1990年代前半、キンクスが短いインターバルで来日公演を行うというマニアにとって夢のような時期がありました。一回目の1993年が大成功となり、程なくして95年に再び彼らは日本を訪れてくれたのです。おかげで95年の来日公演アイテムは色々と出ていたのに対し、93年の方はアイテムの数が少ない。それが「ON THE ROAD AGAIN」や「SECOND COMING」といったタイトルであり、今やどちらも入手困難という状況でもあります。また、それらのアイテムがツアー前半の東京でのライブばかりを収録していたもので、マニアからすると地方の公演を捉えたアイテムの登場を渇望していたのでした。というのも、この時代のキンクスのライブはレイ・ディヴィスの一存で構成や選曲がガラッと変わるという展開があり、マニアからすればどの日もコレクトしたい…と思わせるほど変化に富んでいたのです。その極めつけともいえるのが今回リリースされる名古屋公演。まずオープニングからしてレイが弾き語ったのは自身の曲の代わりにバディ・ホリーの「Peggy Sue」。さらに極めつけは日本で唯一披露された不朽の名作「The Village Green Preservation Society」。ただでさえ各地で大きな盛り上がりを見せた93年のキンクス来日公演ですが、この日は特に凄まじい。「Low Budget」や「Lola」での定番コール&レスポンスなんて当たり前、「Did Ya」や「Hatred」といった近年の楽曲でバックコーラスを観客が担ってしまうほどアツい盛り上がり。そんな中で気をよくしたレイがぶっつけ本番で歌い出したのが「The Village~」だったのです。この時代のステージで滅多に披露されない名曲が歌われたという、日本のキンクス・マニアには昇天ものの瞬間だったのではないでしょうか。。惜しむらくはもう一つの目玉である「Peggy Sue」をレイが歌い出した瞬間から録音が始まっており、若干ながら欠けてしまった(いきなりレイが一人でステージに現れて驚いたのでしょう)こと。さらにレイが声を張り上げる場面やデイヴ・デイヴィスのリードギターが大きくなる場面などでは若干ながら音が割れてしまう。とにかく演奏やレイの声が実に近い。それでいて非常にクリアーな音質ですので、この時代のキンクスのタイトな演奏が引き立って聞こえる。ボブ・ヘンリットに今は亡きジム・ロッドフォードというリズム隊によって支えられたこの時代のキンクスならではのバンド・サウンド。今から30年近く前に(もうそんなに?)リリースされたアイテム群では聞かれなかったツアー後半における白熱の一夜。当時のアイテム「ON THE ROAD AGAIN」はその高音質が話題を呼んだものですが、それに負けない迫力の音像。一方で凄く盛り上がった臨場感は抜群なのに演奏を遮るような歓声は皆無。そして連日大盛況だった93年の来日公演から「The Village Green Preservation Society」が演奏された伝説の一日を遂にリリース。マニア感涙のアイテムだと断言いたします。Live at Club Diamond Hall, Nagoya, Japan 11th October 1993 TRULY PERFECT SOUND(from Original Masters) Disc 1 (55:01) Ray Davies Solo Acoustic 1. Peggy Sue 2. A Well Respected Man 3. Do It Again Electric Kinks 4. Intro 5. Till the End of the Day 6. The Hard Way 7. Low Budget 8. Phobia 9. Loony Balloon / Drift Away 10. Celluloid Heroes 11. Over the Edge 12. It's All Right 13. Only a Dream 14. The Village Green Preservation Society 15. Come Dancing Disc 2 (45:21) 1. Alcohol 2. Aggravation / New World 3. I Gotta Move 4. Welcome to Sleazy Town 5. All Day and All of the Night 6. Did Ya 7. Lola 8. Hatred 9. You Really Got MeRay Davies - Vocals, Guitar Dave Davies - Guitar, Vocals Ian Gibbons - Keyboards, Vocals Bob Henrit - Drums Jim Rodford - Bass, Vocals