名作『RUMOR AND SIGH』がグラミー賞にもノミネートされ、一段と注目を集めていた1991年のリチャード・トンプソン。そんな中で実現したデヴィッド・バーンとの共演ショウのサウンドボード・アルバムが登場です。そんな本作に収められているのは「1991年3月7日ポーリング公演」。コンサート会場としても有名なクラブ“TOWNE CRIER CAFE”で記録されたステレオ・サウンドボード録音に加え、貴重極まる共演サウンドチェックまで収録した3枚組です。トンプソンのツアーはソロとバンド形式が入り交じるために複雑ですが、この日はソロ・ツアーにバーンも参加しました。その辺の事情をイメージするためにも、当時スケジュールからショウのポジションを探ってみましょう。★2月18日-3月14日:北米#1(26公演)←【ココ】《5月『RUMOR AND SIGH』発売》・7月5日-8月11日:北米#2(30公演)・8月14日-19日:欧州#1(6公演)※1公演のみソロ★8月29日-10月6日:北米#3(31公演) ★10月10日-29日:欧州#2(16公演)・10月31日-11月23日:英国(7公演)※注:「★」印はソロ公演、「・」印はバンド公演。これが1991年のトンプソン。TVやラジオ出演は除いているものの、身軽なソロは1日2公演の事も頻繁にあり、公演数は厳密ではありません。なのであまり信じないで頂きたいのですが、おおよその規模・流れはご理解頂けると思います。そんな中で本作のポーリング公演は『RUMOR AND SIGH』発売前に行われたソロの「北米#1」。その18公演目にあたるコンサートでした。この日は何よりもデヴィッド・バーンとの共演で知られているわけですが、2人は90年代初頭のニューヨーク界隈で幾度かステージを共にしている。本作の他に“1991年7月9日THE RITZ”・“1992年3月24日ブルックリン”でも共演が確認されており、本作はその一番最初のショウでもあるわけです。そんなステージを記録した本作は、まさに極上のステレオ・サウンドボード。FM放送されたという記録もないので流出系のミックス卓直結のライン録音だと思われますが、その生々しさ、シンクロ感が絶大。後乗せの音処理も加工も演出もなく、ギターもヴォーカルも現場で鳴っている音そのまま。そのカッティングはピックの角度まで分かりそうなほどにビビッドで、歌声はマイクに吹きかけられる息づかいのレベル。正直なところ、あまりにも無加工なためにギターを持ち替えた際に(エンジニアのミスで?)音量が急に変わることもあったりするのですが、それさえもが超リアル。曲間では歓声も遠くに聞こえるものの、現場の臨場感よりもあくまで演奏そのものと全身がシンクロするライヴアルバムなのです。その超ビビッド・サウンドで描かれるショウは、80年代から90年代初頭のレパートリーも美味しいショウ。ここで、その内容を整理しておきましょう。【ソロ・ステージ本編】●SHOOT OUT THE LIGHTS(2曲)・Shoot Out The Lights/Wall Of Death ●AMNESIA(5曲)・Turning Of The Tide/Pharaoh/Jerusalem On The Jukebox/Waltzing's For Dreamers/Can't Win ●INVISIBLE MEANS(3曲)・Now That I Am Dead/Days Of Our Lives/The Killing Jar ●RUMOR AND SIGH(3曲)・I Misunderstood/1952 Vincent Black Lightning/God Loves A Drunk ●その他(5曲) ・Two Left Feet[HAND OF KINDNESS]/When The Spell Is Broken[ACROSS A CROWDED ROOM]/Valerie[DARING ADVENTURES]・カバー:She Moves Through The Fair(トラッド)/Don't Roll Those Bloodshot Eyes At Me(ワイノニー・ハリス) 【デヴィッド・バーンとの共演】●オリジナル(2曲)・I Feel So Good[RUMOR AND SIGH]/The Big Country[MORE SONGS ABOUT BUILDINGS AND FOOD]●カバー(3曲)・Who Were You Thinking Of?/96 Tears (ジム・グラサー/?&ザ・ミステリアンズ)/Ca Plane Pour Moi(プラスティック・バートランド)……と、このようになっています。ショウの本編はあくまでトンプソンのソロであり、そのアンコールでデヴィッド・バーンが登場。「I Feel So Good」やTALKING HEDDSの「The Big Country」の他、多彩なカバー曲で合計5曲(うち2曲はメドレー)共演しています。貴重極まる共演シーンに極上サウンドボードで同席できるだけでもお宝なのですが、本作はまだ終わらない。そんなフルショウ2枚組に続くディスク3には、やはりデヴィッド・バーンも参加したサウンドチェックも収録しているのです。もちろん、こちらも超極上のステレオ・サウンドボード。いきなり本番では演奏しなかった「Reckless Kind/Mystery Wind/I Gave My Love A Cherry」メドレーが飛び出すのですが、その後は本番に備えた曲をリラックスした会話やチューニング・シーンも生々しく演奏する。本番自体が弾き語りでもあるので、別バージョンとしても楽しめるのです。そして、そんな演奏もさることながら実はチューニングが美味しい。調弦しつつ、ちょっとした試し弾きをするわけですが、誰に聴かせるでもない気ままなフレーズにトンプソンの素養が滲み出し、何気ないからこそ自然で鮮やかな指使いに圧倒されるのです。さらにデヴィッド・バーン。あの2人があれこれ相談しつつ、音を合わせ、声を重ねる。ステージ本番でもド密着サウンドボードではありましたが、ここでは観客さえいない2人だけの世界。そのプライベート空間を超極上ステレオ・サウンドボードでのぞき見れてしまう。サウンドチェックと言うと、ファン心理ぬきには聴いていられない物も多かったりするのですが、本作はまったく違う。本番以上に2人の素養・音楽性が丸出しになり、音楽的にも美しいスタジオ・ライヴでもあるのです。聴けるだけでも貴重なデヴィッド・バーンとの共演ステージとサウンドチェック。それをオフィシャル級どころではない超極上ステレオ・サウンドボードで味わえる3枚組です。 The Towne Crier Cafe, Pawling, New York, USA 7th March 1991 STEREO SBD Disc 1(58:56) 1. Intro 2. I Misunderstood 3. 1952 Vincent Black Lightning 4. Shoot Out The Lights 5. Turning Of The Tide 6. God Loves A Drunk 7. Two Left Feet 8. Pharaoh 9. Jerusalem On The Jukebox 10. Now That I Am Dead 11. Days Of Our Lives 12. She Moves Through The Fair 13. Don't Roll Those Bloodshot Eyes At Me Disc 2(55:28) 1. The Killing Jar 2. Wall Of Death 3. When The Spell Is Broken 4. Waltzing's For Dreamers 5. You Can't Win 6. Valerie 7. Who Were You Thinking Of? / 96 Tears (with David Byrne) 8. The Big Country (with David Byrne) 9. I Feel So Good (with David Byrne) 10. Ca Plane Pour Moi (with David Byrne) Disc 3(59:23) Rehearsal & Soundcheck 1. Reckless Kind / Mystery Wind / I Gave My Love A Cherry 2. Shoot Out The Lights 3. Ca Plane Pour Moi (with David Byrne) 4. 96 Tears (with David Byrne) 5. Tuning 6. Who Were You Thinking Of? / 96 Tears (with David Byrne) 7. Tuning 8. Who Were You Thinking Of? / 96 Tears (with David Byrne) 9. Tuning 10. I Feel So Good (with David Byrne) 11. Tuning 12. I Feel So Good (with David Byrne) 13. The Big Country (with David Byrne) 14. I Feel So Good (with David Byrne) 15. The Big Country (with David Byrne) STEREO SOUNDBOARD RECORDING