生演奏版「アランのサイケデリック・ブレックファスト」で知られる文化遺産アルバムがブラッシュ・アップ。「GRAF ZEPPELIN」による最高峰更新サウンド2CDでリリース決定です。そんな本作に刻まれているのは「1970年12月22日シェフィールド公演」。その極上オーディエンス録音です。このショウはミュージック・コンクレート作品「アランのサイケデリック・ブレックファスト」がステージ演奏されたことで知られるわけですが、そんな実験公演は一体どんなタイミングだったのか。まずは、当時の活動歴を振り返ってショウのポジションを確かめてみましょう。・1月10日ー2月28日:欧州#1(18公演)←※BIRMINGHAM 70他《3月1日『原子心母』制作開始》・3月5日ー30日:欧州#2(15公演)←※NUREMBERG 1970他・4月9日ー5月16日:北米#1(17公演)←※FILLMORE WEST 1970他《機材盗難でツアー中断》・6月27日ー7月26日:欧州#3(7公演)←※HYDE PARK 1970《7月26日『原子心母』録音終了》・8月8日ー9月12日:欧州#4(4公演)・9月26日ー10月25日:北米#2(20公演)←※PEPPERLAND 1970他・11月6日ー12月22日:欧州#5(21公演)←★ココ★ これが1970年のPINK FLOYD。次作『おせっかい』セッションは1971年の年明け早々から始まっており、本作のシェフィールド公演はその直前となる最終公演でした。この「欧州#5」は名録音の多産レッグとしても知られるわけですが、「アランのサイケデリック・ブレックファスト」が聴けるのは本作だけ。ここで更に日程をフォーカスして、その辺の状況を確認してみましょう。「欧州#5」の詳細・11月6日:アムステルダム公演*11月7日『ROTTERDAM 1970: 4TH GEN』*11月11日『GOTHENBURG 1970』*11月12日『COPENHAGEN 1970』*11月14日『IN GERMANY 1970-1971(一部)』*11月21日『MONTREUX 1970 DAY 1』他*11月22日『TOO EARLY FOR A GIG』他*11月25日『ATOMIC ENSEMBLE』*11月26日『KILLESBERG HALLE 1970』*11月27日『IN GERMANY 1970-1971(一部)』*11月28日『PICTURES OF PINK FLOYD』*11月29日『MUNICH 1970』・12月3日ー21日(6公演)*12月22日:シェフィールド公演 ←★本作★……と、このようになっています。大半のステージが記録に残っているという大充実のツアーでした。しかし「アランのサイケデリック・ブレックファスト」を演奏したのは、その中でも最後の4公演。ここまで充実していながら音楽作品として聴けるのは本作だけなのです。伝説の1stジェネ・マスターを細密ブラッシュアップ そんな貴重極まる本作ですが、そのサウンドはレア度など無関係でも名作認定されること確実の素晴らしさ。長い歴史でアップグレードを繰り返してきたわけですが、本作のソースになっているのは数年前に発掘された1stジェネ。今なお超える物のないベスト・マスターを「GRAF ZEPPELIN」が磨き込んだ業物なのです。本稿に目を留められた方なら偏執的なまでの「GRAF ZEPPELIN」マスタリングの精度をご存知と思いますが、今回特に大きかったのは音ヨレの補正。前回盤『Sigma 271』をお持ちの方なら「デブでよろよろの太陽」の冒頭部や「太陽讃歌」後半のキーボードを聴いてみてください。静かなロングトーンに僅かな揺れが感じられると思います。あまりにささやかで欠点と言うよりはヴィンテージ楽器の風合いにも感じられるのですが、分析の結果、どうやらトランスファー時点の走行ムラが原因。そこで出音そのものを忠実に再現すべく、細かく細かく調整。ビシッと安定させ、艶やかで綺麗に伸びる本来の演奏が見事に甦っているのです。さらに重要なのは肝心要の「アランのサイケデリック・ブレックファスト」。マスター・テープに起因する定期的な微細プチ・ノイズが徹底的にトリートメントされている。ハッキリ申しますと改めて前回盤を聴いても「言われてみれば、そんなノイズがあるような……」くらいのささやかなノイズなのですが、これも1つひとつ丁寧に、徹底的にトリートメント。それも土台の演奏音の種類によって処理法を変え、シームレスに美しく仕上げている。綺麗に除去されて初めて「あ、本当にノイズがあったんだ」と気づくくらい、ナチュラルな現場音を取り戻しているのです。聴きどころしかない本生版ATOM HEART MOTHERの夜 そんなアップグレード・サウンドで甦るのは貴重にして聴きどころしかない希代の名録音。冒頭からアルバムを遙かに超える約30分の「アランのサイケデリック・ブレックファスト」が繰り広げられ、ラストはジョン・オルディスが指揮者を務めるオーケストラ共演バージョンの「原子心母」が披露される。その合間で披露される「デブでよろよろの太陽」も合わせ、生演奏版『ATOM HEART MOTHER』にもっとも近いフルショウでもあります。その合間で演奏されるレパートリーにしても必聴。円熟味たっぷりの「エンブリオ」、鬼気迫る完全版の「ユージン、斧に気をつけろ」。そして、「アラン」と並んで語り草となっているのが「神秘」のトラブル。演奏自体が25分に及ぶ壮大なものですが、曲が盛り上がった18分台で突如停電が発生。ドラムの生音だけになり、ショウが中断してしまうのです。本作でも(断続的に約2分ですが)中断パートも記録されている。そして、そのムードが1970年の時代感が丸出し。意図的な演出だと思ったのか観客が普通に拍手を送っていますし、なかなか再開しない会場で笑いが起こる。この演出なのか事故なのかさえ判然としないムードこそ「ロックは何が起こるか分からない」時代の薫りなのです。 伝説の「アラン」、貴重なオケ入り「原子心母」、そして「神秘」のトラブル。そのすべてを細密マスタリングによる最高峰更新サウンドで体験できる文化遺産アルバムです。マスターテープに起因するノイズや歪みさえ乗り越えた永2CD。「1970年12月22日シェフィールド公演」の極上オーディエンス録音。現存ベストの1stジェネ・マスターを「GRAF ZEPPELIN」が磨き込んだ最高峰更新盤。走行ムラによる音ヨレやマスター・テープに起因する定期的な微細プチ・ノイズも徹底的にトリートメント。激レアな「アランのサイケデリック・ブレックファスト」やオケ共演の「原子心母」、トラブルも生々しい「神秘」……すべてが美しく甦った文化遺産アルバムです。リマスター・メモ ★全面的に音ヨレ(回転ムラ)をなるべく補正(特にFat Old Sun出だし、太陽賛歌後半など) ★一部のテープの繋ぎによるヒスの増減する箇所を修正 ★テープに起因する定期的に発生するプチっというノイズを修正(特にアランのサイケデリック) ★パチパチっと入るデジタルノイズ修正(太陽賛歌1:28-1:33付近)等々 ★全面的に音ヨレ(回転ムラ)をなるべく補正(特にFat Old Sun出だし、太陽賛歌後半など) ★一部のテープの繋ぎによるヒスの増減する箇所を修正 ★テープに起因する定期的に発生するプチっというノイズを修正(特にアランのサイケデリック) ★パチパチっと入るデジタルノイズ修正(太陽賛歌1:28-1:33付近)等々 Live at City Hall, Sheffield, UK 22nd December 1970 TRULY PERFECT SOUND(UPGRADE) Disc 1 (76:23) 1. Introduction 2. Alan's Psychedelic Breakfast 3. The Embryo 4. Fat Old Sun 5. Careful With That Axe, Eugene Disc 2 (76:19) 1. Set The Controls For The Heart Of The Sun ★12:38カットアウト 2. A Saucerful Of Secrets ★18:10電源が落ちる / 18:24カット 3. Celestial Voices ★「神秘」終盤パートのみやり直す珍しいテイク 4. Atom Heart Mother 5. Atom Heart Mother (reprise)