あまりにも短命だった1989年のジェファーソン・エアプレイン再結成。その驚くほど高品位なライブ・パフォーマンスを明かしてくれたのが名テーパー、マイク・ミラードによる極上オーディエンス・アルバム「GREEK THEATRE 1989」でした。その模様が当時は全くと言っていいほど報じられず、おまけに予定されていた日本公演がポシャってしまったせいで、今となっては完全に見過ごされた再結成ステージを衝撃の高音質で捉えてくれていたもの。そんなミラードは9月20日グリーク・シアターの前にも参戦しており、それが今回公開された16日のコスタ・メサ。同年にミラードがもっとも通ったライブ会場の一つ。当時は全米で相当に話題となった再結成ツアーですので、彼としても複数回を見る気まんまんだったのでしょう。「GREEK THEATRE 1989」は音像が近い骨太な音質でしたが、こちらは奥行きを感じさせる聞き心地と実にクリアーな質感が魅力。よって極上オーディエンスでも前回とはまるで違う録音状態なのです。おまけに盛り上がりが相当にアツく、それでいて耳障りにならないように捉えてくれたというミラードの真骨頂。今回も非常に楽しめる音質だと断言いたします。何より驚かされるのは再結成エアプレイン絶品のライブ・パフォーマンス。80年代のアメリカを代表するセッション・ドラマーの一人だったケニー・アロノフやハードロック・ギタリストのランディ・ジャクソンがサポートとして参加することでモダンさを醸し出しつつ、それでいてエアプレインならではの持ち味を壊さない見事な89年型サウンドが完成していたのです。そもそも80年代を通してエアプレイン各メンバーそれぞれが現役ミュージシャンとして十分に成功できていたことも大きく、とにかく完成度の高いライブ・サウンドが圧巻。オープニングから「She Has Funny Cars」に「Somebody To Love」と言ったクラシックを余裕でかましつつ、一方で素晴らしい再結成アルバムだった「JEFFERSON AIRPLANE」収録曲もしっかりステージ映えする現役バンド感。例えば「True Love」などは最高の新曲でした。ちなみにこの日のミラードはグリーク・シアターの時と違いライブ中盤のコウコネン&キャサディのホットツナ・コーナーを録音していないのですが、それがかえって89年エアプレイン・ショーを通しで聞ける状態となっているのも吉。驚いたことにグリーク・シアターの時と違い、この日はライブ終盤で「White Rabbit」を演奏していないのですが、そんなことが気にならないくらいハイテンションな演奏ぶり、中でも「Volunteers」以降のライブ終盤は凄まじいの一言。もし予定通り来日が実現していれば、60年代後半から70年代初頭にかけて日本で絶大な人気を誇っていたエアプレインの歴史に新たな伝説が刻まれたに違いありません。60年代バンドの再結成にありがちな懐メロ大会に陥らず、本当に短命に終わったことが残念でならない。だからこそ光り輝く伝説の再結成ツアーからミラードがまた素晴らしい録音を残してくれました。これが89年のエアプレインだ!Pacific Amphitheatre, Costa Mesa, CA, USA 16th September 1989 TRULY PERFECT SOUND Disc 1 (64:33) 1. She Has Funny Cars 2. Somebody To Love 3. Plastic Fantastic Lover 4. Won't You Try / Saturday Afternoon 5. Today 6. Good Shepherd 7. Lather 8. Solidarity 9. Wooden Ships 10. America 11. Freedom 12. Panda Disc 2 (53:34) 1. Miracles 2. The Wheel 3. Ice Age 4. Summer Of Love 5. True Love 6. Planes 7. Volunteers 8. It's No Secret 9. 3/5 Of A Mile In 10 Seconds 10. Crown Of Creation Grace Slick - vocals, keyboards Marty Balin - vocals, rhythm guitar Jorma Kaukonen - lead guitar, vocals Paul Kantner - rhythm guitar, vocals Jack Casady - bass Kenny Aronoff - drums