人気の“モービル・フィディリティ”のCD復刻シリーズ。その最新弾がリリース決定です。アナログ・マスター専門メーカーの“モービル・フィデリティ・サウンド・ラボ(MFSL)”と言えば、世界のオーディオ・マニア達が絶大な支持を寄せる信頼のブランド。音の匠が情熱の限りを込め、大名盤の数々をマスター・テープからデジタル化していきました。そんなシリーズの中で、本作に収められているのは1989年にリリースされたCD『UDCD 516』。エルトン初のマルチ・プラチナに輝いた名作『マッドマン』です。マスターテープ・サウンドを最重視したモービル・フィディリティアナログ作品のCD化が最盛期を迎えた90年代には高音質CDが数多く登場しましたが、その中でもMFSLは別格でした。他の高音質CDは新技術によって圧縮の違和感を減らしたり、素材で読み取りエラーを減らしたりといった「デジタル劣化を抑える」発想のもの。それに対してMFSLのポリシーは「マスターテープに刻まれた音を忠実に再現し、余分なものを足したりしないこと」。磁気テープから音を引き出す段階にも目を向けた独自の“ハーフスピードマスタリング”技術を開発するなど、“アナログ録音された音そのもの”を最重視にしているのです。そんなMFSLは1987年からレコード会社からオリジナルのマスターテープを借り受け、数々の名盤を1本1本緻密にデジタル化。マスターテープの音をCDに移し替えていく“Ultradisc”シリーズをリリースして行きました。現在はSACDやLPの分野にも進出していますが、本作は80年代末期にCD化していたというのもポイント。磁気テープのマスターは経年劣化に弱く、時間が経てば立つほど録音当時の音が失われていく。テープが歪んだり張り付いたりといったケースもありますが、たとえ精密に保管されていたとしても磁気の消失までは防げない。現在では、マスターテープそのものより物理的な溝で記録するLPの方が音が良かった……などという事態も起こりつつあるのです。その点においても“Ultradisc”シリーズは偉業だった。CDの普及期にあった80年代から始められており、高音質を謳う新技術CDの登場よりも早くにマスターテープの音をデジタルに残したのです。ピアノ、ヴォーカル、ストリングス……すべてが生々しくナチュラルな『マッドマン』そうして“録音から18年”時点のマスター・サウンドを伝えてくれるのが、本作の『マッドマン』。MFSLのゴールドCDには「Ultradisc」と「Ultradisc II」がありますが、本作はより初期に制作された「Ultradisc」なのです。そのサウンドは、タッチも繊細なピアノと生声のように自然なヴォーカルがじんわりと胸に染みる。そのナチュラル感は1曲目「Tiny Dancer」から明らか。イントで美しいピアノの調べが踊りますが、現行のリマスターCDの場合、その一打一打が強烈すぎる。立体感を演出したかったエンジニアの意図は分かるものの、立ち上がりの打音ピークばかりが強く押し出され、一発一発が突きつけられるように鋭い。確かにピアノは擦弦では打弦楽器ではありますが、ここまで強調されるとほとんど打楽器です。現行リマスターCDはすべてを解体した上で組み直したような立体感がありますが、それがわざとらしくゴツゴツとしているのです。それに対し、本作は非常にナチュラル。ピークだけでなくピアノの本体が振動するヴァイヴまで鮮明ですし、さらにエルトンの歌声とも調和している。ピアノとヴォーカルが同時なのか別トラックなのかは分かりませんが、機微の移ろいまでシンクロし、楽曲本来の流れを感じさせる。もちろん、これは音が塊になっているという意味ではなく、現行リマスター感とは異なる立体感が宿っている。その要はディテールの細やかさ。1音1音の微細部がしっかりと残っている事で楽器そのものの存在感が伝わり、それが重なることで重層感が生まれる。作られた立体感ではなく「演奏者が実在する立体空間」として感じられるのです。もちろん、そんなリアリティやナチュラルな鳴りはバンド・サウンドやストリングスからも感じられる。現行リマスターCDはドラマティックな展開を殊更に強調しており、リズムが入ってくる際にドカン!と爆発するようであり、ストリングスも津波の如く押し寄せる。これまで誰も聴いた事もないようなダイナミックな『マッドマン』を見せつけたい……そんなマスタリング・エンジニアの気持ちは痛いほど分かりますが、それは本来の『マッドマン』ではない。演奏者1人ひとりが紡ぎだし、ガス・ダッジョンが組み上げた音世界を教えてくれるのは、間違いなく本作の方なのです。“モービル・フィディリティ”によるCDだからこそ現代まで保持し得た大名盤のマスター・サウンド。今になって現物を手に入れようと思っても、元々が少数限定生産なために困難。その美麗サウンドを1人でも多くの方に触れていただくためのリリース。 Taken from the original US Mobile Fidelity Sound Lab CD(UDCD 516) from Mobile Fidelity Sound Lab "Original Master Recording" Collection 1. Tiny Dancer 2. Levon 3. Razor Face 4. Madman Across The Water 5. Indian Sunset 6. Holiday Inn 7. Rotten Peaches 8. All The Nasties 9. Goodbye





























