JEMSチームによるミラード・マスターの公開は久しぶりに1977年のLAフォーラムでの記録でしたが、アーティストが非常に意外だったドノヴァン。彼とミラードという組み合わせは思い浮かばないものがありますがそれもそのはず、彼がイエス77年アメリカ・ツアーの前座を務めたことから「ついで」に録音したものでした。この時のイエスは9月23日と24日にLAフォーラムで都合二回のライブを行いました(前者は名盤「MIKES’S MINT」の日で、こちらのマスター公開も待たれます)が、ミラードがどちらの日も録音した恩恵を受け、ドノヴァンのステージもまた両方が残されています。ただし初日はオープニングがカットインで一応すべての曲を収録、二日目は半分の演奏曲しか収録されておらず、冒頭にも申しましたようにミラードがレコーダーのウォーミングアップを兼ねて録音したのは明白。もっとも今回の公開に際して明らかになったエピソードとして、基本ミラードはコンサートの前座まで録音することは稀で、一重にドノヴァンなら録ってもいいかな…といった乗りの成果だそう。ところがクオリティに関しては彼らしいハイクオリティがここでも炸裂。前座でも凄まじくオンな音像は正にミラード節。周囲の音をほとんど拾っておらず、演奏全体の肉厚が迫力たっぷりに聞く者を圧倒する。おまけに当時のドノヴァンは自身の名前を冠したニューアルバムを夏に出したばかりであり、彼なりに当時の音楽界を意識した風潮のロックなサウンドをバンドと共に奏でていたので、なおさらミラード録音との相性が良かった。とはいえオーディエンスが反応を示すのはやはり60年代の名曲群。「Sunshine Superman」は当時の風潮を意識したハードなバンドアレンジが施されていますし、アメリカで大ヒットした「Hurdy Gurdy Man」が一番盛り上がるというのも解りやすい。基本イエスをお目当てにしたオーディエンスを前にしたステージですので、いくらニューアルバムを出したばかりとは言え、懐メロ的な盛り上がりを見せてしまうのは致し方ない。それでもドノヴァンからすればLAフォーラムのような大会場で演奏できただけでも十分に満足なのでしょう、二日間とも非常に楽しそうに演奏しているのがお見事。彼はLAフォーラムという大会場でのステージでもあり、それまでの彼のイメージに沿ったアコギではなく、敢えてエレキに持ち替えて弾き語りを披露しているのもこの時期ならではの貴重な場面。何よりドノヴァンのライブ音源のリリースというのは途絶えて久しく、それが彼の全盛期と呼べる60年代でなく、70年代ともなればなおさら。結果としてミラードは非常に貴重な時期の彼のステージを偶然捉えていたというだけでなく、音源の存在自体が希少でライブ活動も限られていた70年代後半の彼を捉えてくれていたという点でも大変に意義のある発掘となったのです。そして前座であったということや、二日目は途中からしか録音しなかったということもあり、CD一枚にすっぽり収まる演奏時間というのが聞きやすい。なおかつミラードらしい別格のクオリティは今回も健在。世界中のマニアを驚かせるであろう、ドノヴァンのライブにおける極めて貴重な時期の記録を極上音質で!The Forum, Inglewood, CA, USA 23rd & 24th September 1977 TRULY PERFECT SOUND (61:40) The Forum, Inglewood, CA, USA 23rd September 1977 01. Cosmic Wheel 02. Sunshine Superman 03. Brave New World 04. Lady Of The Stars 05. Hurdy Gurdy Man 06. The Intergalactic Laxative 07. Local Boy Chops Wood 08. The Light 09. Mellow Yellow 10. AtlantisThe Forum, Inglewood, CA, USA 24th September 1977 11. The Intergalactic Laxative 12. Local Boy Chops Wood 13. The Light 14. Mellow Yellow 15. Atlantis