『ZEP1977年のアメリカ・ツアーは結果としてプラントに起きた不幸によって強制終了の憂き目をみることになりますがツアー自体は大好評、1975年以来となるZEPアメリカ来襲はチケットのSold Outが相次ぎ、彼らの同国における人気が頂点に達していたことを証明していたのです。おまけにツアーのスケジュールは4月から始まって8月までアメリカを回るという長期的なもので、それでいて間にいくつもオフが設けられるという、正に王者の風格に溢れたツアーでした。中でもファースト・レグであった4月のツアーは久々のステージに対する慣らし運転のような様相を呈しており、この時点では従来のアリーナを回るという73年以降のZEPパターンを踏襲したもの。ところが頂点に達していた人気を証明するかのような巨大な会場を使ったコンサートがファースト・レグの締めくくりとして行われます。それが4月30日のポンティアック・シルバードーム。当時としては別格の集客が可能であったインドア・スタジアムはZEPがライブ活動休止中だった1975年の後半にオープン、この時のプロショット映像でおなじみザ・フーを皮切りとしてビッグなアーティストやグループのロックコンサート会場として使われるようになります。フーの際には75,962人という観客動員を記録したのですが、ZEPの場合はそれを上回る76,229人という途方もない観客動員を実現、当時のロックコンサートの最多入場者数を記録しています。1973年ツアーの際にもアトランタで56,000人もの動員を実現させて最多記録を作っていたZEP自身がこの日、それを軽く上回る動員で記録を更新してみせました。歴史的な一夜を捉えたオーディエンス録音でこの日を聞いてみても、壮絶な観客動員の臨場感がはっきりと伝わってくる。元々75年以降のZEPは大会場ライブが当たり前となった弊害から音像の遠い音源がいくつも存在しますが、こと76,229人もの観客が押し寄せた大会場でのライブを客席から録音するとなれば、どうしても音像が遠くなってしまう。そのせいか、この歴史的な大会場コンサートを収録したアイテムは現在に至るまで懐かしのTDOLZレーベルがリリースした「HOT RODS IN PONTIAC」しか存在しない。77年ツアー初期のステージの中でも特に重要な日が二十年もの間に渡って再発されなかったとは意外。また「HOT RODS~」は90年代CDアイテムの悲しさと言うべきか、ジェネ落ちカセットからの収録によって音質が濁ってしまっただけでなく、全体を通してピッチが低いという問題を抱えたままCD化されていたのです。これで1977年ポンティアックは「マニア限定音源」の烙印が押されてしまったも同然だったのですが、近年になって「2 gen」表記のコピーがネット上に登場しています。このバージョンは飛躍的とまではいかないまでも、さすがに「HOT RODS~」よりも音質は向上。それに何と言ってもピッチが正常。古の紙ジャケCD「HOT RODS~」と比べるとかなり聞きやすくなっていたのです。このバージョンの登場が今回のリリースのきっかけとなりました。この音源で圧倒されるのは、先にも触れたように大観衆がシルバードームに詰めかけた凄まじいステレオの臨場感。音を聞いているだけでも76,229人が押し寄せた雰囲気がはっきりと感じられる。これは他の日のオーディエンス録音とはまったく違う感触。それだけの人が押し寄せた中で敢行されたオーディエンス録音だというのに、周囲に騒ぐ人物がいなかったというのは奇跡としか思えない。実際に会場側や警備側もそれだけに人数が集まったことで起こるであろう混乱を警戒していたとされていますが、実際には驚くほど順調にショーが進んでいたことも録音が証明しています。確かに音像は遠めなのですが、それでも意外なほど演奏のディテールが捉えられているのが驚きでしょう。「HOT RODS IN PONTIAC」と比べてジェネレーションがよりロウなものとなり、何よりピッチが正確になったことで、はるかに演奏が聞き込めるようになった。そこから伝わってくるのはこの日のZEPの絶好調ぶり。そもそも、ポンティアックの前に行われていたのはクリーブランドでの二日間。そう、「DESTROYER」と「DESTROYER II」ショーだったのです。どちらも当店がベスト・バージョンをリリースした日ですが、これらを続けて聞くとクリーブランド初日でZEPが調子を掴み、二日目でエンジン全開、そしてポンティアックでバンドが爆発したことがよく解ります。それにこの日はファースト・レグの最終日であり、それでいて過去最高の動員を実現させたマンモス・コンサートでもある。彼らの士気が高まらない訳がない。中でも際立っているのがロバート・プラント。この日の後は二週間のオフが待っているということもあり、出し惜しみなしのパワフルな歌唱が随所で聞かれます。その最初の名演と言うべきが「In My Time Of Dying」。ここでは歌い出しからしていつもよりテンション高めですし、それどころか曲を通して絶好調。むしろこの曲を皮切りとして、ほとんどの曲でプラントの激しくも力強い歌が冴え渡っている程。「Kashmir」でも77年ツアー中ベスト3に入るのでは?と思えるほど強烈にシャウトしてみせます。プロショット映像で有名な7月のシアトルとはまるで別人のよう。実はこのシルバードームに関しても会場スクリーン映写用プロショット映像が存在すると噂されていますが、未だに発掘されていません。さらにバンドも絶好調で、長い「No Quarter」も飽きさせない展開がお見事。「The Nutcracker Suite」が飛び出した28日「DESTROYER II」のバージョンも名演でしたが、この日も負けていない。途中からボンゾを中心としたワイルドな展開が素晴らしいのですが、20分辺りになるとペイジが仕掛けてボンゾが応戦するというスリリングな場面まで登場。この展開こそ、今回同時リリースとなるLAフォーラム7月23日のような名演の碇石になったのだと言っても過言ではありません。そして「Achilles Last Stand」のボンゾを始めとした力任せで荒々しい演奏も迫力十分。ただし「Stairway To Heaven」の前半で爆竹が鳴らされてしまいますが、それにも動じず演奏を続けるメンバーが頼もしい。逆に言えばマンモス・コンサートにおける唯一のハプニングがこの場面でした。確かに音像が遠い録音状態がマニア向けな音源なのは事実でしょう。しかし今回のバージョンで明らかに聞きやすくなったのも事実であり、意外なほど聞き込めてしまうことに嬉しい驚きを感じてもらえるかもしれません。そして何よりもZEPの演奏が絶好調。77年アメリカ・ツアー開始当初に彼らが目指したであろうサウンドの到達点とも呼べるのがこのポンティアックでの大観衆を前にしたコンサートではなかったでしょうか。77年アメリカ・ツアーのファースト・レグから、その激アツな演奏がマニアを唸らせるレア音源のアッパー版として久々の登場!』Live At Pontiac Silverdome,Pontiac,MI,USA 30th April 1977 Disc 1 1. Intro 2. The Song Remains The Same 3. The Rover Intro / Sick Again 4. Nobody's Fault But Mine 5. In My Time Of Dying 6. Since I've Been Loving You 7. No Quarter TOTAL TIME (66:15) Disc 2 1. MC 2. Ten Years Gone 3. The Battle Of Evermore 4. Going To California 5. Black Country Woman 6. Bron-Y-Aur Stomp 7. White Summer 8. Black Mountain Side 9. Kashmir TOTAL TIME (46:28) Disc 3 1. Over The Top 2. Guitar Solo 3. Achilles Last Stand 4. Stairway To Heaven 5. Rock And Roll 6. Trampled Underfoot TOTAL TIME (59:51)