波乱を極めるYES史にあっても特別すぎるパトリック・モラーツ時代。その現場を伝える新たな大傑作ライヴアルバムが登場です。そんな本作に収められているのは「1974年12月1日バトン・ルージュ公演」。その極上オーディエンス録音です。モラーツ時代には“RELAYER TOUR”と“SOLO ALBUM TOUR”の2つのツアーがあったわけですが、本作は“RELAYER TOUR”の方。まずは、その全景を振り返り、ショウのポジションを確かめてみましょう。●1974年《8月:パトリック・モラーツ加入》・11月8日-25日:北米#1a(13公演)《11月28日『リレイヤー』英国発売》・11月28日-12月4日:北米#1b(6公演)←★ココ★ 《12月5日『リレイヤー』米国発売》・12月5日-17日:北米#1c(12公演)●1975年・4月15日-5月17日:英国(24公演)←※公式映像・6月17日-7月25日:北米#2(32公演)・8月23日:レディングフェス出演 これが衝撃の名作『リレイヤー』に伴う活動全景。ツアーは北米と英国だけで行われ、1974年は北米のみ。1975年の「英国」レッグの前後からは各メンバーがソロアルバムを作り始めています。本作はそんなツアーの序盤。『リレイヤー』の北栄リリース直前だった「北米#1b」3公演目にあたるコンサートでした。 まだ新生YESをスタジオアルバムで聴いていない時期のショウだったわけですが、そんな現場を真空パックした本作は、まさに絶品のオーディエンス録音。実のところ、このショウは以前から録音が知られてきましたが、本作はそれとは異なる。近年になって発掘されたもので、マスター・カセットからデジタル化されたと言われるものなのです。実際、その芯は力強く、実に瑞々しい。テープヨレや細部の潰れなどアナログ・ダビングによる劣化が見られず、距離感もないオンな演奏と歌声がグイグイと迫ってくる。さらに素晴らしいのは鳴り。極わずかにヒスも感じられるものの、ヘッドフォンで耳を澄ませてようやく気づくほどホール鳴りがうっすらとしており、詳細なディテールを隠さない。それでいてまったくないのとも異なり、極々わずかな鳴りがコーラスワークやキーボードの荘厳さを見事に演出している。そのダイレクト感と美しさの両立はちょっとしたFMサウンドボードのようでさえあるのです。このツアーのオーディエンス録音と言えば、ブリストル公演やハリウッド公演、ロングビーチ公演などが代表的ですが、本作もその列に加わるであろう新たなる大傑作なのです。そんなサウンドで描かれるのは、シンフォニック・ロックの極地を描きながらジャズ・ロック風味も吸い込んだモラーツ時代の大熱演。セットはツアー初期の標準的なもので、『リレイヤー』全曲+『危機』2曲+「Ritual」「Roundabout」という構成。何よりも素晴らしいのは新たなアンサンブルに発奮するエネルギー。『リレイヤー』の生演奏も凄絶ですが、それ以上なのが過去のレパートリー。モラーツは要のフレーズは踏襲しつつもリックの完コピを目指す気はないようで、そこここに独特なフレーズで切り込んでいく。他のメンバーもそのフレーズに反応するように激しく、ジョンのヴォーカルでさえ叫びに近いアグレッションを発散している。華麗さよりも鋭さを増した大曲たちは、まさに『リレイヤー』風に生まれ変わっているのです。そのアンサンブルはこれまでもさまざまなライヴアルバムで親しんできましたが、本作はツアー序盤だからこそ苛烈。ツアー開始から16公演目というタイミングだけあって互いの呼吸感を完全に掴みつつ、慣れも疲れもない。そのフレッシュな勢いが走るフレーズを一層鋭くしており、アグレッションで知られる“RELAYER TOUR”の旨みをいやがおうにも掻き立てているのです。キース・エマーソン&リック・ウェイクマンという2大巨匠の後任を務めた唯一の男、パトリック・モラーツ。そんな彼が大全盛にしてシンフォニック・ロックの化身であったYESナンバーを塗り替えていく。そのフル・ショウを極上サウンドで本生100%体験できるライヴアルバムです。 Live at Louisiana State University, Baton Rouge, LA, USA 1st December 1974 TRULY AMAZING/PERFECT SOUND(UPGRADE) Disc 1(74:10) 1. Firebird Suite 2. Sound Chaser 3. Close To The Edge 4. To Be Over 5. The Gates Of Delirium 6. And You And I Disc 2(33:35) 1. Ritual 2. Roundabout Jon Anderson - Vocals Steve Howe - Guitars Chris Squire - Bass Patrick Moraz - Keyboards Alan White - Drums