ロン・“バンブルフット”・サールが加入した新生ASIAと、激レアなセットのYES。両雄がステージを分け合う豪華ライヴセットが登場です。そんな本作に収められているのは「2019年6月12日ベツレヘム公演」。この日は、現在話題沸騰中の最新ツアー“ROYAL AFFAIR TOUR”の初日でした。このツアーはYESをメイン・アクトに、ASIA、THE MODDY BLUESのジョン・ロッジ、アーサー・ブラウンをゲストに迎えたCARL PALMER’S ELP LEGACYが参加。本作は、そのうちYES編/ASIA編の極上ライヴアルバムと映像をセットした4枚組オーディエンス・セットです。それでは、それぞれ個別にご紹介していきましょう。 【ディスク1:ASIA編のフル・ライヴアルバム】 まず登場するのは、“ROYAL AFFAIR TOUR”でも最大の注目株となったASIA。何しろ、ヴォーカル&ギターとしてロン・“バンブルフット”・サールが加入した新生ASIAの初舞台なのです。2017年にジョン・ウェットンが亡くなってからベース&ヴォーカルを務めていたビリー・シャーウッドは今回も参加しているものの、やはり専任シンガーとしては力不足でした。その点、バンブルフットは元GUNS N’ ROSESの凄腕ギタリストとして有名ですが、ヴォーカリストとしても一流。新たなるアンサンブルで甦る名曲群が注目されたわけです。そんなフルショウを伝える本作は、まさに極上のオーディエンス録音。近年のプログレ録音で名作を連発している現代の名手「Tapehead2」氏が公開したマスターで、その名声を一段と高めるであろうハイクオリティ・サウンド。距離感をまったく感じさせない極太の芯が耳元に飛びこみ、ディテールまで超鮮明。ホール鳴りもヘッドフォンで耳を澄ませてやっと気づく程度の極々うっすらとしたもので、丸出しのPA音を艶やかに彩りこそすれ、曇りや濁りは一切起こさない。まさに「まるでサウンドボード」と呼ぶに相応しい超の付く極上サウンドなのです。そのサウンドで描かれるショウがまた絶品。何より気になるバンブルフットの歌声ですが、これがピタッとハマッている。ウェットンほどの甘みはありませんが、声質が似ているために違和感なし。しかも、元キーで名曲本来の姿を聴かせてくれるのです。その名曲群も注目。『時へのロマン』から『アストラ』までの大代表曲を厳選しているわけですが、それだけでもない。さらにBUGGLES「Video Killed the Radio Star」やEL&Pの「Lucky Man」も折り込み、ジェフ・ダウンズやカール・パーマーの見せ場も用意されているのです。そんなショウの後半には、もう1人のオリジネイター:スティーヴ・ハウも登場! 『時へのロマン』からの必殺4連発「Wildest Dreams」「Sole Survivor」「Only Time Will Tell」「Heat of the Moment」でプチ再結成を果たすのです。 【ディスク2-3:YES編のフル・ライヴアルバム】 聴きどころ満載なAISAだけでもお腹いっぱいですが、さらに続くYESも凄い。今年2月の来日公演も記憶に新しいものの、今回はコンセプトを変え、大胆なレア曲をたっぷり演奏してくれるのです。オープニングから『TIME AND A WORD』の「No Opportunity Necessary, No Experience Needed」が飛び出し、先日の日本公演でも聴けなかった「America」や「Going For The One」を畳みかけ。さらにGTRの「Sketches In The Sun」を披露したかと思えば、久々の「Onward」やら18年ぶり(!)の「The Gates Of Delirium」やら。極めつけは『BIG GENERATOR』の「Rhythm Of Love」。セット入りが15年ぶりではあるものの、現行ラインナップで“90125 YES”の体験者はアラン・ホワイトだけだというのに、なぜこの曲を……。そのアランもポイント。ショウの大半はジェイ・シェレンがドラムを務めているのですが、この「Rhythm Of Love」から終演までの4曲はアランにスイッチしている。そして、その4曲の中には、なんとジョン・レノンの「Imagine」も披露しているのです。もちろん、この歴史的名曲のオリジナル・ドラマーはアラン。YESとしてはこの日が全世界初演であり、ちょっと試すような遊びではなく、しっかりとフル演奏しています。1つひとつが美味しい名曲だらけなのですが、その構成も捻りが利いている。今回演奏された12曲は、すべて異なるアルバムからのセレクトなのです。特に時系列ではないものの、1曲1曲で長いキャリアを飛び交い、トータルで歴史を総括するようなショウなのです。遅れましたが、そんなフルショウを記録したクオリティがまた超・極上。実はディスク1のAISA編と同じ「Tapehead2」氏の作品でして、こちらも完全サウンドボード級の超絶録音。もちろん、単に音質が超絶名だけでなく、統一感もバツグンに2ステージを楽しめるのです(こうなるとジョン・ロッジ編やCARL PALMER’S ELP LEGACY編も聴きたくなるのが人情ですが、どうやらTapehead2氏は録音できなかったようです)。 【ディスク4:AISA/YESの映像編】 最後は、そんな話題のステージを目撃できる映像編です。フル映像ではなく、合計4曲の短さが残念なものの、中身が特別。まず、セレクトですが、AISAはスティーヴ・ハウが合流した「Sole Survivor」「Only Time Will Tell」ですし、YESも18年ぶりの「The Gates of Delirium」を約24分のフルで収め、さらに全世界初演の「Imagine」も収録している。一番の見どころを合計40分に渡ってキッチリ体験できるのです。さらに、クオリティも特別。実は、この映像を撮影したのはディスク1-3と同じ「Tapehead2」氏。もちろんサウンドが超極上なのは当然ですが、光景まで強烈だから恐れ入る。ステージ左寄り(ハウ寄り)から斜めに撮影されているものの、それ以上の詳しいポジションが分からない。何しろ、観客の姿がまったく入らず、視界全部をステージだけが占領。大騒ぎする客層ではないとは言え、その直視ぶりは通常のオーディエンス殺意とは次元が違い、まるで客の入っていないリハーサルを撮影しているかのようです。そして、そのステージを描く最新デジタルの高画質ぶりも圧倒的。各メンバーのプラチナ・ブロンドの1本1本まで鮮やかなだけでなく、衣装の繊維やモニター・スピーカーの編み目までクッキリ。ステージには各所にスクリーンが設置されて色とりどりのイメージCGが流されているのですが、そのLEDの粒まで分かるほど。まさに肉眼感覚の超高画質なのです。しかも、その画質のままグイグイとズームまでしていく。名テーパーが必ずしも撮影の巧者とは限らないわけですが、「Tapehead2」氏は間違いなく超一流の二刀流。返す返すも4曲・40分の尺が残念なものの、その匠の業はしっかりと味わえるのです。現代のギターヒーローを迎えて新章を切り拓いたASIA、激レア曲満載の新たなセットで長いキャリアを総括したYES。その双方を現代の名手が腕に寄りをかけて記録しきった大傑作です。“ROYAL AFFAIR TOUR”の第一報にして、ズバ抜けたクオリティの4枚組。 Live at Sands Bethlehem Event Center, Bethlehem, PA, USA 12th June 2019 ULTIMATE SOUND ASIA Disc 1(51:41) 1. Intro 2. Go 3. Don't Cry 4. Video Killed the Radio Star 5. The Smile Has Left Your Eyes 6. Lucky Man 7. Keyboard Solo (Cutting It Fine excerpt) 8. Wildest Dreams * 9. Sole Survivor * 10. Only Time Will Tell * 11. Heat of the Moment * Geoff Downes: Keyboards, vocals Carl Palmer: Drums Billy Sherwood: Bass, vocals Ron "Bumblefoot" Thal: Guitar, lead vocals Steve Howe: Guitar * YES Disc 2(47:43) 1. Firebird Intro 2. No Opportunity Necessary, No Experience Needed 3. America 4. Going for the One 5. I've Seen All Good People 6. Sketches in the Sun 7. Siberian Khatru Disc 3(59:28) 1. MC 2. Onward 3. Tempus Fugit 4. Rhythm of Love 5. The Gates of Delirium 6. Imagine 7. Roundabout DVD(39:31) ASIA 1. Sole Survivor 2. Only Time Will Tell YES 3. The Gates of Delirium 4. Imagine COLOUR NTSC Approx.40min. Steve Howe: Guitar, vocals Alan White: Drums, percussion (last 4 songs) Geoff Downes: Keyboards, vocals Billy Sherwood: Bass, vocals Jon Davison: Lead vocals, guitar Jay Schellen: Drums