先週はZEP1969年7月から8月にかけてのアメリカ・フェス回りを中心としたツアーの初日を飾った初登場音源アトランタをリリースいたしましたが、今回も同じツアーから定番音源のニューバージョンがリリース。フェス用のステージで一回の演奏時間が短いということもあってか、この時期はハイテンションな名演と名音源が量産された時期であることはマニアなら常識。先のアトランタはもちろん、ニューポートにセントラル・パークも素晴らしい演奏内容だった上、1969年のオーディエンス録音としては非常に聞きやすいクオリティの高さを誇っていました。さらには69年を代表する音源の一つですらあったツアー最終日テキサス・ポップ・フェスティバルのステレオ・サウンドボード録音まで存在するという恵まれた時期。そんな中にあってマニアに支持され続けるもう一つの名音源が7月25日のミッド・ウエスト・ロック・フェスティバル。アナログ時代にはアセテート・ブートでしか聞かれなかった音源ということでCD時代に入ってから一気に普及した69年の名音源でしょう。その録音クオリティゆえ懐かしの「STATE FAIR」を始めとしていくつかのアイテムがリリースされてきましたが、10年以上前にGRAF ZEPPELINからリリースされた「MIDWEST ROCK FESTIVAL」としてマニアの支持を集めてきました。もはやGRAF盤(以下“既発盤”と称します)以上のアッパーは起こりえないだろう…実際に既発盤はこの日の決定版として10年以上に渡る長期政権を築いてきた訳ですが、今年に入って誰もが見逃していたであろう個所まで収録したアッパー版が登場したのです。今回の音源はマスターのリールからリールへとコピーされたファースト・ジェネレーション・コピーという触れ込み。同じアナログ・コピーでもカセットを介さないバージョンですのでダビングによって生じる劣化は最小限にとどめられている。とはいえ既発盤との音質の差は大きくなく、そこでもかなりロージェネなバージョンが使われていたことは間違いありません。ただし「I Can't Quit You Baby」では既発盤の方がヒスが強く、逆に「White Summer」では今回のバージョンのヒスが強いなど、やはりダビング経由の違いを伺わせてくれます。もっとも「How Many More Times」序盤でプラントが手拍子を求める場面、10分半ばで左チャンネルからかすかに鳴る転写っぽい音、そして12分台で起きるカットなどは従来と変わりません。ところが、この「How Many More Times」にこそ従来のアイテムで欠けていた最後の一手が隠されていたのです。同曲がボンゾのドラムから始まる際、プラントが最後の曲であることを告げます。この場面が過去のアイテムでは大なり小なり欠けていたのですね。今回はこの場面が完全に収録されていてプラントの「say goodnight」というセリフが完全に聞かれます。ここがテープチェンジに当たった個所だと推測され、それが枝分かれダビングされる内にプラントのMCが削られていったのでしょう。過去のアイテムではこの場面がまったく入っていないバージョンがありましたし、既発盤においても「say」が欠けて「goodnight」から始まっていたのです(笑)。確かに細かい個所ではありますが、これで過去最長収録となったのは事実。そしてこの日はまず音質が抜群にイイ。モノラルながら非常にクリアーで50年前の録音とは思えないほどの鮮度も凄い。同時期のオーディエンスと比べてみてもニューポートやセントラル・パークよりも秀でているのが鮮度でしょう。演奏の方はフェスの一枠ということで全体的に演奏が短い上に「You Shook Me」は演奏されず、基本短めなステージが多いこの時期においても最短の53分というもの。それゆえにCD一枚でサクッと聞きやすく、なおかつ69年のZEPらしい魅力が凝縮されているのが魅力。そんな中でも圧巻な演奏となっているのが例の「How Many More Times」。「Dazed And Confused」がいつもより短めの展開で披露されていた分、こちらで濃密な演奏を繰り広げている印象を受けます。特に5分台での爆発するような展開は圧巻ですし、例の12分台のカットの後で「Lemon Song」まで登場。これまでも演奏と音質の両方で定評を得てきたミッド・ウエスト・ロック・フェスティバルですが、それまでことごとく欠けていた「最後の一手」が遂に埋まりました。数ある69年ZEPオーディエンスの中でも最高の鮮度を誇る名音源の決定版が遂に登場です! Wisconsin State Fair Park Grounds, West Allis, WI, USA 25th July 1969 (52:38) 1. Intro 2. Train Kept a Rollin' 3. I Can't Quit You Baby 4. Dazed And Confused. 5. White Summer/Black Mountain Side 6. How Many More Times (incl. Smokestack Lightning / Beck's Bolero / The Hunter/ The Lemon Song / I've Got You Under My Skin) 7. Communication Breakdown (incl. Just A Little Bit)