ザ・フー1976年ツアーにおいてこれほどまで再リリースが渇望されていた音源は他にないのではないでしょうか…というほど音質と演奏内容の両方で魅力に溢れたボストン。それは単なるギグでは済まされず、当初の予定だった日がキース・ムーンの体調不良によって二曲で打ち切りというハプニング。しかしそんな場面までも最高のステレオ・オーディエンス録音で記録されていた…それが2010年リリースの『BOSTON 1976』でした。この時期ダン・ランピンスキーを名乗る人物による極上音質のオーディエンス録音の発掘が相次ぎ、中でもザ・フーに関しては素晴らしい録音を残してくれたのが懐かしい限り。先日もボストンから遡ること三か月前に行われたスプリングフィールドの名録音を「GRAF ZEPPELIN」がリマスターしてくれた『SPRINGFIELD 1975 REVISITED』がリリースされたばかりですが、それ以上に再リリースが待ち望まれていたのがこのボストンではないでしょうか。ランピンスキー録音の例に漏れずボストンでの仕事ぶりも実に鮮やか。ステレオで臨場感抜群かつ音圧も迫力十分。それに結果としてハプニングと仕切り直し両方のステージを最高の音質で捉えたときてる。それゆえ2010年の『BOSTON 1976』リリースは激賞され、文字通りのベストセラーと化していたもの。ところが売り切れとなってから久しいアイテムであるのも事実であり、それ故にマニアの間では再リリースが渇望されたランピンスキー音源の代表と化していたのです。そこで『SPRINGFIELD 1975 REVISITED』に続いて今回も「GRAF ZEPPELIN」がリマスターを敢行。14年前(そんなに経ったとは!)の『BOSTON 1976』は全体を通して音量不足の感があり、「GRAF ZEPPELIN」はそこを徹底的にアジャスト。とはいえコンプを乱用して音量稼ぎするような無粋なマネはせず、あくまで無理のない範疇で、しかし徹底した音量の調整を行ってくれたのでした。また前回のリリース同様「Summertime Blues」以降は懐かしのDynamite Studioがリリースした『BEHIND BLUE EYES』ソースを流用して完全収録が実現していますが、これまた「GRAF ZEPPELIN」が最新テクノロジーを駆使してリマスターを施した結果、前回の『BOSTON 1976』に使われたパートよりもずっしりとして深みのある音へと進化。その違いは一目瞭然かと。そもそも今回の再リリースに際して「GRAF ZEPPELIN」は音源の編集を一から見直しており、曲間のカットも緻密な補填を実現。中でも「Dreaming From The Waist」終了後から「Magic Bus」開始時にはかなりの空白がカットが生じており、それどころか後者が開始されるタイミングにまで食い込んでいたことが今回の補填で実証されており、その結果として初の完全版リリースということにもなるのです。ここでも『BEHIND BLUE EYES』ソースが活躍。そして何と言ってもボストンは聞きどころの連続。問題の3月9日公演に関しては開始当初からキースがまるで叩けてなく「I Can't Explain」のブレイクで入るべきフィルインが一切ないという異常事態。「Substitute」では彼が最後の力を振り絞って付いて行こうとしたものの玉砕。他の三人が彼の方を向きながら不安げに演奏している様子が浮かぶかのよう。あえなくライブは中止、この緊急事態に慌てるピートとロジャー、さらに騒然とする会場の様子もランピンスキーが生々しいまでに捉えてくれている。ロジャーは「キースはインフルなんだ、このまま彼を殺すわけにはいかない」と釈明していますが、実際には酒や薬がもたらした問題であることは言うまでもありません。結局このツアーの最終日として4月1日に振り替え公演が実現したのですが、このような失態からの仕切り直しということでオープニングから凄まじく気合の入ったステージ。当然キースの張り切りようは半端でなく、3月の時とは別人のようなエンジン全開のドラミング。それに負けじと他のメンバーもハイテンションの極みとなっており、彼らの白熱ぶりが「Magic Bus」で最初のピークを迎えます。特にピートのギターはキレッキレ。またボストンと言えば71年や73年のZEPがそうだったように観客が騒動を起こしがちなきらいがあり、案の定これだけハイテンションな演奏を前に振り切れたオーディエンスがライブ終盤「Join Together Blues」の最中に乱闘を始めてしまいます。それが目に入ったピートが演奏を中断して注意を促し、さらにキースまでもがオーディエンスに注意するという事態。ところが何事もなかったように演奏に戻ってみせるのがこの日のザ・フーの凄いところ。ひたすらハイテンションに駆け抜けた76年の名演かつランピンスキーの名録音が遂に再登場でジャケには当然キースをフィーチャー。リマスター・メモ 全体に音量バランスを調整し、前回よりも大きめの音圧のあるサウンドです 所々位相を修正 欠落部を適宜別音源で補填(下記曲目参照)し、全曲ほぼ完全収録を実現。前回よりも補填を緻密に行い、3月9日パートのライブイントロ部は同日別ソースのJoe Malony音源で補填。4月1日公演のDreaming FromからMagic Bus出だしおよび終盤 Summertime Blues以降は、既発別ソースの「Behind Blind Eyes」(Dynamite Studio)をリマスターのうえ補填。補填ソースは位相、ピッチ修正、帯域補正のうえ使用。DS音源も元々高音質であり、さらに位相修正やEQ調整によりセンター定位で終始安定したサウンドで堪能できるようになりました。Live at Boston Garden, Boston, MA, USA 9th March & 1st April 1976 TRULY PERFECT SOUND(UPGRADE) Disc 1 (56:06)Live at Boston Garden, Boston, MA. USA 9th March 1976 01. Introduction ★0:00-0:39 Joe Malony音源で補填 02. I Can't Explain 03. Substitute 04. Keith Moon passes out Live at Boston Garden, Boston, MA. USA 1st April 1976 05. Introduction 06. I Can't Explain 07. Substitute 08. My Wife 09. Baba O'Riley 10. Squeeze Box 11. Behind Blue Eyes 12. Dreaming From The Waist ★4:18以降(演奏後曲間) Dynamite盤からのリマスター補填 13. Magic Bus ★0:00-0:06 Dynamite盤からのリマスター補填 Disc 2 (54:00) 01. MC 02. Amazing Journey 03. Sparks 04. Acid Queen 05. Fiddle About 06. Pinball Wizard 07. I'm Free 08. Tommy's Holiday Camp 09. We're Not Gonna Take It 10. See Me Feel Me ★4:35以降(演奏後曲間) Dynamite盤からのリマスター補填 11. Summertime Blues ★丸ごとDynamite盤からのリマスター補填 12. My Generation ★丸ごとDynamite盤からのリマスター補填 13. Join Together ★丸ごとDynamite盤からのリマスター補填 14. My Generation Blues 曲間カット 15. Won't Get Fooled Again ★丸ごとDynamite盤からのリマスター補填 / 冒頭のみ若干欠落 Dan Lampinski Master Collection Pete Townshend - Guitar, Vocals Roger Daltrey - Vocals, Harmonica John Entwistle - Bass, Vocals Keith Moon - Drums, Vocals