来年の来日公演が発表されただけでなく、いよいよマニア狂喜の1969年ナッシュビル・セッションがブートレグ・シリーズ最新作にてオフィシャル・リリースと盛り上がるボブ・ディラン。リリースで白羽の矢が立ったのは10月14日のパロ・アルト公演。そもそも10月から始まったアメリカ・ツアーはマニアの間で話題沸騰していまして、まずは15年以上に渡ってディラン・バンドのドラマーとして重責を担っていたジョージ・リセリが脱退、代わりに初期パール・ジャムに加わっていた経験のあるセッション・ドラマー、マット・チェンバレンが加入。さらに一年に渡ってチャーリー・セクストン一人だったギタリストもボブ・ブリットというセカンド・メンバーが加入。久々にバンドに新しい風が吹きました。とどめはディラン自身も毎晩のステージのオープニングでギターを弾くという、俄然ギター色が強まったライブサウンドの変化も大きな話題を呼んでいます。こう言っては何ですが、昨年夏までのスチュ・キンボール(セカンド・ギタリスト)が在籍していた時代は良くも悪くも円熟味が進むサウンドとなっていた感がありました。彼が抜けて過度期となった今年の夏までを経過し、新メンバー二人の加入は早くも絶大な効果をもたらしてくれています。ライブ序盤の「Highway 61 Revisited」、あるいは後半で畳みかけるように演奏される「Thunder On The Mountain」と「Gotta Serve Somebody」で俄然ロックなサウンドに生まれ変わった演奏は強烈。特に後者は昨年の夏に導入されたブルース・アレンジよりも今回のバージョンを好まれる人の方が多いのでは。それに何と言ってもディランが絶好調。昨年のフジロックでも素晴らしいステージを披露してくれたのは記憶に新しいところですが、正に老いてなお盛んを実践しているかのようですらある。そんな彼が例のライブ後半で披露されるロックな二曲でハイパーな調子で歌い上げてくれるのだからびっくり。どう考えても78歳のステージ・パフォーマンスだとは思えません。こうした最高の演奏内容に輪をかけて音質がまた極上というのがまた何とも魅力的。それはもうパーフェクトなオーディンス録音なのです。素晴らしくオンな音像であるのはもちろん、中でもディランの声とバンドの重鎮たるトニー・ガーニエのベースの近さは圧巻。こんな極上オーディンスだからこそ、いち早く聞きたいもの。そして10月からのツアーで世界中のマニアをアッと言わせたのが80年代ディランの名曲「Lenny Bruce」10年ぶりのライブ復活。そのアレンジとディランの歌いっぷりがまた見事で、レパートリーとしてのブランクをまったく感じさせません。先に挙げたロックなアレンジの曲でのアッパー感が際立ちますが、それと相対するようにじっくりと歌い上げる姿も感動的。こうした現在のツアーならではのエッセンスが凝縮された一日と言え、おまけに音質がまた抜群という別格オーディエンス・アルバムが最速リリース。全体を通してディランの好調ぶりも際立っている。 Live at Frost Amphitheater, Palo Alto, CA, USA 14th October 2019 TRULY PERFECT/ULTIMATE SOUND Disc 1(51:46) 1. Intro 2. Beyond Here Lies Nothin' 3. It Ain't Me, Babe 4. Highway 61 Revisited 5. Simple Twist Of Fate 6. Can't Wait 7. When I Paint My Masterpiece 8. Honest With Me 9. Tryin' To Get To Heaven 10. Make You Feel My Love 11. Pay In Blood Disc 2(51:59) 1. Lenny Bruce 2. Early Roman Kings 3. Girl From The North Country 4. Not Dark Yet 5. Thunder On The Mountain 6. Soon After Midnight 7. Gotta Serve Somebody 8. Ballad Of A Thin Man 9. It Takes A Lot To Laugh, It Takes A Train To Cry Bob Dylan - vocals, guitar, piano, harp Charlie Sexton - guitar Donnie Herron - steel guitar, violin Matt Chamberlain - drums Bob Britt - guitar Tony Garnier - bass