昨年フェアウェル・ツアーを終え、引退するかとも思われたポール・サイモン。そんな彼の最新ショウを記録した超・極上ライヴアルバムが登場です。そんな本作に収められているのは「2019年8月14日マウイ公演」。その全貌を真空パックした超絶級オーディエンス録音です。本作最大のポイントは素晴らしすぎるにもほどがあるサウンドにあるのですが、まずはショウのポジション。ポール最後のワールド・ツアー“HOMEWARD BOUND: THE FAREWELL TOUR”は昨年9月に終了したものの、それは“ツアー生活からの引退”であって音楽活動は続行。2019年もイベント的ながらショウを行っています。彼の近況を知る意味でもその全景から確かめてみましょう。・1月28日+4月15日:TV出演・8月9日:オークランド公演・8月11日:サンフランシスコ公演・8月13日:マウイ公演・8月14日:マウイ公演 ←★本作★ これが現在までに公表されている2019年のスケジュール。TV出演パフォーマンスを除くステージ・コンサートは全4公演。その最後はハワイのマウイ島で2夜連続公演でした。本作はその最終日のライヴアルバムなのです。そんなショウを記録した本作のサウンドは、まさに「超」をズラズラと並べたい極上のオーディエンス録音。何よりも素晴らしいのは……すべて。芯は力強くも美しく、空気感はクリスタル・クリアに透き通って隅々まで鮮やか。現場となった“A&B AMPHITHEATER”は、小さな小屋状のステージを広場が囲むスタイルで、音を反響させる壁も一切ない。そのため、ホール鳴りがそもそも存在せず、ハワイの空へ伸びていく演奏がとにかく綺麗に記録されている。もちろん、野外は風の影響を受けやすく、遠くボケボケになることも珍しくない。しかし、本作にその懸念はまったくなし。ヘッドフォンで耳を澄ますと完全なゼロ距離でもないようですが、それさえ歌声やストリングスの美しさを倍加させている。もはや、サウンドボードかオーディエンスかといった区別さえ意味を成さない美の世界なのです。そんなサウンドで描かれるショウは、歴代の名曲群や美味しいゲスト共演もたっぷり。セットは基本的に“THE FAREWELL TOUR”を踏襲しつつ、似て非なるたもの。ここで、その内容を整理しておきましょう。●BRIDGE OVER TROUBLED WATER(3曲)・Bridge Over Troubled Water、The Boxer、Cecilia ●PAUL SIMON(2曲)・Mother & Child Reunion、Me & Julio Down By The Schoolyard ●STILL CRAZY AFTER ALL THESE YEARS(2曲)・50 Ways To Leave Your Lover、Still Crazy After All These Years ●GRACELAND(5曲)・The Boy In The Bubble、That Was Your Mother、Diamonds On The Soles Of Her Shoes、You Can Call Me Al、Graceland ●THE RHYTHM OF THE SAINTS(4曲)・Can't Run But、The Obvious Child、Spirit Voices、The Cool, Cool River ●その他(6曲)・The Sound Of Silence(SOUND OF SILENCE)、Late In The Evening(ONE-TRICK PONY)、Rene & Georgette Magritte With Their Dog After The War(HEARTS AND BONES)、Dazzling Blue(SO BEAUTIFUL OR SO WHAT)、Wristband(STRANGER TO STRANGER) ・ケオラ・ビーマー共演:Sea Breeze、Honolulu City Lights ……と、このようになっています。ソロの黄金時代『GRACELAND』『THE RHYTHM OF THE SAINTS』を軸としつつ、「The Sound Of Silence」から『STRANGER TO STRANGER』ナンバーまで幅広くキャリアを網羅。フェアウェル・ツアーでは演奏しなかった「Cecilia」も復活していますが、これ珍しいだけじゃない。この曲ではマイケル・マクドナルドがゲストとして登場。ビリー・プレストンの「Will It Go Round in Circles」とのメドレー・アレンジで共演しているのです。んな中で見慣れないのが「Sea Breeze」「Honolulu City Lights」ですが、これもゲスト参加曲。ハワイのケオラ・ビーマーとの共演なのです。ケオラはスラックキー・ギターの名手で、彼の兄弟カポノ・ビーマーとの『HONOLULU CITY LIGHTS』は表題曲をカーペンターズがカバーしたことでも知られる。本作は、そんな『HONOLULU CITY LIGHTS』の代表2曲でポールと共演しているのです。オーディエンス録音ほど技術の進歩を実感するものはありませんが、本作のサウンドはそんな2019年の最先端と言っても良いでしょう。生々しい喝采や暖かい唱和の臨場感のためにサウンドボードと間違えたりはしませんが、そのサウンド・クオリティはこれまでの客録の常識を超えている。単にビビッドなのではなく、最新オーディエンス録音だからこそ実現し得た美のライヴアルバム。そのサウンドで彩られた、歴代の名曲たち……。まさに2019年だからこそ体験し得る音楽記録の至宝。 A&B Amphitheater at the Maui Arts & Cultural Center, Kahului, Maui, Hawaii 14th August 2019 ULTIMATE SOUND Disc 1(51:01) 1. Late In The Evening 2. The Boy In The Bubble 3. 50 Ways To Leave Your Lover 4. Dazzling Blue 5. That Was Your Mother 6. Mother & Child Reunion 7. Me & Julio Down By The Schoolyard 8. MC 9. Rene & Georgette Magritte With Their Dog After The War 10. Can't Run But 11. MC 12. Bridge Over Troubled Water Disc 2(74:21) 1. The Obvious Child 2. Wristband 3. Spirit Voices 4. The Cool, Cool River 5. Diamonds On The Soles Of Her Shoes 6. You Can Call Me Al 7. Graceland 8. Still Crazy After All These Years 9. Sea Breeze (with Keola Beamer) 10. Honolulu City Lights (with Keola Beamer) 11. The Boxer 12. Cecilia (with Michael McDonald) 13. The Sound Of Silence