本作に刻まれているのは「1984年6月20日:中野サンプラザ」公演。その超極上ステレオ・サウンドボード録音です。日付や会場をご覧の通り、本作はDVD『LIVE IN JAPAN』とは別コンサート。まずは、当時のスケジュールから両作のポジションを確かめてみましょう。・6月16日:大阪厚生年金会館 ・6月17日:名古屋市公会堂・6月19日:中野サンプラザ・6月20日:中野サンプラザ ←★本作★・6月21日:渋谷公会堂 ←※ DVD・6月22日:新宿厚生年金会館 以上、全6公演。東京だけ4公演が行われたわけですが、スDVDは3公演目の渋谷。それに対し、本作は2公演目の中野でした。このショウは古くからサウンドボード音源が残されたとでも知られ、名作『ROLL THRU THE NIGHT』でも愛されてきました。本作は、そんな伝説サウンドボードの拡張・完全版なのです。もちろん、拡張とは言っても複数音源のツギハギなどではありません。2012年に新発掘された関係者流出マスターで、名盤『HEADING FOR THE NIGHT』としても大ヒットしたものです。そのクオリティは、まさに衝撃。音質的には「完全オフィシャル級」なのですが、生々しさはそれ以上。いわゆるミックス卓直結タイプでして、完全に無加工。精緻に磨き込まれた本編プレスDVDとは異なり、大歓声は猛烈に遠く、バランスも現場PA用のミックス。生演奏が無遠慮に飛び出し、家庭用オーディオなんぞ知ったことかと言わんばかりの生々しさで脳内にズカズカと上がり込んでくるのです。しかし、それが良い。カッコイイ!本稿に目を留められる方ならご存じとは思いますが、卓直結サウンドボードはコンサート現場を再現するような演出がなく、磨き込みもなし。臨場感はまるでない代わりに、バンド自身とのシンクロ感がマックスなのです。ライヴ盤に求めるものは十人十色で、それによってベストな記録は異なる。コンサートをテーマにした音楽作品を求めるなら公式ライヴ盤でしょうし、リアルな臨場感や追体験を求めるなら極上のオーディエンス録音に勝るものはありません。その一方で「生演奏を聴くためのもの」と考えたときは、卓直結サウンドボードこそが至高になる。そして、本作はその最高級品なのです。そのサウンドで描かれるのは、大名盤『ネザーランドの神話』『誘惑の炎』の濃縮還元となるフルショウ。内容はDVDにも酷似しているので繰り返しは避けますが、本作は無加工だけに開演BGMや曲順も本番通り。「Ready For You」でスタートし、クラシカルHRの至宝となる名曲が次から次へと繰り出されていくのです。そのドラマティシズムを味わっていてふっと浮かぶのがMSGの『飛翔伝説』やオジー・オズボーンの『トリビュート』。マイケル・シェンカーやランディ・ローズもエイドリアンと同じくレスリー・ウェストをこよなく愛するギブソン使いであり、80年代初頭にクラシカルなHRを切り拓いたヒーロー達でした。その3人が揃いも揃ってスタジオ2作を濃縮したようなフル・ライヴアルバムを残した。本作自体がVANDENBERGの超名盤であるのは間違いありませんが、見方を変えれば「エイドリアンの飛翔伝説やトリビュート」とも言える決定的なライヴアルバムなのです。もはや公式/非公式の区別を超えた次元に立つステレオ・サウンドボードの超名盤。 Live at Nakano Sunplaza, Tokyo, Japan 20th June 1984 STEREO SBD Disc 1(48:34) 1. Intro. 2. Ready For You 3. Back On My Feet 4. Your Love Is In Vain 5. Friday Night 6. Welcome To The Club 7. Heading For A Storm 8. Instrumental(Kamikaze) 9. Time Will Tell 10. This Is War 11. Drums Solo 12. Out In The Streets Disc 2(41:30) 1. Different Worlds 2. Guitar Solo 3. Wait 4. Rock On 5. Too Late 6. Burning Heart 7. Waiting For The Night STEREO SOUNDBOARD RECORDING Adrian Vandenberg - Guitar Bert Heerink - Vocals Dick Kemper - Bass Jos Zoomer - Drum