2014年、大好評を博した日本公演に次いでディランはヨーロッパツアーを行いました。もちろんライブのセットリストは引き続き近作アルバム収録曲をフィーチャーした構成だったのですが、フェスティバル出演を始めとした一部のライブでは突如として過去の名曲大フィーチャーのセットリストへと豹変して世界中のファンを驚かせています。その展開は昨年のヨーロッパツアーでも起きていましたが、今年はさらに回数が増えたこともまたファンを驚かせたものです。やはりディランとバンドは盤石のコンビネーション、いつでもセットリストを大胆に変化させられることがこの夏に証明されました。そんなセットリスト激変日、過去の名曲たっぷりなライブの一つであった7月15日のヨーテボリ公演を収録。先の理由から世界中のファンの間で人気を呼んだ音源なのですが、現在出回っているオーディエンス録音はライブの前半において右チャンネル側でマイクの接触ノイズが頻発し、さらに昔の曲を演奏したことから観客の盛り上がりやチャットが耳障りと言う難ありの状態で登場しました。元の録音自体は非常にオンな音像と抜群のクリアネスを誇るだけに、この音源の状態は残念と言うしかありません。しかし久々の名曲連発セット、しかも音質自体は極上ということからノイズの削除と観客の声の緩和を徹底した結果、一気に聴きやすい(音量レベルも調整しています)状態へと生まれ変わっています。とにかく話題の公演でしたので、元の音源を入手されたディラン・ファンの方には聴き比べていただきたいポイントです。特に前半の「Don't Think Twice, It's All Right」はメジャー・ソング中のメジャーということもあってか最初から盛り上がっており、後半では女性が熱唱してくれるほど(さすがにそこは削除できませんが…)。その後も何度か入るノイズは完璧に削除しています。それにしても名曲のオンパレードということで観客は盛り上がっています。先のようなビンテージなナンバーだと歌い出すのですが、一方で近年の曲、例えば「Cry A While」などが始まるとすぐにしゃべり始めるという有様で、恐らくはテーパーが周りに対して「shut up!」と何度も注意する姿は涙ぐましく映るほど。録音する側としてはこの上なくストレスを感じる状況であったことが偲ばれます。しかしそんな状況が起きても演奏自体がオンに捉えられ続けていたのは本当に幸いでした。何しろ名曲の連発というだけでなく、そのアレンジがまた面白い演奏ばかり。60年代の名曲は概して軽やかなアレンジにまとめられているのがとても良いのですが、近作からの「Cry A While」や「Tweedle Dee And Tweedle Dum」などがまったく原形を留めないアレンジの大胆さも聞き逃せません。特に後者はオリジナルのアッパーな雰囲気がすっかり払拭され、意外なほど明るいアレンジで演奏されていることに驚きを禁じ得ません。それでいて60年代の名曲のセレクションはまるでベスト盤といっても過言でないほど最強のラインナップ(これで「Like A Rolling Stone」が演奏されれば文句なしでしたが)であり、それだけでもファンであれば満足できることでしょう。しかしここでもディランは絶好調であり、盤石なバンドの演奏をバックに相変わらずの見事な歌いっぷりが伝わってきます。Live at Tradgardsforeningen, Gothenburg, Sweden 15th July 2014 TRULY PERFECT SOUND Disc 1(44:28) 1. Intro 2. Watching The River Flow 3. Don't Think Twice, It's All Right 4. Just Like Tom Thumb's Blues 5. To Ramona 6. The Levee's Gonna Break 7. Shelter From The Storm 8. Cry A While 9. Girl Of The North Country Disc 2 (62:29) 1. Summer Days 2. Desolation Row 3. Tweedle Dee And Tweedle Dum 4. Lonesome Day Blues 5. A Hard Rain's A-Gonna Fall 6. Thunder On The Mountain 7. Ballad Of A Thin Man 8. All Along The Watchtower 9. Blowin' In The Wind Bob Dylan - Vocal, Piano, Harp Tony Garnier - Bass George Recile - Drums Stu Kimball - Guitar Charlie Sexton - Guitar Donnie Herron - Banjo, Violin, Electric Mandolin, Pedal Steel, Lap Steel