複雑なYES史でも紆余曲折を極めた8人YES時代。その唯一作『結晶』の最高峰デモ・アルバムが登場です。『結晶』のデモ音源は古くから知られてきましたが、本作はリマスター復刻でもありません。海外のコアマニアが最近になって公表したもので、長年に渡って収集してきた最長・最良トラックで編纂したもの。曲目は既発ブートレッグにも酷似しておりますが、クオリティはまったく異なる。1トラック毎にアップグレード幅が異なるので一口には語れませんが、どの曲も聴いたことのない極上クオリティ。正規の公式アルバムと並べて聴いても遜色のない一大決定盤なのです。そんな本作は大きく4つのセクションに分けられる。それぞれご紹介していきましょう。【DISC 1/Track 1-10:公式UNIONプロモ・バージョン(10曲)】まず登場するのは、1991年2月28日リリースされた『結晶』のプロモ盤から10トラック。もちろん、正規版とはバージョンが異なるものばかりで、デモというよりは別ミックス・バージョンとでも言える完成度の高いもの。各曲を簡単に整理してみますと……「I Would Have Waited Forever」:ロング・バージョン。「Shock To the System」ショート・バージョン。「Without Hope You Cannot Start the Day」:イントロがピアノではなくギターやベース、クリスのヴォーカルがフィーチュアされ、終盤のギターソロやマルチラウンドのヴォーカルも実験的なバージョン。「Lift Me Up」:トレヴァー・ラビンが歌う別バージョン。「Dangerous」:リズムブレイクがフィーチュアされたクラブ・バージョン。「Ankor Wat」:インスト・バージョン。「Silent Talking」:イントロのヴォーカルがなく、終盤にヘヴィなパーカッションのクロージング・セクションが追加されたバージョン。「The More We Live - Let Go」:ヴォーカル・ハーモニーとギターがより豊かなバージョン。「Holding On」:イントロにヴォーカルがなく、曲構成も変わっているバージョン。一部のヴォーカル・テイクも異なっています。「Take the Water to the Mountain」:正規版とは別コーラスやギターソロが追加されたバージョンです。【DISC 1/Track 11-14:他の別バージョン集(4テイク)】続く4トラックも完成度の高い別バージョン。出自は明らかにされていませんが、こちらも正規テイクと遜色ない完成度とサウンドのテイクです。「Mountain Exit」:「Take the Water to the Mountain」のエンディング・パート。「Dangerous #1」:上記とは異なるクラブ・バージョン。「Dangerous #2」:ナチュラル・バージョン。「Give and Take」:ボーナス曲の別バージョン。ヴォーカルやパーカッションが小さく、バッキング・ヴォーカルもないラフミックス風テイクです DISC 2/Track 1-11:UNIONデモ(11テイク)】代わってのディスク2は、制作過程となるデモ集。ディスク1は正規トラックとの違いが面白い別バージョンでしたが、こちらは未発表曲や曲の成長過程を楽しむ初期バージョン音源です。もちろん、荒っぽいテイクではありますが、いずれも過去最高峰サウンドで楽しめます。このセクションも細かく見るとABWH側と、9015YES側の2つに分けられる。まず、冒頭の6テイクはABWHによるデモ。アルバム未収録の「She Walks Away(3テイク)」「Shot in the Dark(2テイク)」デモに加え、「Without Hope You Cannot Start the Day」の初期バージョン「It Must Be Love」のデモを収録。やはり「She Walks Away」「Shot in the Dark」の歌入りテイクが最高です。その後の2曲(Track 7-8)もABWH側の音源で、スコット・ヴァン・ゼンによる仮ミックス「Without Hope You Cannot Start the Day」「Dangerous」。スコットはKISSの『REVENGE』『CARNIVAL OF SOULS』にも作曲家として参加しているセッション・ギタリストです。そして続く3曲(Track 9-11)は、90125YES側のデモ。ラビンが歌う「Lift Me Up」、クリス&ビリー・シャーウッドが歌う「The More We Live - Let Go」に加え、クリスによる未発表曲「Say Goodbye」を収録しています。サウンド面ではディスク1には及びませんが、アレンジはかなり練られており、特に「Say Goodbye」は未発表に終わったのが惜しい名曲です。【DISC 2/Track 12-14:その他】最後のセクションはボーナス・トラック的なもので、1976年から1994年の雑多なレア・テイク。最初に登場するのは本作唯一の90年代録音となる「Distant Thunder」。1986年にジョン・アンダーソンとヴァンゲリスによって書かれた曲で、後の「Children of the Light」の原曲。ABWHでもデモ録音されましたが、本作は1994年8月5日収録のラジオ番組“TOMMY VANCE SHOW”で演奏した弾き語りバージョンを収録しています。続くは『トーマト』用のアウトテイク「Some Are Born」。ジョンのソロ作『七つの詩』でも再録された曲のオリジナル・バージョンです。最後の2テイクは1976年に発表されたエディ・ジョブソンの初ソロシングル『Yesterday Boulevard』を復刻したものです。YES史でも異彩の極みであった『結晶』。その舞台裏に迫る史上最高峰クオリティのデモ・アルバムです。現在も再び“2つのYES時代”となっていますが、ここまでの豪華プロジェクトへ昇華するのはちょっと考えづらい。それほど特別だった時代を極上サウンドで味わえる2枚組。The Most Complete, Best Sounding Union Demos Collection STEREO SBD(UPGRADE) Disc 1 (68:23) 1. I Would Have Waited Forever 2. Shock To the System 3. Without Hope You Cannot Start the Day 4. Lift Me Up 5. Dangerous 6. Ankor Wat 7. Silent Talking 8. The More We Live - Let Go 9. Holding On 10. Take the Water to the Mountain 11. Mountain Exit 12. Dangerous #1 13. Dangerous #2 14. Give and Take Disc 2 (71:50) 1. She Walks Away #1(instrumental) 2. She Walks Away #2 3. It Must Be Love 4. Shot in the Dark (early demo) 5. Shot in the Dark 6. She Walk Away (instrumental #2) 7. Without Hope You Cannot Start the Day 8. Dangerous 9. Lift Me Up 10. The More We Live - Let Go 11. Say Goodbye 12. Distant Thunder (Jon on Tommy Vance show 5th August 1994) 13. Some Are Born (from Tormato Sessions 1978) 14. Yesterday Boulevard (Eddie Jobson solo single) 15. On a Still Night (Eddie Jobson solo single) STEREO SOUNDBOARD RECORDING