレディとブライアンだけで再登場して演奏した「Is This The World We Created?」もキニー・サウンドで楽しめます。大ヒットしただけに多くの方がご存じと思いますが、そのサウンドは超極上。その空気感が透き通っており、演奏も歌声も真っ直ぐ手元に飛び込んでくる。そして、オリジナル・マスターならではの鮮度が圧倒的。恐らくは録音してから33年間、ほとんど再生されたことがないのでしょう。ダビング劣化も経年劣化もほとんど見られず、歪みもフラつきもない。広大な大歓声まで端正なサウンドが終始微動だにしないのです。そして、圧倒的なのはリアルな臨場感。4人の登場から声援が飛びますが、フレディが「Bohemian Rhapsody」のイントロをつま弾くや一気にウェンブリー鍋が一気に沸騰。きめ細かくも広大な大合唱が吹き出す。そのぶ厚さと美しさ。映画やテレビ中継でも感動のシーンでしたが、現場に立つ感覚はまるで別次元。その後も盛大に盛り上がる「Radio Ga Ga」、7万2000人が一体となる「Day-O」、フレディがカメラに顔を近づけるシーンで沸騰する「Hammer To Fall」、演奏をかき消さんばかりの手拍子が渦巻く「Crazy Little Thing Called Love」、遂にピークを超えた盛り上がりで観客がシンプルなビートさえ見失う「We Will Rock You」。そして、奇跡の中の奇跡を起こす「We Are The Champions」……。プロショットを飽きるほど見続け、映画でも確かめた伝説の現場。そのただ中に立つ奇跡のオーディエンス・マスターです。
【セクション2:最高峰ステレオ・サウンドボード】
2本目のマスターも『LIVE AID』で大好評となったステレオ・サウンドボード録音の最高峰版。こちらもまったく同じではなく、QUEENを紹介するシーンも収録した長尺版。ここでは警官に扮した英国のコメディアン:故メル・スミス&グリフ・リース・ジョーンズが登場。7万2000人を大いに沸かせる。凄まじい大歓声にたじろぎながらもユーモラスにQUEENをコールし、フレディが軽快に走り込んでくる“あのシーン”に繋がるのです。このトーク・シーンは公式DVDにも収録されず、ショウのムードをさらに高めてくれる貴重なシーンです。それ以上に重要なのはサウンドそのもの。このショウは公式にDVD化もされているわけですが、マニアから「ベスト」とされているのは当時のFM放送の方。別に公式DVDのサウンド・クオリティに問題があるわけではないのですが、大歓声をステレオ感たっぷりに被せた代わり?に演奏の定位が中央に寄っており、ほとんどモノラルに近いほど固まっていました。それに対し、FMサウンドボードは生中継だけに観客の唱和は薄く(それでも入るほど盛り上がっているわけですが)、演奏と歌声自体が超ビビッド。「Radio Ga Ga」イントロのシンセ音が右から流れ、ジョン・ディーコンのコーラスがちゃんと左から歌いかけてくるのです。
【セクション3:初登場のマトリクス・マスター】
さて、最後に控えるのが本作最大の命。浸透となる第3の「マトリクス・マスター」です。上記のキニー録音と最高峰サウンドボードを精緻にシンクロさせているのですが、その効果たるや絶大……と言いますか、このスペクタクルは一体何なんだ!? 耳タコなオーディエンスとサウンドボードがシンクロしているだけだというのに、まったくの別次元なのです。これが凄まじい。あまりにも凄まじい。オーディエンス録音最大の魅力であった7万2000人のコーラス隊によるぶ厚いぶ厚い大合唱が巻き起こり、そのド真ん中をサウンドボードで力強さを増したフレディの歌声が突き抜け、支配する。それが描くスケールは、もう空間そのものが違う感じ。オーディエンス録音でもフレディの歌声はしっかりと捉えられていましたが、それは大観衆の唱和を「掻き分ける」感じで届いていました。つまり「観客の向こうにQUEENがいる」という客席の空間感覚。それに対し、このマトリクスは異空間。フレディの声をサウンドボードの直結感で間近に感じつつ、大観衆も肌感覚。そのフィフティな存在感で描かれると、本当に7万2000人のコーラス隊がフレディ1人に寄り添い、「付き従っている」感覚を生んでいる。その感覚はオープニングの「Bohemian Rhapsody」から背筋ゾクゾク。あのアルペジオで真夏の夕立のように沸き上がった喝采が蠢き、歌詞を伴ったメロディに姿を変えていくのです。しかも、それが凄まじい一体感・統一感にもなっている。100%本生リアルなオーディエンス録音を被せているというのにガヤガヤとした騒がしさがなく、唱和も透き通っている。空気を伝わるわずかなタイムラグもなくフレディの歌声と綺麗にシンクロ。この感覚はバンドと観客と言うより、指揮者とオーケストラの域。誰ひとりの例外もなく現場の全員がフレディの一挙手一投足、歌詞の1語1語に集中しており、共に音楽を創り出している。豪雨が美しく歌い、それと一体化して自在に指揮するフレディ……まさに異次元感覚です。もちろん、その一体感は合唱だけでなく演奏にも及ぶ。ギターも細やかならビートもド直球。その鮮やかサウンドボードと14万4000の掌が奏でる手拍子がリズム隊と完全に一体化。特に「Radio Ga Ga」や「Crazy Little Thing Called Love」のような手拍子ナンバーが凄い。まるでウェンブリー・スタジアムそのものが1つの巨大なスピーカーになってビートを吐き出しているかのよう。その大波が当たって崩れる「We Will Rock You」イントロの拍手の海も広大なら、あっと言う間に整然とさせてしまうフレディの歌声もサウンドボードで恐ろしく強靱。そして、あの「We Are The Champions」。オーディエンス録音では天上から降り注ぐ、フレディの声が群衆の唱和を優しく導くスペクタクルでしたが、本作は違う。フレディが巨大な群衆と一体化しながら先頭に立ち、「我々は勝者だ!」と凱歌を挙げている。その力強さはオーディエンス録音を凌ぎ、沸き上がる高揚感は最高峰サウンドボードでさえまったく足下にも及ばないのです。さらに言えば、フレディの歌声自体も一層美しい。サウンドボードが骨太な芯を提供し、そこにオーディエンス録音が肉厚な鳴りを添える。前回盤を体験された方なら、オーディエンス録音もオープン会場ならではの反響なしサウンドなのはご存じと思いますが、反射はしなくても伸びがある。7万2000人の頭上に広がる晴天の虚空へ吸い込まれていくような伸びやかさ。それが芯丸出しのサウンドボード音に更なるスペクタクルと高揚感を与えている。シンプルなアコギと歌声だけで描く「Is This The World We Created?」の何と美しい事か……。これまでも巨大なスタジアムを自在に操ったパフォーマンスは語り草となり、今や映画にもなった。本作はその巨大な交歓を異次元のサウンドで体験できる。なぜ、このショウが奇跡だったのか。なぜ、7万2000人の心がかき乱され、時間の試練を超えて伝説となったのか。ステージ側のサウンドボードと、客席側のオーディエンスの両面が揃ったマトリクスだからこそ、1つになったドデカいスケール感と凄味が一層鮮烈に感じられる。マスターの個性によっては、必ずしもマトリクスが良い物になるとは限らないのですが、本作は見事な相乗効果を生み出している。奇跡のステージは幾重にも奇跡を起こしている。その事実自体に震えが止まらないライヴアルバムなのです。「Is This The World We Created?」も発掘されたオーディエンス編、イントロダクションも追加されたサウンドボード編。そして、奇跡と奇跡の組み合わせが未曾有の高みを描き出すマトリクス・マスター。大ヒットを記録した衝撃作が究極形に昇華した1枚です。2019年を生きるすべてのロックファンに味わって頂きたい至福。
Live at Wembley Stadium, London, UK 13th July 1985 PERFECT SOUND(from Original Masters) (77:29)
Original Audience Recording ★キニーテープ。オーディエンス録音 01. Intro 02. Bohemian Rhapsody 03. Radio Ga Ga 04. Day-O 05. Hammer To Fall 06. Crazy Little Thing Called Love 07. We Will Rock You 08. We Are The Champions
Freddie Mercury & Brian May 09. Intro 10. Is This The World We Created? Stereo FM Broadcast Recording ★ラジオ放送音源なのでステレオ収録 11. Griff Rhys-Jones & Mel Smith Introduction ★FMステレオ版
12. Bohemian Rhapsody 13. Radio Ga Ga 14. Day-O 15. Hammer To Fall 16. Crazy Little Thing Called Love 17. We Will Rock You 18. We Are The Champions Freddie Mercury & Brian May 19. Is This The World We Created?
MATRIX: Audience Recording & FM Broadcast Recording ★奇跡のマトリックス・サウンド 20. Griff Rhys-Jones & Mel Smith Introduction 21. Bohemian Rhapsody 22. Radio Ga Ga 23. Day-O 24. Hammer To Fall 25. Crazy Little Thing Called Love
26. We Will Rock You 27. We Are The Champions Freddie Mercury & Brian May 28. Is This The World We Created?





























