昨年リリースされた『SANTA MONICA 1990: MIKE MILLARD MASTER TAPES』はCSN&Y1990年の貴重な再結成ステージをマイク・ミラードが捉えてくれていた訳ですが、彼によるオーディエンス録音としては音像が遠めだった。もっとも、それはミラード録音としての範疇からであり、通常のレベルからすれば上位に属するものでもありました。これに関してはミラード自身も自覚しており、翌日のイベントでは同じ轍を踏むまいと奮起して好ポジを確保。その結果として見事に前日を上回る素晴らしい音質のオーディエンス録音が生み出されたのです。同じサンタモニカの会場とはいいつつも、前日はCSN&Yのドラマーであったダラス・テイラーの医療費を賄うべく行われたチャリティ・コンサートだったのに対して今回はカリフォルニアの環境保護団体を支援するイベントとして行われたもので、いかにも90年代初頭らしい風潮の中で実現したのだと察せられます。何しろ前日の汚名を挽回すべく敢行してくれた録音ですので、その音の近さは正にミラード・クオリティ。中でもライブ前半の締めくくりとしてニール・ヤングが披露した「Mother Earth (Natural Anthem)」における爆裂エレキ弾き語りではかき鳴らされるレスポールの音が生々しいほど。これくらいのクオリティであればプレスでリリースされてもおかしくないレベルですし、マニアでなくとも安心して楽しんでいただけることでしょう。とはいえ前日のライブ終盤で実現したダラス・テイラーとの再会コーナーという感動フィナーレはイベントが違うのでこの日はなし。よって『SANTA MONICA 1990: MIKE MILLARD MASTER TAPES』の価値も落ちていません。またイベント出演にもかかわらず二日連続ならばとセットリストを替えてくるのが彼ららしいところで、CSN三人のセットにおいてはグレアム・ナッシュが前日には歌われなかった自身のソロアルバムからの佳曲「Magical Child」を演奏するという攻めの姿勢。それ以上にCSNクラシックである「Guinnevere」がこの日は歌われているのが何と言っても魅力的。おまけに前日同様CSNセットでも「For What It's Worth」だけはニールが加わったCSNY状態で演奏されるのですが、そこで彼とスティーブン・スティルスのギターがしっかり聞き分けられる音の近さもミラード録音の面目躍如。そして前日の「Southern Cross」が省かれた代わりにCSNYセットでは永遠の名曲「Ohio」が登場というのがこの日の大きな目玉。当時、中国の天安門事件の記憶も生々しい時期であり、ここではニールが彼らに捧げる…としながら演奏を始める場面が極上ミラード・クオリティで捉えられたのはポイントが高すぎる。そもそも三回しか実現せず、しかもすべてがチャリティ・コンサートへの出演だったという1990年のCSNY再結成ステージはどれもが貴重なのですが、その中の一日が遂にミラードならではの極上音質で楽しめるようになりました。これぞ最高のオーディエンス・ドキュメントにしてCSNY1990年モードを捉えた超貴重録音です!Civic Auditorium, Santa Monica, CA, USA 1st April 1990 TRULY PERFECT SOUND Disc:1 (64:15) 1. Rockin' In The Free World 2. Eldorado 3. Someday 4. Mother Earth (Natural Anthem) 5. Wasted On The Way 6. Change Partners 7. Blackbird 8. The Lee Shore 9. To The Last Whale...A. Critical Mass B. Wind On The Water 10. Guinnevere 11. Magical Child 12. Almost Cut My Hair Disc:2 (42:29) 1. For What It's Worth 2. Suite: Judy Blue Eyes 3. Human Highway 4. Silver And Gold 5. Wooden Ships 6. Ohio 7. Teach Your Children