新型コロナ・パンデミックから立ち直り、全世界のメタルバンドが集結している2022年ヨーロッパの夏フェス。その濃密シーンで王者として君臨するIRON MAIDENの最新ライヴアルバムが登場です。そんな本作に吹き込まれているのは「2022年6月4日ヒュヴィンカー公演」。フィンランドを代表する音楽祭“ROCKFEST”に出演した際の極太オーディエンス録音です。当店では最新“LEGACY OF THE BEAST World Tour”を初日からレポートしており、本作で4作目。まずは、ツアー・スケジュールからそれぞれの位置関係を整理しておきましょう。・5月22日『ZAGREB 2022(映像)』・5月24日;ベオグラード公演 ・5月26日『BUCHAREST 2022(映像)』・5月31日『KAUNAS 2022』・6月2日:リガ公演・6月4日:ヒュヴィンカー公演 ←★本作★・6月7日ー7月4日:欧州(12公演)>>今ココ<<・7月7日ー31日:欧州(11公演)・8月27日ー9月4日:ブラジル(4公演)・9月7日ー10月27日:北米(25公演)これが現在進行中の“LEGACY OF THE BEAST Tour 2022”の全体像。7月いっぱいまでヨーロッパの夏フェスを巡っており、本作の“ROCKFEST”出演は、その6公演目にあたるコンサートでした。実はIRON MAIDENの場合、ここからがツアー本番とも言われています。常々スティーヴ・ハリスは「本調子までに5回くらいはかかる」と語っており、コレクター間ではどのツアーでも5ー15公演目くらいがスウィート・スポットと目されている。まあ、実際には法則通りとはならないツアーもあるものの、ひとつのメドには違いないのです。反響ゼロの野外らしい開放感の極太録音 そんな注目ステージを真空パックした本作は、まさに極上の業物。前回ご紹介した『KAUNAS 2022』が「これ以上はムリじゃね?」というほどのサウンドでしたが、本作も負けてないから驚き。何が凄いって、反響ゼロの野外録音だからこそのダイレクト感とダイナミズム。『KAUNAS 2022』はギリギリと絞り上げたようなタイト感だったわけですが、本作はやけにぶ厚い。もちろん野外だけにホール鳴りはゼロでして、このぶ厚さはPA出音が由来。そのため、厚みはあってもディテールは克明なのです。しかも、このダミナミズムが『戦術』のエピック路線にぴったり。重厚な世界観に強力な迫力が宿り、えらくドデカいスペクタクルを描いてくれるのです。そのエピックな世界観に意外な効果を挟んでいるのが現場の風、現場では風が吹いていたらしく、開演を告げる「Doctor Doctor」や「Blood Brothers」などで少し風音を拾っているのです。もちろん、普通なら欠点になるのですが、本作の演奏音はその風を乗り切るほどに極太で、風音を制圧してしまう。しかも、その風がスパイスとなって妙に雄大なムードを演出しているから不思議。それこそ「The Writing On The Wall」だと、SFサムライ絵巻のPV世界の中でフェスが開かれているかのようです。絶好調のフルショウと70歳記念のバースデー・ソング 本作は、そんな極太スペクタクル・サウンドで「究極ベスト+新曲」という2022年型“LEGACY OF THE BEAST”を丸ごと体験できる。すでにセットはご存知と思いますので省略しますが、それを綴るパフォーマンスが最高。今回のツアーに関しては初演からブルース・ディッキンソンが絶好調にぶっ飛ばしていましたが、本作では楽器陣もこなれて全力運転モードに入っている。世界中のコレクターが期待した通りの充実のフルショウが展開されているのです。そして、それだけでなく本作だけのスペシャルなのがニコ・マクブレイン。実は、本作の翌日である「7月5日」が彼の70歳の誕生日なのです。現場の観客も最初からそのことを知っており、開演時からニコ・コールを連発している。そして、バンド側がそのムードに応え、アンコールの「Aces High」で大団円を迎えた後、ブルースの温度でバースデー・ソングの大合唱が行われるのです。場数を重ね、いよいよ本領発揮となった最新型“LEGACY OF THE BEAST Tour”。その現場をダイナミックなスペクタクル・サウンドでフル体験できる最新ライヴアルバムです。純オーディオ的には今なお『KAUNAS 2022』が王座に君臨しておりますが、リアルな現場の体験感と高揚感では本作が上を行く。“LEGACY OF THE BEAST Tour”を体験し損ねた私たちだからこそ胸に染みる最新作。「2022年6月4日ヒュヴィンカー公演の極太オーディエンス録音。反響ゼロの野外録音だからこそのダイレクト感が素晴らしく、その上でPA出音が由来のぶ厚いダイナミズムも圧巻。このサウンドが『戦術』のエピック路線にぴったり。重厚な世界観に強力な迫力が宿り、えらくドデカいスペクタクルを描いてくれる。ニコ・マクブレイン70歳の誕生日を祝うバースデー・ソングの大合唱も巻き起こり、フェスらしい開放感と高揚感に満ちた最新ライヴアルバムです。 Hyvinkaan lentokentta, Hyvinkaa, Finland 4th June 2022 TRULY PERFECT SOUND Disc 1(63:36) 1. Doctor Doctor 2. Senjutsu 3. Stratego 4. The Writing on the Wall 5. Revelations 6. Blood Brothers 7. Sign of the Cross 8. Flight of Icarus 9. Fear of the Dark Disc 2(47:15) 1. Hallowed Be Thy Name 2. The Number of the Beast 3. Iron Maiden 4. The Trooper 5. The Clansman 6. Run to the Hills 7. Aces High 8. Happy Birthday to Nicko