ローリング・サンダー・レビュー1975年の活動に関しては今やボックスセットでまとめられていますが、76年版のレビューはといえばオフィシャルのリリースから縁遠くなってしまった感が否めない。むしろリアタイでは『HARD RAIN』というライブアルバムとテレビ番組によって前年よりも恵まれた状況にあった時期ですが、今や立場は逆転。もっとも76年版レビューはオフィシャルのリリースが少なくともアイテム的には十分恵まれており、アナログの時代から定番の流出サウンドボードとして親しまれてきたのがニューオリンズのイブニング・ショウ。5月3日にニューオリンズのウェアハウスという会場でコンサートを開いたローリング・サンダー・レビューですが、アリーナ、時にはスタジアムすら辞さなかった76年ツアーの中にあって小さなコンサート・ホールを使ったこともあり、この日は一日二回のショウが行われています。アフタヌーン・ショウの方は未だに一切の音源が発掘されていない一方、イブニング・ショウに関しては1970年代末にPAアウトのサウンドボードが流出。LP『MEMPHIS BLUES』を皮切りとして様々なアイテムが生み出されましたが、中でもイエロードッグ系レーベルの出したCD『LIVE AT THE WAREHOUSE』辺りが本音源の収めたアイテムの代表格かと。もっとも『LIVE AT THE WAREHOUSE』とて「ピッチが低い」あるいは「ジェネ落ち感を隠蔽すべくイコライズが強め」といった問題を抱えており、本サウンドボードの決定版と呼ぶには程遠いものがあったのです。その点、より近年になってリリースされた海外製『FRIENDS & OTHER STRANGERS』がディラン以外のパートも含め、もっともベストな状態で本サウンドボードを収録と評価されていました。ところが最近になってファースト・ジェネレーションのカセット・コピーが登場。ベストとされた『FRIENDS & OTHER STRANGERS』をも上回る音質で76年サンダー・レビューの定番サウンドボードが楽しめるようになっており、そのCD化は必須でした。さすがに1st Genというだけのことはあり音質は素晴らしい。PAアウトということで臨場感が希薄かと思いきや、小さなコンサート・ホールでのライブであったことが功を奏し、この手のサウンドボードとしては思いのほか臨場感が伝わってくるのも本音源が単なるサウンドボード以上の魅力を感じさせたポイント。収録に際してディランのパートにおける「Isis」がカセットの掛け替えポイントに当たってしまい、演奏が後半に差しかかったところでカットとなってしまった点は惜しまれますが、それ以外は名盤ながらステージ完全収録からは程遠かった『HARD RAIN』ライブアルバムからは伝わらない76年版サンダー・レビューらしさが見事に捉えられ、なおかつ非常にクリアーな音質なサウンドボードとしての魅力が溢れている。今回のリリースに際して当然ピッチは正確ですし、もはや古の『LIVE AT THE WAREHOUSE』とは比べ物にならないほどのアッパー感もはっきり解るはず。これほどまでの定番サウンドボードのロージェネレーションなバージョンが以前から出回っていたというにもかかわらず、その刷新が今まで実現しなかったのは不思議でなりません。そんな待望のベスト・バージョンで聞くウェアハウスは『HARD RAIN』と違って実際のステージに沿って収録されているというアドバンテージがあまりに大きく、ディランの素晴らしい弾き語りからスタート。中でもディランが珍しく原曲のメロディそのまま素直に歌う「Love Minus Zero/No Limit」がさっそく名演。76年のディランの弾き語りパートはどうしたことか原曲のメロディに沿った歌い方をすることが多く、サウンドボードで聞くとより引き立ちます。そもそもライブアルバム『HARD RAIN』の荒々しい演奏ぶりとはまるで雰囲気が違っていて、ウェアハウスはもっとレイドバックしている。このルーズさがディランの当初目指した76年版サウンドだったのだと思われますが、この後レビューの早期終了決定や夫人との離婚が決定的なものとなるといった要素が合わさて、わずか三週間であれほどまで激しい演奏へとエスカレートするのです。この雰囲気の違いもサウンドボードかつ正確なピッチで収録されたことで実に分かりやすい。そして極めつけは未だにライブ演奏がこの日しか確認されていない「Rita May」。まず楽曲自体がシングルB面のみでリリースというレアな存在をステージで取り上げたというレアの二掛けと呼ぶべき貴重な瞬間でした。おまけに76年のルーズさがよく合っており、これ一回きりなのがもったいないほどステージ映えする演奏でもあったのです。そんな貴重な場面、さらにはロジャー・マッギンの「Eight Miles High」やジョーン・バエズの「Dancing In The Streets」(こちらはメンバーのソロ回しまで登場する演奏が圧巻)といったディラン以外のパートも含み、定番サウンドボードのベスト・バージョンがようやく登場!The Warehouse, New Orleans, Louisiana, USA 3rd May 1976 Evening Show SBD(UPGRADE) Disc 1 (76:28) 1. Intro 2. Mr.Tambourine Man 3. Love Minus Zero / No Limit 4. Vincent Van Gogh 5. Maggie's Farm 6. Mozambique 7. Isis 8. Eight Miles High (Roger McGuinn) 9. Jolly Roger (Roger McGuinn) 10. Lover Of The Bayou (Roger McGuinn) 11. Chestnut Mare (Roger McGuinn) 12. Do Right Woman, Do Right Man (Joan Baez) 13. (Ain't Gonna Let Nobody) Turn Me Around (Joan Baez) 14. Love Song To A Stranger, Part II (Joan Baez) 15. The Night They Drove Old Dixie Dow (Joan Baez) 16. Sweeter For Me (aka Red Telephone) (Joan Baez) 17. Dancing In The Streets (Joan Baez) Disc:2 (77:10) 1. Diamonds And Rust (Joan Baez) 2. Railroad Boy 3. I Pity The Poor Immigrant 4. Shelter From The Storm 5. Stuck Inside Of Mobile With The Memphis Blues Again 6. You're A Big Girl Now 7. Rita May 8. Lay Lady Lay 9. Silver Mantis (T-Bone Burnett) 10. Idiot Wind 11. Knockin' On Heaven's Door 12. Gotta Travel On Bob Dylan (guitar & vocal). Scarlet Rivera (violin) T-bone J. Henry Burnett (guitar & piano) Steven Soles (guitar) Mick Ronson (guitar) Bobby Neuwirth (guitar & vocal) Roger McGuinn (guitar & vocal) David Mansfield (steel guitar, mandolin, violin & dobro) Rob Stoner (bass) Howie Wyeth (drums) Gary Burke (percussion). Joan Baez (guitar and shared vocal). SOUNDBOARD RECORDING