早くも今年最大の発掘音源との誉れ高きZEP名盤のマスター・カセットの発掘が実現した『FOR BADGE HOLDERS ONLY: JON WIZARDO MASTER CASSETTES』。何しろマスターは存在しないのでは?とまで思われていたせいで、当時のLPから落としたアイテムが繰り返しリリースされ続けたほど。それが2023年になってまさかのマスター発掘はあまりに衝撃的すぎました。おかげで同タイトルは瞬殺、先日の再入荷ですらあっという間に売り切れてしまうという有様。それもこれもZEPマニアが長年聞き続けてきた名盤『FOR BADGE HOLDERS ONLY』のマスターだからこそ。そんな衝撃の発掘から明らかになったのは、ジョン・ウィザードがショーの始めから録音を開始したものの、あいにく「The Song Remains The Same」が始まったところでマイクがレコーダーから抜けてしまったという事実。そのせいで空白が生じてしまい、LPリリースの際には肝心のオープニング・ナンバーの収録を諦めなければならなかった。同じようにテープの面が終わってしまうタイミングに当たったことでエンディングまで録音できなかった「Achilles Last Stand」はフェイドアウトのごまかしがきいたことからLP『PART 2』に収録されたのですが、「The Song~」のトラブルではそれすら出来ない状態だったのが不運でした。そしてこの日のライブの記録に関してもう一つの不運は、あのマイク・ミラードですら完全収録しそびれてしまい、よりによって「Since I've Been Loving You」から録音が始まっていたのです。よって『エディ』と双璧を成す1977年LA連続公演の名演であったにもかかかわらず、今まで「高音質なThe Song Remains The Same」が存在しない不運が長年に渡って続いていたのがジレンマ。だからこそジョン・ウィザードのカセットに同曲が含まれていた意義は大きすぎた。『FOR BADGE HOLDERS ONLY: JON WIZARDO MASTER CASSETTES』で明らかになったように、その「The Song~」を始めとした彼のカセットに生じていたカットに関しては他のソースですべて補えるというのが不幸中の幸いでしょう。こうしてウィザードのカセット・マスターが発掘された以上、そこをレストアすれば過去最高の1977年6月23日アイテムがリリースできるのは明白。むしろ新時代に相応しいネクスト・レベルなアイテムとしてマニアが期待するのはそこかと。そこに名乗りを上げたのは「GRAF ZEPPELIN」。そもそも彼はLP起こしバージョンで過去最高の『FOR BADGE HOLDERS ONLY』を作り上げた張本人としてウィザード・マスターの補修に相応しい達人はいないでしょうし、マニアとしても異論はないはず。これで文字通りのコンプリートなバージョンが完成することが約束されたといっても過言ではありません。実際「GRAF ZEPPELIN」は存分に腕をふるってくれており、ZEPが演奏を始める前かいきなり驚かされます。何故ならモノラル音質でスタート。そう、彼はウィザード・マスターより「recorder 3」の方が早く録音が開始されていたことを見抜いており、演奏と関係ない部分ですら補填してみせた証がこの序盤のパートなのです。しかし何と言っても「The Song Remains The Same」における問題の個所。そこに「recorder 3」を実になめらかにパッチしてみせたのは「GRAF ZEPPELIN」の面目躍如。この部分だけでも満足間違いなしな仕上がりを約束しますが、もう一つの大きなカットである「Achilles Last Stand」の終盤は「recorder 2」ことミラード・マスターを1st gen.コピーからつなぐだけでなく、さらにその後の曲間パートに「recorder 4」まで持ち出して最長収録を実現するという念の入れよう。ところが、こうした綿密な編集はもちろん、ウィザード・マスター自体も入念にリマスター。「GRAF ZEPPELIN」自身の言葉をして「迫力マシマシ」とのことですが、その違いは「Sick Again」で聞き比べれば違いは歴然。それでいて押しつけがましくないナチュラルな仕上がりは見事としか言いようがなく、それでいて前回の『FOR BADGE HOLDERS ONLY: JON WIZARDO MASTER CASSETTES』がフラット・トランスファーとして、さらには音源本体の標本として価値がまるで落ちない結果にもなったのです そして音の良さだけでなく、マニアの間では『エディ』よりこっちの演奏の方が好きな人も少ないのでは?と言われるほどの名演でもある。やはり『エディ』で振り切れたボンゾを経験したことから、この日は他の三人がそんな彼とがっぷり四つに渡りあえていることが大きい。『エディ』に負けじとボンゾはオープニングから振り切れており、そのハイテンションぶりは極めて印象的なのですが、音がイイので他のメンバーが彼を受け止めている様子がしっかり伝わってくる。勢い余って「Kashmir」では演奏が迷走してしまうほどだったのですが、そこから立て直しを図るかの如く「Trampled Under Foot」は四人が一丸となって大爆発。これは掛け値なしに1977年バージョンのベスト・テイクではないでしょうか。ジミーがライブ中盤から後半にかけて存分に弾きまくっているのも、ボンゾと渡り合えている緊張感がから生み出されたように思えます。その証拠に「Achilles Last Stand」に「Stairway To Heaven」という終盤二曲はどちらもジミーとボンゾが主人公となった素晴らしい演奏。そしてフィナーレ「Rock And Roll」はこの日の締めくくりに相応しいボンゾの大爆発が。そうした中で「Achilles Last~」が今回はコンプリートに収録されているのも大きい。おまけに「GRAF ZEPPELIN」本領発揮のなめらかな仕上がりは絶品。衝撃のマスター発掘に続いて満を持してリリースされる1977年6月23日LAフォーラムの決定版。これこそ新世代『FOR BADGE HOLDERS ONLY』だ!リマスター・メモ 先頃騒然となったLPで馴染みのSrc1のテープソースをベースに、欠落部を補填し疑似ながら全曲完全収録ノンストップ盤を実現!メインのSrc1は位相、音量とEQ調整を施し当時のLP盤ぽく音圧を調整しつつ迫力はマシマシ 欠落部を別ソースで補填し全曲完全収録。補填ソースはSrc2のミラード1st Gen(ネットではない)を優先、ミラードで補い切れない数ヶ所はSrc3、Src4で適宜補填。それにしてもLP時代のSrc1に比べると、メインのSrc1テープは欠落が元々圧倒的に少ないのが驚き。よって、当然のことながら補填による音源切り替わりの違和感も最小限となっている。The Forum, Los Angeles, CA, USA 23rd June 1977 ULTIMATE SOUND(from Original Masters) Disc 1 (70:27) 1. Intro ★0:00-0:48 Src3で補填 2. The Song Remains The Same ★0:12-0:22 Src3で補填 3. Sick Again 4. Nobody's Fault But Mine 5. Over The Hills And Far Away 6. Since I've Been Loving You 7. No Quarter ★7:25-7:46 Src2で補填 Disc 2 (61:44) 1. MC 2. Ten Years Gone 3. The Battle Of Evermore ★5:31-5:54(演奏直後) Src2で補填 4. Going To California 5. Black Country Woman 6. Bron-Y-Aur Stomp 7. White Summer/Black Mountain Side 8. Kashmir 9. Trampled Under Foot ★6:55以降(演奏直後) Src2で補填 Disc 3 (65:35) 1. MC ★0:00-0:12 Src2で補填 2. Moby Dick 3. Guitar Solo 4. Achilles Last Stand ★8:30-9:12 Src2 / 9:12-9:28(曲間) Src4 / 9:28-9:40(曲間) Src2で補填 5. Stairway To Heaven ★11:53-12:42(曲間) Src4で補填 6. Whole Lotta Love 7. Rock And Roll