ボブ・ディランのキャリアにとって大きな分岐点となったニューポート・フォーク・フェスティバル1963年の出演。名盤「FREEWHEELIN’ BOB DYLAN」や不朽の名作「Blowin’ In The Wind」のリリースで一気に脚光を浴びたタイミングからのフェス出演は完璧と言え、実際ここからフォーク時代ディランの快進撃が始まるのでした。二年後にはバンドを従えてフォーク・フェスティバルを一変させてしまう彼もこの時点では今までにない大観衆を前に歌を披露することになり、一聴して解るほど気負った雰囲気でステージに上がっているのが実に微笑ましい。そんな彼のニューポート初出演はフェスのコンピレーション、さらに近年ではディランの出演シーンをまとめたDVD「THE OTHER SIDE OF THE MIRROR. LIVE AT THE NEWPORT FOLK FESTIVAL 1963-1965」など、様々なフォーマットに分かれてリリースされており、特に前者のコンピで聞けた「Playboys And Playgirls」など、今となっては入手困難となってしまった楽曲すらある。ディランがスターダムを掴む決定的なステージの記録がオフィシャルながらそうした扱いのままとなってしまっているのは何とも残念。おまけに今なお未発掘なテイクも多く存在しており、ディラン歴代のニューポート出演の中ではもっとも全容が掴みにくい年でもあったのです。こうして散り散りにリリースされてしまっているディランの63年出演分から、現時点で手に入る音源をマニアがすべてまとめ上げたのが本ギフト。それでも40分足らずという収録内容ですが、ここで聞かれる初々しくて懸命なディランの演奏ぶり、これはニューポート初出演でしか味わえない尊さ。しかもこの時点でのディランを象徴するようなレパートリーがズラリと並んでいる。中でも「Blowin’ In The Wind」は彼一人による弾き語りではなく、ジョーン・バエズにピート・シーガー、そしてPPMといった当時のフォーク・スターを従えての大合唱フィナーレとして演奏されたもの。この場面だけでも彼がいかに注目を浴びていたのかを如実に物語っていると言えるでしょう。さらにフォーク全盛の象徴とも言えた「We Shall Overcome」(マニアにはZEP928で歌われたあの曲と言った方が通じやすいか?)にディランも混じって大合唱という、当時のフォーク・ミュージックを象徴するような場面がまた貴重。そして最後に収録されているバエズとの「With God On Our Side」は彼女のステージにおいて二人でデュエットしたテイクなのですが、先に挙げたDVDにおいて元々が不完全かつ二つに分断されて収録されていたものを一つにまとめたという涙ぐましいもの。何しろ歴史的なステージ故、これからもさらなる発掘の待たれる出演ですが、すべて完璧なサウンドボード録音の完璧な音質で楽しめるフォーク時代のサンプラーとして最高に楽しめる充実のCDにて、脚光を浴びたばかりのキラキラ・ディラン(笑)のあまりに初々しいステージをじっくりと味わってください。Freebody Park & Newport Casino, Newport, Rhode Island, USA 26th-28th July 1963 STEREO SBD (39:18) Freebody Park & Newport Casino, Newport, Rhode Island, USA July 1963 26th July Evening Stage 1. Talkin’ World War III Blue 2. Only A Pawn In Their Game 26th July Evening finale 3. Blowin' In The Wind 4. We Shall Overcome 27th July Ballads Workshop 5. Introduction by Joan Baez 6. North Country Blues 7. With God On Our Side (with Joan Baez) 28th July During Joan Baez' set 8. Who Killed Davey Moore? 9. Playboys And Playgirls (with Pete Seeger) 10. With God On Our Side (with Joan Baez) (excepts) STEREO SOUNDBOARD RECORDING