これまでもストーンズ、クラプトン、ベックといったアーティストの来日公演を比類なき高音質のオーディエンス録音にて捉えてくれていたテーパーが今回は意外なアーティストの極上音源を届けてくれました。それが1989年のニール・ヤング来日公演。彼の来日公演の歴史の中では初来日や2003年と比べてアイテムが少ない時期でもあります。今回リリースされるのはその千秋楽であった5月5日の名古屋。クレイジー・ホースを従えた1976年の初来日はスタートが名古屋でしたが、この時は反対に最終地となっていましたこの日に関しては、まず海外経由のジェネ落ちカセットを基にしていた上、何より不完全収録だった「INN AT THE BEGNNING」は置いておくとして(笑)、ツアー初日の横浜とカップリングした名盤「COLORS ON THE STREET」が挙げられるかと。名古屋はセットリストが非常に魅力的なのですが、そこへ加えて「COLORS ON~」に使われたオーディエンス録音の音質は実にクリアーなものでした。ところが、おなじみのテーパーが今回提供してくれた新たな音源(もちろんトレーダー間にも一切出回っていませんでした)は、あの「COLORS ON~」(以下、既発盤と称します)をも軽く凌駕してしまう驚異のハイレベル・オーディエンス。確かに既発盤は鮮度の素晴らしさを中心として魅力的な音質だったのですが、今回の音源はそれよりも圧倒的にオンな音像。これまでCD-Rを含め、89年の来日公演に関しては「オンな音像」を体感させてくれる音源というのはあまりなかったのですが、今回の音源ときたら、それらを大きく引き離したド迫力の音像。今回の音源がどれほど高音質であるかということは、一聴してもらえればいとも簡単に理解できるレベルではあるのですが、特にロスト・ドッグスを従えてのエレクトリック・セットの音圧は本当に凄まじい。例えば「Powderfinger」など、ニールとポンチョ・サンペドロ二人が弾くギターのパートがはっきり聞き分けられてしまうという。それにロスト・ドッグスはクレイジー・ホースとはまた違った鋭角的なハード・エッジさを身上としたバンドだったのですが、その独特なサウンドも生々しいほどに感じられる。それに名古屋公演は前年のブルーノーツから派生したバンド活動の最終日でもあり、80年代の迷走に終止符を打ってニールの復活を支えたチャド・クロムウェルと故リック・ロサスというジョー・ウォルシュ人脈のリズム隊とはしばしのお別れとなる。彼らと再び活動を共にするのは21世紀を迎えてからのこと。このバンドが生み出した最大の成果が「Rockin' in the Free World」でしょう。”GODFATHER OF GRUNGE”時代の幕開けともいえるこの曲が彼らと演奏された時期は意外と短く、その末期が日本公演に当たります。もちろん当時はリリース前の新曲だった訳ですが、これこそニールの復活を告げた重大作であったことは歴史が証明した通り。それにこの曲を録音したオリジナル・バンドならではな破壊力がまた凄まじいのですが、それもまた今回の音源の素晴らしい音質のおかげで余すとこなく伝えてくれます。それどころかリリース前の新曲ながら、名古屋のオーディエンスを大いに熱狂させている様子まで感じられるほど。一方アコースティック・セットでは「Bad Fog of Loneliness」という超レアな選曲が。今でこそ後のライブアルバムで曲は日の目を見ましたし、1971年当時の「HARVEST」でのアウトテイクも日の目を見ている。しかし89年当時は純然たる未発表曲であり、この年の冒頭のアメリカ・ツアーにおいて、バンドを従えてレパートリーとして復活したことは世界中のマニアを驚かせたものです。ところが名古屋での演奏はバンドでなくベン・キースと二人でアコースティックな演奏というのがまた貴重だった。それがベンの亡くなってしまった今となっては余計に貴重なライブバージョンとなってしまったのです。それに既発盤はアコースティック・コーナーでは演奏に合わさる手拍子が音像の距離感と相まって耳障りな個所が見受けられたのですが、今回の音源は手拍子よりも演奏の音像が大きいので、じっくりと聞きこむことができるのもアドバンテージ。それどころか、むしろアドバンテージの塊と呼んでしまいたくなるほど圧倒的なクオリティを誇る今回の音源。ロスト・ドッグスのハードなギターのざっくりとした迫力が味わえるという意味でも申し分のないもの。そもそも既発盤は20年以上前のリリースであり今となっては入手不可能。よって今回のリリースで初めて伝説の89年の名古屋に触れられるマニアも少ないことでしょう。リリース前の「Rockin' in the Free World」のハイパーな演奏ぶりなど、完全に今回の音源の圧勝なのです。当時オーストラリアと日本だけでツアーに向けて限定リリースされたEP「ELDORADO」に収録されていた「Cocaine Eyes」のこれまた迫力満点な爆裂演奏、それもまたこの時期ならでは。これはもう掛け値なしに89年来日公演の決定版、こんな凄いオーディエンス録音が今まで眠っていただなんて! Live at Nagoya-shi Kokaido, Nagoya, Japan 5th May 1989 ULTIMATE SOUND(from Original Masters) Disc 1 (41:20) Acoustic 1. Intro 2. My My, Hey Hey (Out of the Blue) 3. Rockin' in the Free World 4. The Needle and the Damage Done 5. This Note's for You 6. Helpless 7. Pocahontas 8. For the Turnstiles 9. Bad Fog of Loneliness 10. Heart of Gold Disc 2 (74:38) Electric 1. Intro 2. Eldorado 3. Powderfinger 4. Cocaine Eyes 5. No More 6. Cinnamon Girl 7. Cortez the Killer 8. Mr. Soul 9. Rockin' in the Free World 10. Band Introductions 11. Hey Hey, My My (Into the Black) Neil Young with The Lost Dogs Neil Young - vocals, acoustic guitar, electric guitar, piano, guitjo, harmonica Frank Sampedro - guitar, keyboards, vocals Ben Keith - pedal steel guitar, dobro, vocal Rick Rosas - bass Chad Cromwell - drums