現在もなお続くマイク・ミラードのマスター・カセット公開シリーズの中でも、世界中のマニアが待ち望んでいたのがZEPの1975年一連のLAフォーラム公演ではないでしょうか。既に最高傑作である「LISTEN TO THIS EDDIE」のマスター公開は実現してくれていた訳ですが、その後のミラードによるZEPライブ録音のマスターに関しては、なかなかにもったいぶられている感があった。中でも75年に関しては既にロングビーチ二日分のマスターが公開された訳ですが、彼による75年ZEPの神髄はむしろLAフォーラムなはず。何しろ、その録音に備えるべく試験的な録音を兼ねて参戦したのがフェイセズの「LA FORUM 1975: MIKE MILLARD 1ST GEN」だったのですから。それにZEPにおいてもロングビーチ二日目においてライブに遅刻するという失態を犯してしまった。彼からすればLAフォーラムで再びZEPを捉えることは何が何でも遂行せねばならない命題だったはず。それにミラードが録音したZEP75年LAフォーラム公演に一貫しているのは、信じられないほど近い音像。確かにロングビーチも素晴らしかったのですが、オンな度合いという意味でLAフォーラム三日間はどれも彼の録音キャリアにおける最初の頂点だといえ、さすがは万全を期して録音しただけのことはあります。そう、あの伝説となった車椅子を持ち出してまで敢行した最高傑作がこのLAフォーラム三日間だったのです。これら一連の75年LAフォーラムはその時代を考えればまるで別次元、文字通りのウルトラ・レコーディング。というのも、これらの録音で演奏の近さはもちろん、ロバート・プラントの歌声の近さと言ったら。パッと聞いた感じだとほぼほぼサウンドボードだと錯覚してしまいますし、もしこれらの音源がLPの時代にリリースされていたとしたら、完全にサウンドボードだと喧伝されてしまっていたことでしょう。いや、実は3月25日だけは「PURE BLUES II」というタイトルでリリースされていたものの、それが1990年代前半というCDの台頭と同時にLPアイテムの衰退がはじまった時期でしたので、その存在を知っている者が少なかったのでは。今回、75年LAフォーラム三公演から記念すべきマスターが公開されたのも25日。この日がまたド迫力の音像で捉えられており、多くのマニアは「COSMIC CRAZY」、「GET BACK TO LA」そして二作に分けられた「SEX MACHINE AND THE BUTTERQUEEN」と「THE REVENGE OF THE BUTTERQUEEN」といったCDアイテム辺りで初めてこの衝撃のオーディエンス録音に接せられたのではないでしょうか。今からするとこれらのアイテムはジェネ落ち感も甚だしいクオリティだったのですが、マイク・ミラードの名前すら知らない当時、ひたすらその驚異的な音像の迫力に圧倒されるばかりでした。その後1975年LAフォーラム究極のセット「DEEP THROAT」などで極められた感のある音源でしたが、近年JEMSがミラードのマスターからコピーされたファースト・ジェネレーション・カセットを元にした「LA FORUM 1975 2ND NIGHT」の登場によって、ミラード音源そのもののベストなリリースも決着したかに思えたものです。それだけに今回のマスター登場、これぞ「真打登場」と呼ぶに相応しいものが。流石はマスター・カセット、その差は歴然。あれほどのアッパー感に思えた「LA FORUM 1975 2ND NIGHT」(以下“既発盤”と称します)ですら、今回のバージョンの前では抜けの悪い音に映ってしまう。そもそも本音源はカセット・トレード時代に出回った際、かなりのジェネ落ち感が上乗せされたのも事実でしょう。よって90年代の各アイテムなどは「音は近いがクリアーさに欠ける」音質であったように思えたもの。それも既発盤登場時、一気に晴れたかのように思えたのですが、今回のマスターは正にネクスト・レベル。既発…というかファースト・ジェネレーションに残っていた薄皮がようやく取れ、スッキリとした見通しの良さを痛感させてくれる。それに自然に通り抜けるヒスもミラード・マスターらしい。ZEP75アメリカ・ツアーの千秋楽であるLAフォーラム三夜公演はそれぞれが音響トラブルに見舞われながらも激しく演奏してみせたことで知られていますが、そんな様子を生々しくドキュメントしてくれたのもミラード圧巻の車椅子レコーディングだからこそ。例えば「The Rain Song」ではジョンジーの弾くメロトロンが不調に見舞われてしまう様子が手に寄るように分かるのです。増してや静かな曲ということでなおさら。演奏の全体的なボルテージはツアー終盤ということで非常に高めながら、それを邪魔するかの如く立ちはだかっていたのがLA三日間で生じた音響トラブルかと。そうした問題が落ち着き始めた「Trampled Underfoot」でのバンドは、それこそ胸のすくような快演を披露。何しろ音が近いので、プラント以外の三人が一緒に上り詰めて歌に戻る様なども、これまた手に取るように伝わってくる。さらに「Dazed & Confused」はシアトル辺りから肥大していた演奏がさらにエスカレート。おなじみサンフランシスコ・セクションにおいてロバートがR&Bクラシック「Spanish Harlem」を歌ってみせるなど、演奏の前半からしていつもと違う展開を目指した果てに演奏は40分にも及んでいます。ライブ終盤になると「Whole Lotta Love」で寄り添ったジミーとロバートが一緒にコーラスする場面もしっかり聞き取れますし、何よりこの日はファンキーな展開からジェームス・ブラウンの「The Sex Machine」へと移るのがスリリング。このまま一気に駆け抜けてライブを終えるかと思いきや、ロバートが「Black Dog」で歌詞を間違えてしまい、危うく演奏がフリーズしそうになるという有名なハプニングまで、高音質が故に生々しくドキュメント。それだけに、せっかくのマスター・カセットで狂っていたピッチがおざなりなまま公開されたのは汚点だったのですが、もちろん今回のリリースに際してはきっちりアジャスト。また今回はZEPのミラード録音ということもあり、マスターを小細工なしにファイル化した「Flat Transfer」バージョンだけでなく音源のアジャストを依頼したバージョンの二種類が公開されました。ロングビーチ二日目の時には彼によって手が加えられたバージョンだけの公開となったことが炎上してしまった訳ですが、それにこりてか(笑)今回は両方をちゃんと用意してくれています。もちろんフラットなバージョンが絶品であることは間違いないのですが、dadgadによってリマスターされたバージョンの完成度も非常に高い。文字通り生のままの状態で収録された前者と違い、むしろ初心者などはこちらの方がとっつきやすいかもしれません。もちろんイコライズ感は否めませんが、それでもなおリマスターならではの垢抜けた仕上がりと迫力は魅力十分。それに何と言っても迫力の音像で知られた75年LAフォーラムのミラード録音です、どちらのバージョンもそれぞれに楽しめること請け合い。彼が遺した究極オーディエンスのマスターが遂に! (リマスター・メモ)ピッチが半音の20~30%速いので修正。今回盤を基準として既発は左右反転及び波形の位相が反転している。音質は既発盤はFlat Transferのヒスを抑えた感じなので今回盤の方が印象が良い。Masteredは、普通にメリハリの効いたイコライズです。既発(1ST GEN) との長短 *短いのは下記で、本来は4秒弱短いのですがフェードの関係で長めに補填。左右逆転/位相反転/それぞれにイコライズして繋いだのでほぼ違和感ないと思います。6. The Rain Song ★7:28 - 7:35 既発補填*長いのは下記のみです。3. Moby Dick ★22:38からの約3秒間の歓声が既発より長い The Forum, Inglewood, CA, USA 25th March 1975 TRULY PERFECT SOUND(UPGRADE) FLAT TRANSFER EDITION Disc 1 (53:06) 1. Rock And Roll 2. Sick Again 3. Over The Hills And Far Away 4. In My Time Of Dying 5. The Song Remains The Same 6. The Rain Song ★7:28 - 7:35 既発補填 7. Kashmir Disc 2 (62:19) 1. No Quarter 2. Trampled Underfoot 3. Moby Dick ★22:38からの約3秒間の歓声が既発より長い Disc 3 (68:15) 1. Dazed And Confused 2. Stairway To Heaven 3. Whole Lotta Love 4. Black Dog MASTERED EDITION Disc 4 (53:06) 1. Rock And Roll 2. Sick Again 3. Over The Hills And Far Away 4. In My Time Of Dying 5. The Song Remains The Same 6. The Rain Song ★7:28 - 7:35 既発補填 7. Kashmir Disc 5 (62:19) 1. No Quarter 2. Trampled Underfoot 3. Moby Dick ★22:38からの約3秒間の歓声が既発より長い Disc 6 (68:15) 1. Dazed And Confused 2. Stairway To Heaven 3. Whole Lotta Love 4. Black Dog