歴史的名盤「IV」や稀代の名曲「Stairway To Heaven」が生み出され、さらには伝説の初来日公演が行われるなど非常に華々しい印象のある1971年のZEPですが、実は4月のBBC収録の後、先のアルバムの仕上げが優先されたこともあって夏までの間が大きな空白地帯となっている。この時期にもグループは散発的なライブを行っていたのですが、存在する音源が極めて少ない。そんな中で唯一と言える貴重なオーディエンス録音が5月3日のコペンハーゲン。ZEPの新章が始まろうとしている時期、まだリリースどころか完成直前だったアルバム「IV」収録曲の試験投入を行った大胆なステージのドキュメントとして今も昔もマニアに重宝されています。そんなテスト段階を物語っていたのが後に「IV」でリリースされることになる「Four Sticks」。この曲がライブで披露されたのは後にも先にもこの時だけ。もう一つの貴重なレパートリーが前作からの「Gallows Pole」。今でこそこの曲は同年後半にも何度かステージ披露していたことが判明していますが、「Four Sticks」と同様にライブ演奏されていたという事実が発覚したことは世界中のマニアを驚かせたものです。実際、この日の音源を最初にリリースしたのはこれら二曲だけをA面にまとめたアナログ10インチで、振り返ってみると目玉の曲だけを収めるという商魂たくましいアイテムでした。この日の全貌が明らかになったのはCDの時代になってからで、縦長デジパックが懐かしい「POLES AND STICKS」を始めとして多くのアイテムを生み出すことになります。いざ聞いてみればモノラルで音像は遠めながらも思いのほか聞きやすく、例の二曲どころかライブ全体が非常に貴重な内容であったことを思い知らされたのでした。ところがリリースされたアイテムはピッチや編集など、どこかしら問題を抱えたリリースばかり。そうした状況にようやく終止符を打ってくれた決定版がGraf Zeppelinの前身によってリリースされた「STICK OUT!」。それ以前のアイテムが抱えていた問題をすべて解消し、リリースされるやいなやコペンハーゲンの決定版としてマニアから高く評価されたタイトルもリリースから早10年以上の歳月が経過、何より入手困難となって久しいアイテムとなっていました。本タイトルが市場から消えてしまったせいで、そもそも71年コペンハーゲン自体を聞いたことがない人も少なくないはず。正に再リリースが待たれていた名盤と呼べるでしょう。そこで今週、Graf Zeppelinの肝いりで世界中のマニアが待ち望んだ新世代決定版が遂にリリースされることになりました。とはいっても「STICK OUT!」自体が非常に完成度の高い仕上がりを見せていましたので、今回は音源の完全モノ化から始まるオーバーホール最後の一手を加えるだけに留まっています。また前回と比べて高音の抜けがナチュラルに良くなっている点にも違いが生まれており、今回のすっきりとした感触を好まれるマニアも多いのでは。そしてピッチの狂いに関しても洗い直し、特にライブ終盤で散見された不安定さも最新技術を駆使して解消。レア曲やレアな場面が続出する場面を今まで以上に落ち着いて聞きこめるようになったのも今回の再リリースにおける重要なポイントかと。最初に触れたレア曲についつい目が行きがちなこの日ではありますが、さらにこの日がZEPのライブ記録として非常に重要な点として、ロバートが「IV」収録曲をほぼ完全にアルバム・バージョンのメロディラインで歌いあげてくれているということ。「Black Dog」などは早くも夏の時点で歌詞の終わりの部分のメロディを下げて歌われるようになってしまうのですが、この日はそこも難なく歌ってみせるのが頼もしい。そこにこの日がBBCの収録以来のステージという事も合わさり、ロバートのスクリーミング・ボイスはエンジン全開。「IV」収録曲をアルバム・バージョンとまったく同じ旋律で歌い切った日というのは非常に貴重で、その点でもこの音源が重要な意味を持つのです。この時点ではリリース前の新曲であった「Stairway To Heaven」でもロバートが序盤からハイトーンで攻めまくり、エンディングも完全ハイトーンでフィナーレとなる様子は聞いていて鳥肌が立ちそうなほど。この時点で数回ライブ披露していたとはいえ、まだまだ初々しい雰囲気が本当に尊い。ジミーのギターソロもまたしかり。そしてライブ終盤は先の「Four Sticks」を皮切りとしたレア・ナンバーのオンパレード。同曲はリズムのカオスとでも呼びたくなるような雰囲気が異色である一方、アルバムとは違ったライブ用のアレンジが練り切れていない感が否めず、それがこの日だけの披露に終わってしまったのでは。さらにプラントが全編を通してハイトーンで歌い切らなければならない点も仇となったか。続く「Gallows Pole」はイントロの音色からしてジミーがダブルネックの12弦で弾いていることが明らかですが、これは71年から導入したダブルネックSGを使ったさらなるレパートリーとして試したのでしょう。ところがこちらもアレンジが練り切れてないのが明白な演奏で、前の曲よりは弾きやすい、あるいは歌いやすい曲調であったことから後のUKツアーで再度のトライが試みられたのだと思われます。そして攻めまくったセットリストの一日に相応しく、締めくくりもリリース前の「IV」収録曲が立て続けに披露。まだ「Rock And Roll」はBBCの前からステージで試されていましたが、何と言っても「Misty Mountain Hop」の71年リアルタイム・ライブ演奏はこの日だけ。こちらは後の扱いからも解るようにライブ向けなレパートリーだった訳ですが、ここではいかにもライブ初演らしくロバートが歌のタイミングを見失いがちで、それが71年はこの日だけの披露に終わった理由なのかもしれません。しかも今回はテープのヨレが解消されてさらに聞きやすくなりました。それでもなおロバートは最後までハイトーンで歌い通しており、これまた非常に貴重なライブバージョンとなっています。それに音像自体は距離感がありながら、彼の歌声に関しては大きなバランスで捉えてくれており、彼のスクリームが会場に響き渡る様があまりに生々しい。これもまた本音源の大きな魅力。ZEPの歴史においてもこれほどまでにリリース前の新曲を立て続けに披露した日というのは非常に珍しく、なおかつ非常に聞きやすい状態で記録されていたのは奇跡でしょう。それ故にマニアから愛された日の新たな決定版がGraf Zeppelin自身によって刷新されました!(リマスター・メモ)REMASTERED BY GRAF ZEPPELIN★既発は 「STICK OUT!」 前回盤と同様トレーダー間に流通するMono Aud MasterからのCD化。但し枝葉違いで音源は複数存在するため、今回は高域の出ているバージョンからのCD化。波形の見た目は前回盤よりも間違いなく良いです(中心軸に対してキチンと対象である)。ピッチ修正のうえ、完全モノ化。ピッチは、チューニングの狂いが大きく、判然としませんが、前回盤では若干低かったと判断し補正。 今回は鮮度を重視しヒスリダクション等掛けてません。Live at K.B. Hallen, Copenhagen, Denmark 3rd May 1971 TRULY AMAZING SOUND(UPGRADE) Disc 1 (65:33) 1. Introduction 2. Immigrant Song 3. Heartbreaker 4. Since I've Been Loving You 5. Dazed And Confused 6. Black Dog 7. Stairway To Heaven 8. Going To California 9. That's The Way Disc 2 (56:28) 1. MC 2. What Is And What Should Never Be 3. Four Sticks ★ 4. Gallows Pole ★ 5. Whole Lotta Love 6. Communication Breakdown 7. Misty Mountain Hop 8. Rock And Roll