ローリング・ストーンズ絶頂の1973年ヨーロッパツアーはKBFHのラジオ放送という絶対的なステレオ・サウンドボード音源が絶大です、オーディエンス録音に関してはどうしても後手に回ってしまう感が否めないのですが、そんな中でも屈指の名録音としてマニアに高い人気を誇るのが9月19日のバーミンガム・オデオン。同ツアーの中でもかなりオンな音像で捉えられていたオーディエンス録音というだけでなく、何よりステレオで録音されていたのが大きな魅力でした。ある意味画期的なヨーロッパ73のベスト・オーディエンスが登場したのは1990年代前半、懐かしのOh Boy!がリリースした『BIRMINGHAM ODEON 1973』。それに追随するかのごとく単発リリース的な『RAINY DAYS IN BIRMINGHAM』が登場。何と言ってもヨーロッパ73からの優良オーディエンスの登場にマニアが色めきだった訳ですが、いざ蓋を開けてみれば一貫してピッチが遅いという問題を抱えており、中でもOh Boy!盤はピッチがかなり遅く、名門レーベルからのリリースにもかかわらずマニアが肩透かしを食らう結果に。その後、前回の『ROTTERDAM 1973 1ST NIGHT』の音源を最初にリリースした実績を持つStone Crazyが『BRITISH TOUR 1973』をリリースしてようやく正確なピッチで出たと思いきや、今度はテープがジェネ落ちというオチ。せっかくの優良オーディエンスを活かしきれていないリリースばかりにマニアからも見過ごされてしまう結果となってしまい、本音源がようやくベストの状態でリリースされるようになったのは何とこれらのアイテムのリリースから10年以上の歳月が経過してのことでした。そんな新世代バーミンガムの先陣を切ったのはIMPの『BIRMINGHAM REMASTER 1973』。ピッチと音質の両方で満足のいくアイテムが登場したと当時は歓迎されたのですが、すぐさまDACがその名も『BIRMINGHAM ODEON』をリリースすると決定版の座を奪還。さらにGodfatherが出した『A DESTRUCTIVE ELEMENT』も高評価を得ましたが、多くのマニアにとってはDAC盤がバーミンガム・オデオン73のベストに君臨していたのではないでしょうか。もっとも今となってはDAC盤すら問題アリアリで、何と言ってもかなり原音がいじられた状態。結果として中域に寄ってしまった作りで音が薄くなってしまい、本来のアナログらしい深みや厚みが削がれてしまっていた。おまけに本来のステレオ感のある広がりまで狭まってしまう始末。この違和感はOh Boy!時代からバーミンガムを聞かれていたマニアなら気付かれていたはず。またDAC盤は遅いピッチを意識するあまり、むしろ速めな速度に直してしまったという問題も抱えていました。そして「Happy」から「Starfucker」までに頻発していた左チャンネルの音落ちを原因とする揺れ。これは過去にリリースされてきたバーミンガム全てに共通していた持病なのでした。現在であれば最新技術を駆使し、それらの問題を全て解決、なおかつ本来の魅力を出し切ったリリースは可能なはず。むしろ待ち望まれていたと言ってもいいのではないでしょうか。そこで立ち上がってくれたのが「GRAF ZEPPELIN」。今回のリリースに際してはまず独自に上位マスターを入手。そこから「GRAF ZEPPELIN」が徹底した音源のオーバーホールを敢行。まずなんといっても「Happy」から「Starfucker」にかけて生じていたトラブルを緻密に修正。バーミンガムはステレオであることからヘッドフォンで愉しみたいマニアがたくさんおられたはずで、それ故に音揺れの違和感に苦しめられたはずですが、遂にこの問題から解放される日が来ました。そもそも音質自体がDAC盤よりもはるかにナチュラルで厚みがあり、その違いは「Dancing With Mr.D」のイントロで聞き比べれば一目瞭然。それにイコライズによって生じがちな浮ついた余韻の不自然さも皆無。とどめは正確にアジャストされたピッチ。この仕上がりにはマニアも聞いていて思わず顔がほころんでしまうこと間違いなし。これは今年に入ってストーンズいくつものビンテージ・オーディエンスを手掛けてきた「GRAF ZEPPELIN」のノウハウの蓄積が生み出した最高傑作と言っても過言ではない仕上がりで、遂に登場したバーミンガム真の決定版。さらにジャケのデザインまでプロデュースした結果Oh Boy!盤をリスペクトしてあのベロドラゴン(笑)が30年ぶりの復活!そして何と言ってもツアー開始から二週間が経過し、あのブリュッセルを予見させるヨーロッパ73らしさが高音質で捉えられているのもバーミンガムの大きな魅力でしょう。イントロからしてハンマリングを連発してギターソロが待ちきれないとばかりのミック・テイラーが印象的な「Gimme Shelter」で聞かせるソロの躍動、正に73年ならではの「Midnight Rambler」の爆裂。そして何と言ってもミックがレコードと同じメロディで歌い上げる「Angie」が尊い…リマスター・メモ 既発ベストとされるDAC盤が左右の広がりがなくなってしまっており、間違いなく今回盤が あらゆる面でベストです。ピッチもDACは若干速すぎでした 位相修正とピッチ修正およびGimme Shelter-Star Star間で頻発する左チャンネルの音揺れを補正 Birmingham Odeon, Birmingham, UK 19th September 1973 1st Show PERFECT SOUND(UPGRADE) (69:41) 01. Introduction 02. Brown Sugar 03. Gimme Shelter 04. Happy 05. Tumbling Dice 06. Star Star 07. Dancing With Mr. D. 08. Angie 09. You Can't Always Get What You Want 10. Midnight Rambler 11. Honky Tonk Women 12. All Down The Line 13. Rip This Joint 14. Jumping Jack Flash 15. Street Fighting Man