何故か殆ど音盤化されてこなかったピンク・フロイド1971年初頭の重要音源が、遂に遂に降臨!!!ピンク・フロイド1971年2月12日・英国コルチェスター。71年の公演がスタートして僅か4回目というこの極初期の公演は、まだ前年の表現スタイルが色濃く残りつつも夏以降の箱根やポンペイに繋がる知の胚芽を随所で感じられる重要音源として知られてきました。録音は以前からテーパー間でその存在が知られていましたが、音盤化された前例が殆ど無いため、これをえ読みになっている方の多くもあまり記憶に当たらない・聴いた事が無い公演日かと思います。とはいえ、海外のプライヴェート・レーベルからは『UNIVERSITY OF ESSEX 2nd Gen』『THE SECRETS OF ESSEX』といったタイトルが出ていたり、『UNIVERSITY OF ESSEX 1971 』というタイトルが登場して密かな人気盤だった事もありましたし、イタリアでは2013年に『LECTURE THEATER, UNIVERSITY OF ESSEX, COLCHESTER, ENGLAND, FEBRUARY 12 1971』として何と2枚組LP(!!!)でリリースされた経緯もあるなど、どれもビギナーよりは玄人向けの音源として知られています。...でも何故なのでしょう?先も述べた通り、演奏自体は70年と71年の架け橋とも言える非常に魅惑的なパフォーマンスが随所で展開していますし、聴きどころもそれだけ多い内容です。けれどもこれまで何故か決定的な代表タイトルが出ておらず、何故なのでしょうか。その理由は" 2nd gen "という、表記上から受け取ってしまうサウンドイメージにあったのかもしれません。と言うのもこのソースはどれもが同一の2nd genソースとして知られており、ステレオSBDやリール・トゥ・リールといった Shine On なイメージを持つ上位ソースが全く出て来なかったのです。実際に内容を聴いてみればかなり面白い音源なのに、もしそうした表記上のイメージだけで敬遠されてきたとすれば実に勿体無い話です。そんな不名誉なこのソースに再びスポットが当ったのは今年の9月。残暑厳しい夏の輝きの中、非常に質の高い2nd genテープが突如ネット公開され、「また2nd genかよ」とぼやきつつその音を耳にしたファンを次々と、その威力満点の灼熱サウンドで焼き焦がしたのです。アップローダーでもあるお馴染みのNeonnight氏によるとこの2nd genはマクセルのXLII 90テープ2本に収められており、テープから直接デジタル転送したソースにヒスノイズの低減化やハム音の除去といった基本的なリマスターが施されたそれは、これまでの2nd genサウンドを大きく底上げしたものだったのです。ただ落ち着いて精査するとピッチの狂いが多少残っており、また音の抜けも既発盤と同程度でしたのでこれを今回Sigmaの敏腕エンジニアが適宜修正するリマスターを慣行。微妙に揺れていた位相のズレを直立不動に正し、細部まで波形を整える事で公開ソースの上をゆく音の質感と聴き心地を備えた最良サウンドを実現、これを2枚組で音盤化したものが本最新作なのです!!比較する既発盤がタイトル『UNIVERSITY OF ESSEX 1971 (※ 以降、" 既発盤 "とします)』と比べていますが、その聴き心地と音の感触はもう別次元です。例えば「Atom Heart Mother」はロジャーによるお馴染みの掛け声" Okay, Here We Go "からスタートしますが、その声の明度が既発盤から+2ほど上がっている事に直ぐ気付かれる筈です。聴衆が静かに聞き入っている事によって生じている現場音の澄み具合にも注目で、音の見通しも向上しているのが判るでしょう。中盤でデイヴとロジャーが2声で交差するガイドボーカルの様子とその後にリプライズする主題の区間も2nd genとは思えない既発盤超えの鮮やかさで浮かび上がります。また単体でのトラック割りこそされていませんが、演奏後にはチューニング・シーンが約1分40秒間ほど含まれており、その生々しい現場感も満点です。「The Embryo」では中音域の良質な明瞭感とが更に浮き立ち、デイヴの歌声も淡いエコーが掛かっている様子が既発盤以上に判り、その後ろで妖しくうねるアンサンブルも更に明瞭な音で耳に届きます。静かなベースに導かれて展開する4:31からの中間パートも「POW R. TOC H」を彷彿させる反復リズムの表情がグッと向上していますし、後半へ進むにつれておよそ2nd genとは思えないレンジの広さに息を呑む筈です。「Careful With That Axe, Eugene」は量感溢れる演奏音に注目です。序盤でロジャーが呟く囁き、深い吐息、突然の奇声もこの日ならではの表情が更に手応えあるサウンドで掴めるほか、スクリーム後のリズムの運動性の高まりとギターの悲鳴、何より9:03~23で聞ける強烈なドラムアプローチにこれまでとは一味違う心象表現の明滅を存分に感じ取る事が出来るでしょう。明瞭なアッパー感はディスク2になっても続きます。まず「Astronomy Domine」は既発盤の導入部で目立つ音揺れがありましたがここにはそれが無く、最後までブレの無い真っ直ぐな音像で進行するのです。またそうして音像がブレずに澄んでいるという強みが曲の所々で突然入る強音に出ており、その音割れしない芯の太い音にレンジの深さも感じ取れるのです。「Cymbaline」は既発盤同様に曲の出だしが若干カット・インでスタートしますが(※ 恐らく収録時のテープチェンジの為でしょう)、その後は中盤の寸劇シーンも含めフル収録。寸劇シーンの始まるところではハイヒールの音が止まるまでニックが延々とタムを叩き続けるこの時期ならではのアプローチが伺えて興味深いのですが、何より場内全体が静まり返っているため僅かな弱音がより確かな音で聴こえる事、そして中音域の量感が増した聴き応えに驚かれると思います。「Set The Controls For The Heart Of The Sun」も中盤で急速にラウドになるシーンに既発盤超えの熱量とスピード感が体感出来ますし、終曲部でロジャーがマレットで執拗にかき鳴らすシンバルも響きの直接感が増しています。「A Saucerful Of Secrets 」は序盤で4人が放つ奇怪な響きの交差と重厚感が更に手応えあるものとなり、終盤で音楽が昇華してゆく姿もスライド・ギターとオルガンが融合する様子が眩いサウンドで息衝いており、最後の一音までこの日の演奏の魅力を伝え切っているのです。どのシーンにも言える事ですが、原音の入力レベルがこれだけ高くても音割れひとつしていない余裕ある音像には誰もがたまげるでしょう。そして通して聴き終える頃には誰しもが「本当にこれ2nd genなのか?」と、つい口に出てしまう方が続出する筈です。今週は同71年6月5日のベルリン公演『Berlin 1971 1st Gen 』も同時リリースされますが、このどちらもがこれまで知られていたサウンドのイメージを覆す、威力とポテンシャルに充ちた優れもののアッパー・タイトルになっています。特に本作は長らく誤解されていた2nd gen音源のイメージを打ち破盤、2nd genだからといって甘く見ていると痛烈なしっぺ返しを喰らうこと確実な燻し銀タイトルです。Lecture Theatre Block 6 & 7, University of Essex, Wivenhoe Park, Colchester, UK 12th February 1971 TRULY PERFECT SOUND(UPGRADE) Disc 1 (43:12) 1. Atom Heart Mother 2. The Embryo3. Careful With That Axe, Eugene Disc 2 (53:35) 1. Astronomy Domine 2. Cymbaline 3. Set The Controls For The Heart Of The Sun 4. A Saucerful Of Secrets