“黄金の5人”が揃い、2大名盤『悪魔と魔法使い』『魔の饗宴』を送り出した「奇跡の1972年」。その現場を伝える絶品ライヴアルバムが登場です。そんな本作に収められている音源は3種類。「1972年5月21日ゲルマースハイム公演」のオーディエンス録音をメインに、さらに貴重なBBCセッションや名物番組“IN CONCERT”といったサウンドボード録音を追加収録した1枚です。後者2種のサウンドボードはあくまで数曲ずつのボーナス。まずは、メインのゲルマースハイム公演から始めましょう。このショウは西ドイツの音楽祭“第2回BRITISH ROCK MEETING”の一部で、彼らが出演したのは3日間のうちPINK FLOYDがヘッドライナーを務めた2日目でした。また、冒頭で触れた通り1972年はURIAH HEEPにとって多忙にして特別な1年。時期によって意味合いも変わるので、ここでは少々細かくスケジュールを振り返っておきましょう。・1月1日-6日:イタリア(6公演)・1月13日-31日:北米#1a(22公演) 《2月1日:マーク・クラーク離脱→ゲイリー・セイン加入》・2月2日-3月10日:北米#1b(22公演)・3月29日-5月18日:欧州#1a(31公演)←※MUNSTER 1972《5月19日『DEMONS AND WIZARDS』発売》・5月19日-6月19日:欧州#1b(23公演)←★ココ★・6月24日-8月5日:北米#2(31公演) ・8月12日-24日:欧州#2(4公演)・9月14日-10月6日:欧州#3(4公演)・10月13日-31日:北米#3a(14公演)《11月1日『THE MAGICIAN'S BIRTHDAY』発売》・11月2日-12月17日:北米#3b(29公演) これがURIAH HEEPの1972年。見るからにライヴ三昧で超・過密。“黄金の5人”はゲイリー・セインの加入をもって完成したわけですが、その際もわずか2日間でメンバー・チェンジという離れ業でしたし、さらに歴史的な大名盤を2作も制作。そもそも上記の日程も“1972年”だけを切り出したものであり、冒頭のイタリア・ツアーは前年大晦日から連続ですし、翌1973年も1月7日から英国ツアーが始まっている。一体、どうやって生き残ったのか想像もできない殺人的スケジュールでした。そんな中で本作のBRITISH ROCK MEETING公演は、『悪魔と魔法使い』発売直後となる「欧州#1b」の3公演目。当店では、傑作ライヴアルバム『MUNSTER 1972(Uxbridge 1313)』をご紹介した事もありますが、本作はその約3週間後にあたるコンサートでした。そんなショウで記録された本作は、力強く厚みのあるサウンドが素晴らしい。あくまでヴィンテージ・オーディエンスではありますが、スカスカになりがちな中音域も質量を感じるほどの手応えですし、重低音も五臓を揺らし六腑を蹴り上げる迫力。それだけパワフルであってもビビらない安定感が絶品で、セインの歌心ベースもくっきりと楽しめるのです。実のところ、冒頭では野外フェスにしてはやや塊感もあるのですが、それも3曲目の「Easy Livin’」辺りで改善。スカッとヌケが良くなり、そのクリアっぷりはボーナス収録されたBBCサウンドボードにも匹敵するほどなのです。それほどのサウンドで描かれるのは『対自核』のヒットで勢いづき、最高傑作『悪魔と魔法使い』を創り上げたバンド・ポテンシャルが炸裂するフルショウ。この日はフェス出演でもあり、彼らの持ち時間は約1時間。本作は、その一部始終を完全収録しています。ここで、ボーナス・トラックも併せて内容を整理しておきましょう。 本編:第2回BRITISH ROCK MEETING・ファースト(1曲):Gypsy・ソールズベリー(1曲):Bird Of Prey(★)・対自核(4曲):I Wanna Be Free(★)/July Morning/Look At Yourself/Love Machine・悪魔と魔法使い(3曲):Easy Livin’/Rainbow Demon(★)/The Wizard(★) ボーナスSBD・対自核(2曲):Look At Yourself/What Should Be Done(★)・魔の饗宴(1曲):Sweet Lorraine・スウィート・フリーダム(1曲):Stealin’(★)※注:「★」印はオフィシャルの伝統盤『URIAH HEEP LIVE』でも聴けない曲。……と、このようになっています。「Bird Of Prey」や「I Wanna Be Free」「Rainbow Demon」といった美味しい曲を交えつつ『対自核』『悪魔と魔法使い』の2枚を濃縮還元させたセットは特濃で、しかも単なる名曲集ではなく、演奏がスタジオ版を遙かに超えて熱い。まだまだ慣れが出ていない演奏は実にフレッシュで、ビートや勢いはワイルドな一方でリー・カースレイクも交えてのぶ厚いコーラスは美しい。美と激の両極を力業でまとめ上げ、突進していくようなハードロックは、まさに70年代英国ロックの醍醐味そのもの。そして、それに対峙する現場感も超リアル。盛り上がっていく熱狂もさることながら、最大の聴きどころは大ラスの「Love Machine」でしょう。イントロが轟く中で興奮した観客がステージに押し寄せ、ライヴが中断するハプニングが勃発します。これが凄い。誰かは判然としませんが、スタッフかメンバーがマイクを通して観客に毒づき、混沌の中で演奏が崩壊していく。そして、ショウ中断のアナウンスに対して飛び交う怒号……。URIAH HEEPと言うと70年代HR勢の中でも「整然と美しい」イメージがありますが、絶頂期はノリも演奏も人気も激しかった。本作は、そんな現実を一気に体感させてくれるのです。そんなフルショウの後もFMサウンドボードのボートラが美味しい。『対自核』の2曲は「1971年10月20日」収録のBBCセッションで、アルバムと同じくリズム隊はポール・ニュートン/イアン・クラーク。スタジオライヴとは言え、生演奏の「What Should Be Done」は貴重です。残りの2曲は「1973年9月28日」に収録された“IN CONCERT”のライヴテイクです。歴史的な名盤を連発しつつ、新しい音楽“ハードロック”シーンのド真ん中で気を吐いていた1972年のURIAH HEEP。後に失速する事になりますが、この時期の彼らは間違いなくLED ZEPPELINやDEEP PURPLEにも匹敵する英国ハードのパイオニアでした。その現場を伝える傑作録音と貴重なサウンドボード・テイクを集成した1枚。 Open Air Festival, Germersheim, Germany 21st May 1972 PERFECT SOUND (76:47) 2nd British Rock Meeting Open Air Festival, Germersheim, Germany 21st May 1972 1. Bird Of Prey 2. I Wanna Be Free 3. Easy Livin’ 4. July Morning 5. Rainbow Demon 6. The Wizard 7. Gypsy 8. Look At Yourself 9. Love Machine BBC Session Maida Vale Studio, London, UK 20th October 1971 10. Look At Yourself 11. What Should Be Done In Concert Live In USA 28th September 1973 12. Sweet Lorraine 13. Stealin'