S&Gの通算三枚目のアルバムである「PARSLEY, SAGE, ROSEMARY & THYME」はステレオ、モノラル問わずビンテージLPではクリーンな再生のハードルが高い。というのもアルバムの冒頭を飾った稀代の名曲「Scarborough Fair」が静かに始まる曲ゆえ、ビンテージな60年代のオリジナルLPではどうしたってバチバチというノイズが避けられない。それどころか本アルバムのA面は「早く家に帰りたい」まで静寂なイントロで始まる曲ばかりという、実にコンディション泣かせな構成となっており、これらの曲をビンテージLPにてクリーンに再生するというのは至難の業。その点Prof Stonedが果敢に挑んでくれたオリジナル・モノLPからのトランスファーは先の「Scarborough Fair」を聞いただけで「勝負あり」。一体、どうしたらこんなにクリアーに60年代のビンテージLPから収録できるのでしょうか。あの静かなイントロの最中でもLPにありがちなノイズがまったくみられない。当然「早く家に帰りたい」のイントロまで澄んだ音で安心して聞き込める。それでいてノイズを無理に抑えたような痕跡が一切ないのだから驚くしかありません。この「早く家に帰りたい」がステレオとは大きくミックスが異なることもモノ・バージョンの大きな魅力。ここではステレオとは比べ物にならないほどサイモンのボーカルが近くて生々しい。こちらの方が好きだというマニアが多いのでは。続く「The Big Bright Green Pleasure Machine」もステレオよりソリッドで迫力満点な印象。アルバムはB面を迎えても繊細な録音の曲が多く、その最たる例と言えるのが「The Dangling Conversation」。そのストリングスの調べや全体を通しての繊細な演奏をモノラルのビンテージLPでクリーンに聞き通すのは不可能と言え、それがこれほどまでに澄み切った状態で楽しめるとは。その一方でアナログチックかつモノラルのウォーミーな音も自然に再現されている。次の「Flowers Never Bend With The Rainfall」はステレオよりも二人のボーカルがドライでしかも前面に押し出されている様は目の前で歌っているかのよう。おまけにこの曲で目立つタンバリンの音が歪まず聞けるコンディションの良さも驚き。そのタンバリンが次の「A Simple Desultory Philippic (or How I Was Robert McNamara'd Into Submission)」ではステレオ以上に激しく打ち鳴らされるミックスはインパクトが大。そして「For Emily, Whenever I May Find Her」のまたしても静かな演奏、タンバリンが他の曲以上にシャンシャン鳴りまくる「A Poem On The Underground Wall」など、S&Gのアルバムの中でも飛び抜けてコンディション泣かせな楽曲揃い(笑)あるいはクリーンに再生するのが難しすぎるアルバムのモノをここまで完璧にトランスファーしてみせたというProf Stonedの面目躍如とも言えましょう。何と言ってもオリジナルのUSモノLPを手軽に手に入れること自体が難しくなってしまったLP復権の2022年。あの美しい「Scarborough Fair」から始まる繊細なモノ感がスクラッチノイズ一切なしで聞きこめる驚きのCDバージョン。SIMON & GARFUNKEL - PARSLEY, SAGE, ROSEMARY AND THYME US MONO(1CD) (28:42) 1. Scarborough Fair / Canticle 2. Patterns 3. Cloudy 4. Homeward Bound 5. The Big Bright Green Pleasure Machine 6. The 59th Street Bridge Song (Feelin' Groovy) 7. The Dangling Conversation 8. Flowers Never Bend with the Rainfall 9. A Simple Desultory Philippic (Or How I Was Robert McNamara'd into Submission) 10. For Emily, Whenever I May Find Her 11. A Poem on the Underground Wall 12. 7 O'Clock News / Silent Night