ALCATRAZZに先んじて「革命児イングヴェイ・マルムスティーン登場!」を世に知らしめた幻の名バンド、STEELER。その貴重音源をコンパイルした名作がリリース決定です。そんな本作に収められている音源は2種類。イングヴェイが加入する前に製作された「1982年デモ」と、加入後のライヴ「1983年4月11日サンフランシスコ公演」のオーディエンス録音です。そもそも、イングヴェイ・マルムスティーンがロックの本場アメリカへと渡ったのは1983年2月のこと。後にギターヒーロー発掘レーベルとして名を馳せる“SHRAPNEL”のマイク・ヴァーニーに誘われ、バッグひとつとストラトキャスター1本を手にL.A.に降り立ちました。イングヴェイは最初からソロ志向が高かったわけですが、ヴァーニーから「最初のステップ」と説得され、ロン・キール率いるSTEELERに加入した。本作はそんなイングヴェイ加入湯前後の貴重音源セットであり、唯我独尊の革命児がいかにショッキングだったのかを生々しく浮き彫りにする1枚なのです。それでは、それぞれの音源について個別にご紹介していきましょう。 【前半:イングヴェイ加入前のスタジオ・デモ(10曲分)】まず登場するのは、1982年に録音されたデビュー・アルバムのためのデモ。ラインナップはロン・キールを筆頭に、マイケル・ダニガン(ギター)/ティム・モリソン(ベース)/ボビー・エヴァ(ドラム)という4人組。彼らはアルバムの前にシングル『Cold Day In Hell』をリリースしており、このデモはシングルのラインナップで録音されたものです。実際に公式アルバムが知られているだけに「完全オフィシャル級」とは言えませんが、デモとしては上々。ちょっと軽めながらシュラプネルっぽいエコー感が感じられるのも80年代B級メタルらしく、マニアの鼻腔をくすぐってくれます。このデモは全10曲で、デビュー作『STEELER』収録曲の初期バージョンがメインですが、それだけでもない。ここでその内容を整理しておきましょう。『STEELER』ナンバー(6曲)・Cold Day In Hell/Serenade/On The Rox/Down To The Wire/Backseat Driver/Hot on Your Heels それ以外(4曲)・Make Up Your Mind/Out To Get You/American Metal/Ready To Explode ……と、このようになっています。アルバム未収録曲も面白いですが、アルバムの曲も完成版との違いが鮮烈。デビュー作『STEELER』ではイングヴェイの革新的な速弾きが大きくフィーチャーされ、後のALCATRAZZやイングヴェイのソロにも通じる世界が早くも萌芽していましたが、このデモはシンプルな正調L.A.メタルの王道。ぶっちゃけて言えば「普通」です。例えば「Hot On Your Heels」。アルバムでは前半部分でイングヴェイが弾き倒しの速射ソロをブチかましていましたが、デモではいきなりソリッドなリフ曲がスタート。トータルでも3分強で終わります。もちろん、本作こそが曲本来の姿なわけですが、これほど普通の曲を聴いて、なんであのソロをブチ込もうと考えるのか……やはり革命児は発想自体が違う。また、他のテイクにしても楽曲は基本的に完成版と同じだというのに丸っきり異なるイメージ。いかにイングヴェイの存在が強烈だったのかを肌感覚で実感できます。 【後半:1983年4月11日サンフランシスコ公演(10曲分)】そんなデモに続く後半は、実際にイングヴェイが加入してからのライヴ。わずか10回程度しか行われなかった貴重な生ステージの記録です。現場の声援も生々しいオーディエンス録音なのですが、それこそが革命児登場の現場を正確に伝えてくれる。冒頭からファンの「イングヴェイ!」コールが飛び出し、ソロになるや一気にヴォルテージが上がり、「ヘイ! イングヴェイ!」の声援が飛びまくる。当時はアルバムもリリースされていないのですが、すでに彼こそが主役で、大きなセンセーショナルになっていたのです。さらに必聴なのはシングル曲「Cold Day In Hell」から続くギターソロ・タイム。これが約5分にも及び、すでに我々が知るイングヴェイそのまんま。クラシカルなパッセージを光速でまき散らしつつ、その精度もフレーズの多彩さも猛烈なパッションも、いきなりの絶頂ぶり。ラスト・ナンバーの「Excited」におけるギターは「狂乱」としか表現しようがなく、会場からは「Yngwie is god!」の叫びも飛び交う。まさに「革命児イングヴェイ登場!」の現場そのものなのです。以上、デモ10曲+ライヴ10曲の秘宝集です。イングヴェイがこのSTEELERに在籍していたのは「1983年2月から5月頃まで」。アルバム『STEELER』がリリースされた6月には、すでにALCATRAZZに加わっていました。考えてみれば、当時はエディ・ヴァン・ヘイレンが最速だった時代。そこにイングヴェイ自身のキャリアハイとなる超ソロをブチかまされるのですから、そりゃあビックリするでしょう。その衝撃を千の言葉よりも雄弁に物語ってくれる時代の証言アルバム。どうぞ、この機会にド肝を抜かれちゃってください! "Steeler" Album Demos 1982 & Old Waldorf, San Francisco, CA, USA 11th April 1983(78:43) "Steeler" Album Demos 1982 1. Make Up Your Mind 2. Cold Day In Hell 3. Out To Get You 4. Serenade 5. American Metal 6. On The Rox 7. Down To The Wire 8. Ready To Explode 9. Backseat Driver 10. Hot on Your Hells Live at Old Waldorf, San Francisco, CA, USA 11th April 1983 11. Intro 12. On The Rox 13. Backseat Driver 14. Born To Rock 15. Down To The Wire 16. Hot on Your Heels 17. Cold Day In Hell 18. Yngwie Solo 19. Member Introduction 20. Excited Ron Keel - vocals Yngwie Malmsteen - lead guitar Rik Fox - bass Mark Edwards - drums