名盤LP「COMING HOME」のスリックには「JANUARY 28-29 1973」という日付が記されていたせいで、29日のスコープではなくワシントンでのものだと錯覚してしまった(実際にYouTube上などではワシントンとされてしまっている)マニアが少なくありません。もちろん実際には全編が29日の演奏だった訳ですが、そうなると聞いてみたくなるのが前日のステージ。1月28日のワシントン公演もオーディエンス録音は存在するのですが、そのクオリティは29日のそれと比べてはるかに及ばず、典型的な1973年のビンテージ・オーディエンス。ただし距離感のある音像ながらも演奏の輪郭はしっかりしており、特に前半の「ハーヴェスト」収録曲パートは意外なほど聞きやすい。問題はヒスノイズのレベルが強めであるということに加え、テープチェンジに当たって「Time Fades Away」が不完全収録だったのです。別音源が存在しないため不完全な同曲をレストアすることは不可能なのですが、マニアが例のヒスを綺麗に消し去ったイコライズのバージョンというのが以前ネット上に存在していました。おかげで演奏の輪郭が元の音源以上に浮かび上がっていて、音の広がりも増している。と、ここまではいいことずくめなのですが、ヒスノイズを完全に消してしまったが故に、曲間になると硬質な質感がメラメラとメラついてしまうのが玉に瑕。これは一昔前の過剰イコライズブートを彷彿とさせてしまう。よってヘッドフォンで聞き込むことはおすすめしないのですが、スピーカーから鳴らせば実に聞きやすく感じる。これは元の音源と比べるとその差は歴然。もっとも今となっては元の音源はコア・トレーダーの間でしか出回っておらず、今回のイコライズ・バージョンですらネット上から消えて久しいもの。そうなると貴重音源を収録してみせた点だけでも価値が高いのですが、今回のCD化に当たっては高かったピッチをアジャスト。これによってさらに聞きやすくなりました。そして翌日のスコープはショー開始直後から珍しいくらいに観客が静かで、それが中盤以降になるとニールをして「今までで一番静かな観客だね、やってるこっちが戸惑いそうなくらいさ」と「Don’t Be Denied」の前で言わしめたほどでしたが、この日は全体を通していい感じに盛り上がっており、中でもニールのMCの一挙一動に反応する和やな臨場感が微笑ましいほど。今やネット上ですら入手困難なレア音源というのはもちろん、一日違うとライブの雰囲気がここまで違うか…ということを実感させてくれる貴重なドキュメント。エレクトリックな演奏となる「The Loner」以降になると音が割れる箇所があり、全体のクオリティ的にはオーディエンス慣れしたマニア向けなレベルですが、それでも非常に貴重な音源なのは確か。 JFK Center, Washington, D.C., USA 28th January 1973 Disc 1(34:47) 1. On The Way Home 2. Here We Are In The Years (aborted) 3. Here We Are In The Years 4. After The Gold Rush 5.Wonderin' 5. Out On The Weekend 6. Harvest 7. Old Man 8. Heart Of Gold Disc 2(50:44) 1. The Loner 2. Time Fades Away\ 3. Look Out Joe 4. New Mama 5. Alabama 6. Don't Be Denied 7. Cinnamon Girl 8. Southern Man 9. Are You Ready For The Country? Neil Young - Vocals, Guitar, Keyboards, Harmonica Ben Keith - Pedal Steel, Steel Guitar, Vocals Jack Nitzsche - Piano Tim Drummond - Bass Kenny Buttrey - Drums