1974年9月14日のウェンブリー・スタジアムでCSNYやジョニ・ミッチェルより出番が早かったザ・バンド。既に彼らのステージからBBCはビデオカメラを回しており、CSNYと同じようにプロショット映像も流出しています。しかしビデオの音声はサウンドボードながらダイレクトすぎるきらいがあり、おまけに臨場感も希薄。さらにイベント序盤における出番だったことと相まってサウンドのバランスが整っていないように映る場面も多々ありました。その点スタジアム当日のバンドの演奏と会場の盛り上がりをずっとリアルに伝えてくれるのが同日のオーディエンス録音。もちろん以前からトレーダー間に出回っていましたが、今回同時リリースのジョニと同じく、それとは全く違う別次元の音質を誇るマスター・カセットが提供されたのです。最初に触れたビデオの音声の件でも解るようにイベント前半の出演であったザ・バンドはCSNYやジョニと比べて会場の出音が弱めで、従来出回っていた音源は音像が遠目かつ録音自体のクリアーさに欠けていたという印象。ところが今回のオーディエンス録音は遥かに素晴らしい音質。従来の音源よりも音像が近くてCSNYやジョニと同じくらい聞きやすい。そこに加えて鮮度がまた素晴らしく、ヘッドフォンで聞けば74年9月14日の空気感すら伝わってくる。これほど聞きやすいオーディエンス録音が今までトレーダー間に出回っていなかったとは驚きでしょう。それにオーディエンスならではの臨場感という点でも申し分なく、例のビデオ映像の音声とは比べ物にならないほど当日の盛り上がりが感じられる。おまけにサポート・アクトということで序盤から代表曲を連発した分かりやすい構成を前に、ウェンブリーの観客も大いに盛り上がっています。 元々ザ・バンドはCSNY74年ツアーにおいて何度も彼らのサポート・アクトをこなしていたのですが、どの日でもガース・ハドソンのサックスをフィーチャーしたR&Bカバー「Hard Times (The Slop)」から始まり、そこから「Just Another Whistle Stop」へメドレーするというこの時期だけのオープニング・パターンを導入していました。これが午後のスタジアム・ショーの幕開けにぴったりな雰囲気を漂わせています。しかもこの日はメンバーの中でもリック・ダンコのテンションが非常に高く、映像を見ても解るように「Stage Fright」辺りでは非常に激しく歌っている様子が捉えられていました。さらにザ・バンドの代表曲である「The Weight」をライブの序盤でサラッと披露してしまう攻めの構成も新鮮に映る。実際ここで演奏される同曲はテンポも速めでいつになくアグレッシブな印象。この年のザ・バンドと言えば年頭に行われたボブ・ディランとのツアーの模様が「偉大なる復活」でリリースされていますが、その時とはまるで雰囲気が違う。自分たちも脚光を浴びたディランとのツアーの時と違い、夏のCSNYツアーは前座という位置。それが功を奏してザ・バンドらしいのびのびとした演奏が全編を通して輝きを放っているのです。また当時の彼らの最新アルバムはカバー集「MOONDOG MATINEE」でしたので、この日も同アルバムから「Mystery Train」がリヴォン・ヘルムとリチャード・マニュエルのツイン・ドラムにて披露されている(これがまた実にスタジアム映えする)のですが、そこからガース・ハドソンによる「Chest Fever」への導入オルガン・インプロゼーション「Genetic Method」へと移行するのが何とも強引なアレンジ。このユニークな展開はCSNYツアーの前座ステージの中においても数日しか確認されていない貴重なパターンでした。そしてウェンブリーにおける彼らのステージはCD一枚に収まるサイズのセットリストであったことから、カセットのカットポイントが「Smoke Signal」のエンディングだけという優秀な録音状態。そこはもちろん従来のオーディエンス録音を用いて補填しているですが、この個所を聞いてもらえば今回の音源がいかに秀でた音質であるかを実感してもらえることでしょう。それほど音質の差が開いているという。さらにディランとのツアー一択だった74年のザ・バンドのライブ音源から、これほどまで良好なオーディエンス録音が発掘されたという事実もまたポイントが高く、世界中のマニアを驚かせることかと。そもそもCSNYツアーの前座ステージを捉えた音源でこれほどまで音質の良好なオーディエンスが存在しなかったのです。(リマスター・メモ)★こちらもコレクター提供の、Raw Masterで鮮度抜群のステレオ・オーディエンス。★Raw Masterで鮮度ヨシ。多少マイク負けのような歪みありこれは仕方なし。また中域(4-6khzあたり)がキツめのパートもありますが、曲間の静寂部での帯域分布から、ここを無理には下げることは出来ないため、元々こんな感じの質感なのだろうと判断。★欠落1箇所を当日の別ソースAud音源で補填Live at Wembley Stadium, London, UK 14th September 1974 TRULY PERFECT SOUND(from Original Masters)★完全初登場音源 CD (75:45) 01. Introduction 02. Hard Times (The Slop) 03. Just Another Whistle Stop 04. Stage Fright 05. The Weight 06. The Shape I'm In 07. Loving You Is Sweeter Than Ever 08. The Night They Drove Old Dixie Down 09. Across The Great Divide 10. Endless Highway 11. Smoke Signal ★5:45-6:01 別のAudソースにて補填 12. I Shall Be Released 13. The W.S. Walcott Medicine Show 14. Mystery Train 15. The Genetic Method / Chest Fever 16. Up On Cripple Creek Levon Helm - drums, vocals, mandolin, guitar, percussion Robbie Robertson - guitars, vocals Garth Hudson - organ, keyboards, accordion, saxophones Rick Danko - bass, vocals, guitar, fiddle Richard Manuel - piano, drums, organ, vocals