故コージー・パウエルやメル・ギャレイを迎え、新章に突入した1982年のWHITESNAKE。その現場を伝える歴史的な秘蔵オリジナル録音が登場です。そんな本作が記録されたのは「1982年12月23日レスター公演」。その絶品オーディエンス録音です。時期によってさまざまに姿を変えていった白蛇ですが、1982年/1983年ほど独特な魅力に満ちていた時代はない。実はイアン・ペイスよりも先に誘っていたコージーを得たことでパワフルに脱皮しつつ、オリジネイターのミッキー・ムーディやジョン・ロードによる古式ゆかしい白蛇らしさもブレンド。あくまでもブルースロックの文脈に踏みとどまりつつ、極めてダイナミックで豪快なショウを繰り広げていました。そんな彼らのライヴは極上サウンドボード&プロショット『LIVE... IN THE WEST OF THE RHINE』や公式作の復刻盤『MONSTERS OF ROCK 1983』、『DEFINITIVE BUDOKAN 1983』といった名作群でも楽しめますが、それらはいずれも中・後期のもの。スタートダッシュとなる1982年の記録は絶滅危惧種で、『COMPLETE NEWCASTLE TAPES』くらいしか知られてきませんでした。本作は、そんな黎明の1982年を伝える新定番ライヴアルバムなのです。そんな事情を理解する意味でも、まずは“SAINTS & SINNERS TOUR”の全体像からショウのポジションを確かめておきましょう。 1982年《11月25日『SAINTS & SINNERS』発売》・12月10日-31日:欧州#1a(14公演)←★本作はココ★ 1983年・1月1日-31日:欧州#1b(18公演)・2月7日-23日:日本(10公演)←『DEFINITIVE BUDOKAN 1983』・3月19日:西ドイツTV出演 ←『LIVE... IN THE WEST OF THE RHINE』 《4月『SLIDE IT IN』製作開始》・8月14日-9月6日:欧州#2(11公演)←『MONSTERS OF ROCK 1983』 これが1982年/1983年のWHITESNAKE。このように来日公演以降は各時期で極上サウンドボード/プロショットが残されてきたわけですが、初期は手薄だったわけです。そもそも新ラインアップの始動は師走に入ってからであり、年内のショウ「欧州#1a」は14公演のみ。本作のレスター公演は、その10公演目にあたるコンサートでした。そんなショウを記録した本作は、これまで知られてこなかったのが不思議なほどの絶品。何しろ、本作を記録したのは、かの名匠“Crazy S.”氏。彼の全盛期は1986年辺りなのですが、それよりグッと初期ながら本作もまた素晴らしい名作なのです。何より驚くのは、力強い芯と見目麗しい鳴り。サウンドボードと間違えるタイプではありませんし、距離感もそれなりなのですが、真っ直ぐ手元に届く芯は瑞々しく、ディテールまでえらく美しい。会場中が沸き立っているのもわかるのですが、それがどういうわけか遙か彼方の遠鳴りのように感じられ、フレッシュな演奏音との間に入ってこないのです。後々、歴史に名を残す名録音を多量に生み出す“Crazy S.”氏ではありますが、1982年の時点で既に才能は開花していた……本作は、その音の証拠でもあるのです。そんな麗しのサウンドで描かれるのは、パワフルに甦ったクラシックSNAKEの名曲群が美味しい。良い機会でもありますので、ここでセットの内容も整理しておきましょう。・LOVE HUNTER(2曲):Walking in the Shadow of the Blues/Lovehunter・READY AN' WILLING(2曲):Ready an' Willing/Fool For Your Loving ・COME AN’ GET IT(2曲):Don't Break My Heart Again/Wine, Women an' Song・SAINTS & SINNERS(3曲):Rough an' Ready/Here I Go Again/Crying in the Rain・その他:Soldier Of Fortune/Ain't No Love in the Heart of the City/Thank You ……と、このようになっています。このラインナップは名盤『SLIDE IT IN』で知られるわけですが、その新曲が初めて披露されたのは「欧州#2」になってから。ここではクラシックSNAKEでも「コレぞ!」の名曲群がバランス良く濃縮還元されているのです。そして、その演奏ぶりこそが素晴らしい。とにかくどの曲もタフでパワフル。クラシックSNAKEの繊細さとは種類が違いますが、躍動感やグルーヴはさらに増強され、たっぷりジューシー&ブルージー。パワー全開ではあっても無機質なメカニカルなメタリックSNAKEとは明らかに世界が異なるのです。そもそもコージーやメル(彼のコーラスは絶品!)はクラシックSNAKEの組閣前に誘われた人材であり、コリン・ホジキンソンもミッキー・ムーディと60年代から共演歴のある古馴染み。たまたまクラシックSNAKEより後に誕生しましたが、このアンサンブルこそがWHITESNAKE結成当初の青写真に忠実だったのかも知れません。しかも、本作はスタートダッシュの初々しさ、勢いも眩しい。前述の通り、本作はツアー10公演目にあたり、エンジンが暖まってきてはいてもツアー疲れなどまだまだ先の話。互いの呼吸感を掴んではいても手の内を知り尽くしてはいない新鮮さが溢れ出し、それでいて達人揃いだけにすでに鉄壁のアンサンブルに達している。ソロやオブリにも遊び心があり、これからどんどん試していく前のめりなショウなのです。一般に「メタル化の前身」と捉えられがちな1982年/1983年のWHITESNAKEですが、むしろその生演奏には新生と起源の両方が息づいている。そんなアンサンブルでクラシックSNAKEのベスト・セットを描き出すライヴを、若き時代の名手が腕によりをかけて記録しきった歴史的銘品です。「パワフルでブルージー」を追究しつつ、メタルには踏み出さないからこその芳醇な英国ハードロック。 Live at De Montfort Hall, Leicester, UK 23rd December 1982 TRULY AMAZING/PERFECT SOUND(from Original Masters) Disc 1(54:11) 1. Intro 2. Walking in the Shadow of the Blues 3. Rough an' Ready 4. Ready an' Willing 5. Don't Break My Heart Again 6. Here I Go Again 7. Lovehunter 8. Micky Moody & Colin Hodgkinson Solos 9. Lovehunter (reprise) 10 Crying in the Rain 11. Soldier Of Fortune Disc 2(43:27) 1. Jon Lord Solo 2. Cozy Powell Solo 3. Ain't No Love in the Heart of the City 4. Fool For Your Loving 5. Thank You 6. Wine, Women an' Song 7. We Wish You Well David Coverdale - Vocals Mel Galley - Guitar, Vocals Micky Moody - Guitar, Vocals Jon Lord - Keyboards Colin Hodgkinson - Bass Cozy Powell - Drums