マーク・セント・ジョン唯一の参加作にして、ノーメイクKISS最大のヒットを記録した『ANIMALIZE』。その制作現場をえぐり出すデモ・アルバムが登場です。そんな本作に収められているのは5曲・14テイクの秘宝たち。1984年4月のリハーサルから、本録音も進んだ5月29日までのセッションを記録したスタジオ・アルバムです。この録音は、10年以上前に発掘されるや世界中のマニアを震撼させたもの。それまで知られてこなかった秘宝であるばかりか、サウンド・クオリティも絶品。本作に収録されているのは5曲分のデモですが、曲毎にまとめられているのではなく、おおよそ録音の時系列順(一部例外あり)。各セッションごとにご紹介していきましょう。1984年5月16日セッション(2曲)「Heaven's On Fire」「Thrills In The Night」まず登場するのは2曲分のラフ・ミックス。『ANIMALIZE』は1984年4月にリハーサルを重ね、5月から本制作を開始したわけで、このセッションはまだ制作初期にあたります。一言で「デモ」と言っても作曲段階からアレンジの練り段階、本テイクの仮組み、本番ミックスのボツ版など、制作段階によってかなり個性が異なる。この2テイクは同じ日に録音されたのですが、段階は全線違うから面白い。冒頭で登場する代表曲「Heaven's On Fire」は、いきなり完成間近。カウントが入ったり、一部テイクも異なるようですが、基本のアレンジは固まっており、コーラスも入っている。早くから書かれていたのでしょうが、制作初期とは思えない完成度です。ところが、「Thrills In The Night」は一転して初期らしい大雑把なテイク。サウンドも大味なリズム・トラックを土台にリフがかき鳴らされている感じ。コーラスも一部入っていますが、あくまで「ここがサビ」と曲進行を把握するためのようなもので、基本的にヴォーカルなしのインスト版です。1984年5月20日(?)セッション(2曲)「Under The Gun」「Thrills In The Night(一部)」続いて登場するのが日付不明の「Under The Gun」と、5月20日録音の「Thrills In The Night」。「Under The Gun」は上記「Thrills In The Night」と同じくコーラスだけ少し入った程度のインスト版であり、もしかしたら5月16日セッションの可能性もあります。ただし、リズムやソロの完成度は高く、ムキ出しになった疾走感がたっぷりと味わえます。一方の「Thrills In The Night」はソロのオーバーダブ・パートのみ。別バージョンとして愉しむのではなく、パーツを試行錯誤する制作過程をのぞき見るタイプです。1984年5月25日セッション(5曲・7テイク)「Heaven's On Fire」「Thrills In The Night」「I'd Have Enough (Into The Fire)」「Get All You Can Take(2テイク)」「Under The Gun(一部・2テイク)」続いて登場するのが本作のメインともなるセッション。この日は「2曲分のラフミックス」「2曲(3テイク)分の初期デモ」「1曲(2テイク)分のパーツ」が記録されています。まずラフミックスは「Heaven's On Fire」「Thrills In The Night」の2曲。「Heaven's On Fire」が5月16日時点でかなり完成されており、ここでも磨きが進みつつ、基本はそれほど変わっていません。逆に一気に進化したのは「Thrills In The Night」。ヴォーカルもエフェクト入りでダビングされ、最終形がしっかりと見えるところまで完成しています。次は、まだ歌詞も決まっていないスキャットのガイド・ヴォーカルで録られた「I'd Have Enough (Into The Fire)」「Get All You Can Take」。しかし、歌はガイドではあっても演奏アレンジはビシッとしており、リズム隊もギターも切れ味鋭い。最終盤と同じテイクもあるのかは断言できないものの、そうであってもおかしくない完成度。基本インストだからこそ曲本来のカッコ良さが丸出しになるテイクです。そして、パーツ録音は「Under The Gun」。最終盤では曲のラストをマークのソロで締めますが、ここではそのソロの他、ドラム・パターンで締める別アレンジを試しています。1984年5月29日セッション(2曲)「I'd Have Enough (Into The Fire)(一部)」「Get All You Can Take?(一部)」5月末のセッションでは、さらに細かなパーツを録音している。マークは『ANIMALIZE』の作曲にはノータッチで、出来上がっていた曲にギターを被せていったそうですが、こうしたパーツ録音こそ彼の存在感が浮き彫りになるのです。1984年4月リハーサル(1曲)「Thrills In The Night」ここまでは制作過程を時系列に追ってきましたが、ラストに収録されているのは時間を遡った極初期デモ。作曲段階と思われる「Thrills In The Night」です。ただし取り留めのないジャムではなく、すでに基本のバッキング・パターンも曲構成も固まっている。断言は出来ませんが、ポールから教えられた曲の基礎をバンド全員で覚えているような感じのデモです。以上、全5曲・14テイクのスタジオ秘宝です。名盤・名曲の別バージョンとして聞いても面白く、制作過程をのぞき見る醍醐味にも溢れたスタジオ・デモの『ANIMALIZE』篇。『ANIMALIZE』の制作現場をえぐり出すデモ・アルバム。1984年4月のリハーサルから本録音も進んだ5月29日までのセッションが時系列に記録されたたスタジオ録音で、5曲「Heaven's On Fire」「Thrills In The Night」「Under The Gun」「I'd Have Enough (Into The Fire)」「Get All You Can Take」の初期バージョンやソロのパーツ録音が楽しめる。名曲の別バージョンとして聞いても面白く、制作過程をのぞき見る醍醐味にも溢れたスタジオ・アルバムです。Recorded & Mixed at Right Tracks Studios, New York City, NY, USA April - May 1984 (39:34) 1. Heaven's On Fire [Rough Mix 16Th May 1984] 2. Thrills In The Night [Rough Mix 16Th May 1984] 3. Under The Gun [Instrumental] 4. Thrills In The Night [Solo Overdub Intro 20Th May 1984] 5. Heaven's On Fire [Rough Mix 25Th May 1984] 6. Thrills In The Night [Rough Mix 25Th May 1984] 7. I'd Have Enough (Into The Fire) [Scat Vocals 25Th May 1984] 8. Get All You Can Take [Scat Vocals 25Th May 1984] 9. Get All You Can Take [Instrumental 25Th May 1984] 10. Under The Gun [End Solo Overdub 25Th May 1984] 11. Under The Gun [Diff. End Drum 25Th May 1984] 12. I'd Have Enough (Into The Fire) [Solo Overdub Attempt 29Th May 1984] 13. Get All You Can Take? [Solo Overdub Attempt 29Th May 1984] 14. Thrills In The Night [Rehearsal April 1984] Paul Stanley - vocals, guitar, bass Gene Simmons - vocals, bass Eric Carr - drums, percussion, backing vocals Mark St. John - lead guitar STEREO SOUNDBOARD RECORDING