昨年ボブ・ディランがコロナ禍でツアーを再開してから早いもので一年が経とうとしていますが、これまでアメリカだけを回っていた彼が遂にヨーロッパにも足をのばすことが実現。それはまるでツアー再開から一周年を祝うかのよう。既に音源だけでなくステージ上の写真も多く出回っていますが、遂に80を超えた高齢アーティストとは思えないほど精悍な姿が世界中のマニアを喜ばせている。そんな歩みを止めることを知らないディランが再開させたヨーロッパ・ツアーは9月25日のオスロからスタートしていますが、今回は四公演めとなる30日のコペンハーゲンをリリース。ディランのヨーロッパ・ツアーといえば基本クオリティの高いオーディエンス録音が生み出されるのが古くからマニア間の碇石とされていて、今回のコペンハーゲンも実際に素晴らしい音質。非常にオンな音像はもちろん、深みのある質感も絶品。これほどのクオリティなら余裕でプレス盤リリースすら可能なレベルだったのですが、ライブ開始直後、さらにはいくつかの曲で近くの観客の喋り声が入ってしまったことから無念のリリースとなった次第です。とはいえ、それを差し引いても実に素晴らしいクオリティであったことから眠らせておくにはあまりにもったいない。それにディラン最新ツアーからの極上オーディエンスとなればリリースしない訳にはいかないでしょう。セットリストの基本線は今年のパターンを踏襲したものなのですが、注目すべきは夏のアメリカ・ツアー終盤においてレパートリー復活を果たした「That Old Magic」が今回のツアーにおいて遂にレギュラーの座を獲得したこと。スタンダード・カバー集「FALLEN ANGELS」がリリースされてからしばらくは好んで演奏されていた曲ですが、2018年にセット落ちして久しいレパートリーでした。それが先のアメリカ終盤において突如復活。そんな2022年版もアルバム・バージョンや従来のライブ・アレンジを踏襲したものですが、今のディランにはこの感じがむしろ歌いやすいのでしょう。軽やかな演奏をバックにいきいきと歌い上げてくれます。おかげで今回のツアーからレギュラーの座を獲得したのだと。今年のステージは元々が軽快なアレンジと歌い込み系レパートリーが入り混じった構成でしたが、そんな中で毎晩演奏されているディラン・クラシック「To Be Alone With You」などは今年のツアー開始当初よりも軽快なアレンジへと進化しており、そうした変化が生まれるのもディランのライブならでは。昨年のツアー再開後生み出されてきたリリースを聞いていると、どれ一つとしてディランが不調な日がないことは彼の年齢を考えると信じられないばかりですが、今回もまた彼は絶好調。オープニングから思う存分ピアノを弾いていますし、何と言ってもライブ全体を通しての力強い歌声には驚きを禁じえません。文字通り前進を続けるディランがコロナ禍で遂に実現させた最新ヨーロッパ・ツアーから早くも極上オーディエンス・アルバムが登場です!Royal Arena, Copenhagen, Denmark 30th September 2022 TRULY PERFECT/ULTIMATE SOUND Disc 1(56:09) 1. Intro 2. Watching the River Flow 3. Most Likely You Go Your Way and I'll Go Mine 4. I Contain Multitudes 5. False Prophet 6. When I Paint My Masterpiece 7. Black Rider 8. My Own Version of You 9. I'll Be Your Baby Tonight 10. Crossing the Rubicon 11. To Be Alone With You Disc 2(48:28) 1. Key West (Philosopher Pirate) 2. Gotta Serve Somebody 3. I've Made Up My Mind to Give Myself to You 4. That Old Black Magic 5. Mother of Muses 6. Goodbye Jimmy Reed 7. Every Grain of Sand Bob Dylan - vocal, piano, harmonica Tony Garnier - bass guitar Charley Drayton - drums Bob Britt - guitar Doug Lancio - guitar Donnie Herron - violin, mandolin, pedal steel, lap steel