ボブ・ディランとトム・ペティによる1986年のアメリカ・ツアーはいくつかのPAアウトによるサウンドボードが流出していたのですが、その手の音源の例に漏れず不完全な状態で広まったものも少なくありません。しかしZEP70年代のサウンドボードと違ってディランの場合は基本ワンショーがフルに録音されており、一連の86年サウンドボードの中において不完全な形で出回っている音源すらフルに録音されていることが確定していたのです。それを裏付けてくれた世界中のマニアにとって衝撃のリリースとなったのが「BONNER SPRINGS 1986 SOUNDBOARD」でした。そのサウンドボードは長いことライブの後半部分しか広まっておらず、そのせいでこの日のスペシャル・オープニングだった「Kansas City」も聞けなかった。ところが同タイトルは肝心のオープニングもしっかりサウンドボードで捉えてみせたということでマニアをアッと言わせることになったのです。また音質の素晴らしさも大きな魅力となっており、ディラン80年代のPAサウンドボードがいかに聞きやすい状態であるかを知らしめる意味でも意義のあるリリースになったと言えるでしょう。そんな衝撃のリリースも記憶に新しい中、7月24日ボナー・スプリングスの全長版を提供してくれた海外コレクターが再び提供してくれたのは26日のレッドロックス。ボナー・スプリングスの次のショーであったと同時に、これもまた極めて不完全な状態のサウンドボードしか出回っていなかった日でもある。この日がまたライブ終盤だけを収録した状態でしか出回っておらず、過去には別の日の86年サウンドボードを収録した「THERE IS A PLACE OF BROKEN DREAMS」にたった二曲だけオマケとして収められていただけだったことも音源の状態を物語っています。それだけではありません、過去にトレーダー間に出回っていたバージョンは不完全なだけでなくモノラルにダウングレードした状態で広まっており、そのせいでのこの日のライブ後半におけるディランの熱演ぶりも伝わらないというありさま。そんな不遇の扱いを受けてきたレッドロックス初日のPAサウンドボードですが、今回も「BONNER SPRINGS 1986 SOUNDBOARD」のコレクターが再びやってくれました。そう、遂に全長版の発掘と相成ったのです。それだけではありません、ボナー・スプリングスのサウンドボードはいくつかの欠損がみられましたが、次のライブということでエンジニアも慣れたのか、今回は録音漏れがなく(笑)何と「全長版」どころか「完全収録」という快挙。おまけに従来出回っていたバージョンとはまるで比較にならない超クリアーなステレオ・サウンド。ボナー・スプリングスで既に体感されたかと思われますが、ディランのエイティーズPAサウンドボードはとにかくクリアーな音質でドラムを中心としたステレオ感もしっかりある。さすがにマルチトラックのような緻密なステレオとは事情が違いますが、それでもこのクリアーさは実に素晴らしい。さらにはディラン・パート、ペティのパートそれぞの収録漏れがない見事なショー完全収録とくれば、もうマニアでなくとも自信を持って推せるクオリティ。ボナー・スプリングスが「Kansas City」から幕を開ける余裕を見せつけたショーであるとすれば、この日はディランの歌が実に力強い。この日は「Like A Rolling Stone」があれだけ激しかったボナー・スプリングス以上にハイテンションで歌われただけでなく、続く「In The Garden」がまたキレッキレ。最初に申しましたように従来のバージョンからはそうした気迫が伝わって来なかっただけに、今回のスーパークリアーなステレオで聞けば、あまりの気迫に圧倒されるばかり。それどころか今回の完全版サウンドボードで聞いてみれば、既にライブ開始直後からディランがエンジン全開であったということを思い知らされます。この時期ならではのルーズなアレンジの「All Along The Watchtower」からして彼は絶好調。さらに「Seeing The Real You At Last」がまたボナー・スプリングスをはるかに凌ぐハイテンション。単に完全版サウンドボードというだけでなく、演奏内容の素晴らしさまでもが明らかとなったのだからさあ大変。そして今回はボーナスにハートブレイカーズやクイーンズ・オブ・リズムらと85年に行われたスタジオ・リハーサルから「I Shall Be Released」を収録。もっともこのリハ自体は初登場ではなく、ラトルスネイクの「THE 1985 REHEARSAL TAPE」にてリリース済みかつDisc-1の冒頭に収められていた場面。ところが、そこでは2分半の収録だったのに対し、ここでは10分にも渡って収録されている。確かに2分半を過ぎるとディランは歌わなくなり、コーラス隊クイーンズ・オブ・リズムが延々と練習する風景が続いている。そのせいでラトルスネイク盤はカットしてしまったのでしょう。だがしかし。彼が歌わなくなった後もストラトを弾きながらずっとコーラス隊を指揮していたのです。ディランという人は自分が歌っている周りでバンドに好きに合わせさせるタイプのリハを好み、また関わったミュージシャンからも同様の証言が出ています。それだけに彼がここまで熱心にバックコーラスのアレンジや練習に取り組んでいる場面が捉えられていたとは衝撃の事実。その重要な場面がラトルスネイク盤ではバッサリとカットされていた訳で、今回こうしてボーナスにまで極めてレアなロングバージョンを提供してくれたとは。本編レッドロックス、ボーナス共に大充実かつ音質最高の衝撃86年サウンドボード第二弾!Red Rocks Amphitheatre, Morrison, Colorado, USA 26th July 1986 STEREO SBD(from Original Masters)世界初登場・超高音質サウンドボード・完全収録盤 Disc 1 (53:57) 1. Intro 2. Shake A Hand 3. All Along The Watchtower 4. Clean Cut Kid 5. I'll Remember You 6. Shot Of Love 7. We Had It All 8. Masters Of War Tom Petty & The Heartbreakers: 9. Straight Into Darkness 10. Think About Me 11. The Waiting 12. Breakdown Disc 2 (68:39) 1. To Ramona 2. One Too Many Mornings 3. A Hard Rain's A-Gonna Fall 4. I Forgot More Than You'll Ever Know 5. Band Of The Hand 6. When The Night Comes Falling From The Sky 7. Lonesome Town 8. Ballad Of A Thin Man Tom Petty & The Heartbreakers: 9. Listen To Her Heart 10. Spike 11. Tonight Might Be My Night 12. Refugee Disc 3 (69:06) 1. Rainy Day Women # 12 & 35 2. Seeing The Real You At Last 3. Across The Borderline 4. I And I 5. Band Introductions 6. Like A Rolling Stone 7. In The Garden encore 8. Blowin' In The Wind 9. Uranium Rock 10. Knockin' On Heaven's Door Bonus Track 11. I Shall Be Released (Studio Rehearsals) こちらも世界完全初登場サウンドボード 12分(既発は2分半)。(完璧な)STEREO SOUNDBOARD RECORDING Bob Dylan - vocal, guitars, harmonica Tom Petty & The Heartbreakers: Tom Petty - vocal, guitar Mike Campbell - guitar Benmont Tench - keyboards Howie Epstein - bass Stan Lynch - drums The Queens Of Rhythm: Carolyn Dennis - backing vocals Queen Esther Marrow - backing vocals Madelyn Quebec - backing vocals Louise Bethune - backing vocals