ディラン1998年夏のヨーロッパツアーは掛け値なしに「90年年代もう一つの絶頂期」と呼べる素晴らしい時期だったのですが、今となってはあまりにもアイテムが手薄になってしまった。そこで今回は『NEWCASTLE 1998』と同時にもう一公演、このツアーからの極上オーディエンスを同時にリリースいたします。98年夏のヨーロッパが絶頂期の一つに数えられる要因として、前年春のアメリカで固まった新しいバンド編成が一年以上のライブ経験を遂に盤石の域に達したということでしょう。特にデヴィッド・ケンパーのドラミングは一年半前の来日公演とは別人かと思うほど力強い。そうした演奏の素晴らしさだけでなく、このツアーはセトリが異常と思えるほど激しい変動ぶりをみせている。そんな驚きの変化を如実に語ってくれるのがニューキャッスルと同時リリースとなるハンブルグ公演なのですが、何とダブるレパートリーが四曲しかないという事態。まずオープニングが「All Along The Watchtower」というインパクトの大きすぎる幕開け。ディランのステージ・レパートリーの中でも最も多く演奏された曲の一つですが、それがオープニングに演奏されたのは98年の夏だけで、それとて片手で数えられる程度の回数でしかなく、その最後の試みがここハンブルグでした。この驚きのオープニングから続くレパートリーがえげつないほどマニア好みな選曲となっているのがこの日のあまりに大きな魅力。何しろ「Tough Mama」に「Tears Of Rage」というザ・バンド繋がりの名曲が立て続けに演奏されるという。特に前者は74年以来となるライブ演奏が前年から実現してマニアを喜ばせましたが、それも一年近く演奏し続けてきただけあって、ここでは実に見事な出来栄え。ここまでだけでも98年夏のディランとバンドがいかに脂の乗った状態であったかを実感していただけるはずですが、彼らの攻めな姿勢は往年の曲だけでなく、当時の最新アルバムだった『TIME OUT OF MIND』収録曲にまで及んでいる。ニューキャッスルで演奏されていた「Cold Irons Bound」の代わりに「Can't Wait」や「Make You Feel My Love」など、そこで演奏されなかった『TIME OUT~』収録曲が三曲も立て続けに演奏されている。当時の最新曲まで変幻自在なセットリストがあまりにも面白い。元々90年代から2010年くらいまでのディランはセトリの変化に富んでいましたが、ここまで極端な変化を見せた時期というのは稀かと。それに何と言っても音質が抜群。ニューキャッスルがあれほどの高音質を誇っていた訳ですが、ハンブルグも全く負けていない。実のところ、この日もそのクオリティの高さと魅力的なセットリストゆえに『EVERYTHING LOOKS FAR AWAY』というタイトルがリアタイでリリースされていたのですが、それと今回のオリジナルDATマスターでは「コレが同じ音源なの?」と首を傾げそうになるほど音質が違う。そう、同タイトルでも例によってDAT録音をカセットに落としたコピーが使われていたのでした。おまけに今回は正真正銘のDATマスターを使用したことで、先に触れたレアなオープニングからしてナチュラルでふくよかな低音の迫力が素晴らしい。それでいて音像の圧も凄い。サウンドボードチックな音像はマニアだけでなく初心者でも安心して聞き込んでいただけることでしょう。このような比類なきクオリティのオーディエンス録音がゴロゴロ転がっているのも98年夏のヨーロッパ人気の秘訣なのです。そしてボーナスにはツアー序盤のベルリンからレアなレパートリーを収録。ディランが自信を持ってセトリに組み込んでいた『TIME OUT OF MIND』収録曲ですが、あの名曲「Not Dark Yet」だけは思うようなライブ・アレンジが完成しなかったようで、夏のヨーロッパにおいてたった一回のレア演奏がここベルリンだったのです。おまけにオープニングは「Everything Is Broken」という超レアなパターン。こちらもボーナスながらDATマスターからの最高音質にて収録。Stadtpark Freilichtbuhne, Hamburg, Germany 12th June 1998 ULTIMATE SOUND(from Original DAT Master) Disc:1 (77:56) 1. Intro 2. All Along The Watchtower 3. I Want You 4. Tough Mama 5. Tears Of Rage 6. Silvio 7. Oh Baby It Ain't No Lie 8. Masters Of War 9. Boots Of Spanish Leather 10. Tangled Up In Blue 11. Can't Wait 12. Make You Feel My Love 13. 'Til I Fell In Love With You 14. Band introduction 15. Highway 61 Revisited Disc:2 (56:52) 1. My Back Pages 2. Love Sick 3. Alabama Getaway 4. Blowin' In The Wind Bonus Tracks Waldbuhne, Berlin, Germany 3rd June 1998 5. Intro 6. Everything Is Broken 7. If You See Her, Say Hello 8. The Times They Are A-Changin' 9. Love Minus Zero / No Limit 10. Not Dark Yet 11. Band Introduction 12. Don't Think Twice, It's All Right Bob Dylan - vocal & guitar Bucky Baxter - pedal steel guitar & electric slide guitar Larry Campbell - guitar Tony Garnier - bass David Kemper - drums & percussion