もはやZEPマニアでなくとも音楽好きなら1タイトルは所有しているのでは?と思えるほどレア・ライブ音源のスタンダードと化した「LISTEN TO THIS EDDIE」。日付を言わなくとも「エディ」と呼べば通じてしまうほどの超メジャー音源は2020年に晴れてマスターテープが出土、そこからのリリースが熾烈を極めたのも記憶に新しい。おまけにマスターを公開してくれたJEMSチームが最初は独自にイコライズを加えたバージョンを提供するという「余計なお世話」をやってくれたことで炎上。そこで起きた批判を受け、次に小細工なしの所謂「FLAT TRANSFER」バージョンを公開してくれたことで騒動が鎮火した訳ですが、この時のバージョンと熾烈を極めたリリースによって、「エディ」は遂に決定版が登場したのだ…誰もが感じたものです。ところが、無敵のミラード録音の中で最後の砦とも言うべきカットが「Achilles Last Stand」の前で繰り広げられていたジミーのギター・ソロの中にあったのです。それは彼の独演が14分を迎えた辺り、バイオリンの弓を用いたボウイング・パートで生じていたもの。幸いにもボーカルやドラムが入るパートではないので、このカット個所をつまんだバージョンなども過去にはリリースされていたものですが、そこで望まれるのが別音源の存在です。ここで1977年6月21日の現存するオーディエンス録音について振り返ってみましょう。Recorder 1 マイク・ミラードによる永遠の名作オーディエンス。「Ten Years Gone」と先の「Guitar Solo」においてカセット交換によるカットが生じています。ステレオ Recorder 2 今から20年以上前に懐かしのTDOLZ「POWER & GLORY」ボックスにて「Ten Years Gone」カット部の補填要員として出土。ただし音源全体の流通はなし。モノラル Recorder 3 四年前に出土して世界中のマニアを騒然とさせた所謂「Erik」ソース。こちらもモノラルだが「Recorder 2」よりは音像が近い。「Erik」ソースによって遂にミラード・ソースの欠損個所が埋まるのかと思いきや、何と同ソースは肝心の「Guitar Solo」が録音されなかったというオチ。それぞれに「Guitar Solo」がテープ交換ポイントに当たってしまい、そもそも6月21日の新たなソースが登場したというだけで、いかに奇跡だったのかを思い知らされたのでした。2020年のマスター出土を頂点として、もはやこれ以上「エディ」の発掘はありえない…誰もが納得していたところ、年が明けた途端に絶好調The Dogs of Doomがまさかの「Recorder 2」ロングバージョンを公開してくれたのです。世界中のZEPマニアに対するお年玉と言っても過言ではない驚きの発掘だったのですが、これもまた録音が「Guitar Solo」までという際どい収録状態。今回のバージョンも例の個所が未収録だとしたら、もはや1977年6月21日のオーディエンス録音による完全な再現は永遠に不可能となってしまう…。ところが本当に幸いなことに、「Recorder 2」は問題の個所までちゃんと録音してくれていたのです!世界中のマニアにとって見果てぬ夢だった6月21日の完全収録。それが「Recorder 2」全長版の登場によって遂に可能となり、例のパートの20秒ほどの欠損が見事にアジャストされることになりました。先に申しましたように、ドラムやボーカルの入らない箇所ですのでモノラルで音像遠目な音源をステレオのミラード録音にパッチしても驚くほど違和感がありません。とはいっても、この処理だけを施して「決定版エディ」とするのはあまりに安易。そこで今回はミラード・マスターの出土からも一年以上が経過した今、改めて同バージョンを洗い直すことから始めています。2020年の公開時にひと悶着起きた「FLAT TRANSFER」ですが、テープそのものの経年に加え、JEMSチームが再生に使用したカセットデッキのグレードの問題などもあり、ナチュラルながらも腰のない線の細さが気になる状態だったのは事実。もっともJEMS側もそのことを気にして最初にイコライズを施したバージョンを公開したのだと思われますが、その仕上がりがイマイチだったのもまた事実。そこで「FLAT TRANSFER」バージョンを再び見直し、ミラードが1977年に録音した当時にあったであろうカセット本来の持ち味を生かすことに注視。今回モデルとなったのが懐かしのシルバー・レアリティーズが最初にリリースしたバージョンの「LISTEN TO THIS EDDIE」。マニアの間で「バラ・エディー」と呼ばれていたリリースも後にレーベル自身がスタンプジャケの「MASTER」バージョンに刷新したことで用なしになったのかと思いきや、シルバー・レアリティーズのミスター・トードと呼ばれる主宰が1992年に入手したであろうカセットの状態が非常に良く、そこに加えて余計な小細工のないナチュラルな状態が21世紀を迎えて再評価の機運が急上昇。ピッチの狂いが玉に瑕ではあったものの、派手めな「MASTER」よりナチュラルな状態が好ましいということから、まさかの復権を果たしたのでした。「バラ・エディー」にあったようなナチュラルさがマスター使用によってさらに忠実に蘇ったのなら…それが今回のコンセプト。リマスター・メモを読んでいただければわかるように、今回の緻密な音源の調整の仕上がりは本当に素晴らしく、それと2020年アイテムを聞き比べてしまうと、例えば「LISTEN TO THIS, EDDIE: MIKE MILLARD MASTER TAPES: FLAT TRANSFER」などはか細く、なおかつ薄膜掛かって硬質な音に聞こえてしまう。だからこそ今回は、いわゆる「イコライズ」の範疇に入ってしまうような大げさな音の処理とは次元が違う、あくまで緻密な「調整」という作業を徹底したのでした。その結果が2020年アイテムの多くで欠けていたメリハリとナチュラル感が合わさった、これぞ「FLAT TRANSFER」と呼ぶに相応しい状態での収録を実現。2020年の時点で極められていたと思われていたカセットマスターの素性をフルに出し切ってみせたのが今回のバージョン。そこに加えて「Recorder 2」使用による「Guitar Solo」の史上初となる完全収録が実現となれば、これはもう鬼に金棒。嘘偽りなしに「BEST & LONGEST」な「エディ」を世界中のマニアに捧げます。(リマスター・メモ)Src2(今までTYGのみが聞けた)のロングバージョン(ライブ冒頭からGソロまで収録したロスレスデータ)が公開されたことを受けて企画されたタイトル Src1(ミラード)及びSrc3(ERIK)でも補完しきれなかったGソロ(DAZED AND CONFUSED)パート約20秒ほどが、今回公開されたSrc2のロングバージョンで補完。これにより当日のライブ演奏パートが完全収録となった。 Src2のGソロ補填パートにロスレスデータ(帯域ダウンがなく音質劣化がないWavデータ)を使用してるのは、現時点で本盤とGRAFのみ メインソースは近年登場のおなじみミラードマスター(Flat Transfer)がベースで、それを最新マスタリング。EQは、旧Sira(SIRA-16/17/18盤・・・いわゆる"バラ・エディ")的な方向で。「本来のFlat Transferがこんな感じ」なサウンドを指向。 派手なアピールは本盤ではほどほどとし、しかし多少の高域と低域は意識したマスタリング。 また旧SIRA(バラ・エディ)で感じられた若干癖のある中音域はいくぶんカット。★Flat Transferは、元々のままでは腹膜がかった、腑抜けでメリハリに乏しい感もあるマスターであり、そのままの状態ではナチュラルと言うには全くほど遠いサウンドであった。ここではバランスを重視しながら、その腑抜けでメリハリに欠けたサウンドが最小限のEQ処理により解消 既発GRAFと本盤があれば、他のエディは一切不要。 The Forum, Inglewood, California, USA 21st June 1977 DISC 1 (69:43) 1. Introduction 2. The Song Remains The Same 3. The Rover - Sick Again 4. Nobody's Fault But Mine 5. Over The Hills And Far Away 6. Since I've Been Loving You ★演奏後8:35-8:44 Erikソース 7. No Quarter DISC 2 (53:51) 1. MC 2. Ten Years Gone ★曲中5:05-5:21 Erikソース 3. The Battle Of Evermore 4. Going To California 5. Black Country Woman 6. Bron-Y-Aur Stomp 7. White Summer 8. Black Mountain Side 9. kashmir ★演奏後9:22-9:38Erikソース DISC 3 (75:19) 1. MC 2. Out On The Tiles / Moby Dick 3. Heartbreaker 4. Guitar Solo ★曲中14:48-15:12 Src2 ★Gソロが初の完全収録! 5. Achilles Last Stand 6. Stairway To Heaven ★演奏後12:35-12:44Erikソース 7. Whole Lotta Love 8. Rock And Roll