世界中のディランマニアの間に大きな衝撃が走りました。1976年ローリング・サンダー・レビューのサウンドボードが一気に二公演も発掘されたのです。発信元はディランの会員制サイトでしたが何しろ絶頂期ライブの新発掘サウンドボードです、このご時世ゆえ、すぐに大手音源サイトへと拡散。さっそくDLして年末年始に聞かれていたマニアもおられることかと。大変画期的なローリング・サンダー・レビュー(以下“RTR”と称します)の新発掘サウンドボードはPAアウトからのものでして、二公演のうち最初は4月29日のモービル。この日は以前からオーディエンス録音が出回っており、コア・マニアの間では知られた日ではありましたが、ここに来てPAアウトのサウンドボードが発掘されたものだから世界中のマニアを騒然とさせています。PAサウンドボードと言えば楽器のバランスがダイレクトになりすぎたり、あるいは臨場感が希薄になりがちと言った癖のある録音状態へと陥りがちですが、RTRのような大所帯バンドですとそうした癖がほとんどなく、むしろPAサウンドボードならではの脳みそにダイレクトに流し込まれるかのような生々しさが完全に吉と出ており、全体を通して迫力満点かつ生々しいサウンドに圧倒されることでしょう。中でも「I'll Be Your Baby Tonight」のRTRバージョンを捉えたサウンドボードはこれが初登場。というのも大好評発売中の『NEW ORLEANS 1976 SOUNDBOARD』の時にはセトリから落とされてしまい聞くことができなかった。それだけでも大変に貴重な発掘となったのですが、この演奏が抜群にカッコイイ。75年とは打って変わってレイドバックした76年版RTRの魅力満載といってよく、こんなライブ映えするレパートリーがこの後すぐに演奏されなくなってしまっていたとは。もっとも流出音源らしく今回の新発掘サウンドボードは曲間がカットされまくり、それどころか収録されていない曲まである。さらにモービルに関しては「Maggie's Farm」の冒頭でコピー時に生じた音のダブりが生じていたほど。しかし幸いなことに、この日は先に触れたオーディエンス録音が存在する。そこで今回のリリースに際してはこのaudソースを最大限活用したアジャストを敢行。何しろ今回の音源に見られる曲間のカットは単なるカットでは済まされず、MCの欠損やカットがイントロにまで食い込んでしまう箇所が随所で見られたのです。先に触れたモービルのサウンドボード最大の目玉とも言えた「I'll Be Your Baby Tonight」からしてイントロが欠損しており、そこにaudを緻密にパッチすることで演奏の完全収録を実現。これはディランのパートだけでなく他アーティストの個所でも徹底され、ロジャー・マッギンやジョーン・バエズのパートも最大限のaud補填を実現。その作業の過程でSBDに収録された二人の演奏の数曲がモービルではない別の日の演奏であることまで判明してしまったのですが、この辺りは今後の調査に期待したいところ。おまけに「Isis」で15秒以上にも及ぶ曲中カットまで生じていたのですが、ここもaudを緻密にパッチした結果、一聴しただけだと気付かないほどなめらかな仕上がりで聞き通せるようになったのです。そして極めつけはライブ終盤がごっそり抜け落ちてしまったパートもaudを活用することでディラン・ステージの完全収録を実現。さすがにSBDの足元にも及ばない音質ではありますが、実際「Lay Lady Lay」を聞いてもらえれば一目瞭然、周囲がまったくと言っていいほど騒いでいないので驚くほど聞きやすく、やはりライブが最後まで聞き通せるのは強い。そしてPAサウンドボードならではの荒々しさを活かしたこの日のRTRの演奏がアツいアツい!ツアー後半に収録されたライブアルバム『HARD RAIN』を予見させる激しさが既に現れており、先の「I'll Be Your Baby Tonight」から「One Too Many Mornings」かけてだけを聞いてみても演奏の素晴らしさに圧倒されること請け合い。それに76年版「It's Alright, Ma (I'm Only Bleeding)」も実は珍しい。その反面「Shelter From The Storm」と「I Threw It All Away」ではディランが弾く超へたっぴ(笑)なスライドギターの炸裂ぶり、まだレパートリーに投入されたばかりの「Stuck Inside Of Mobile With The Memphis Blues Again」が当初はカリプソ風な雰囲気で演奏されていたりといった『HARD RAIN』とはまるで違う演奏もこれまたPAアウトならではの迫力と生々しさで捉えてくれているなど、新発掘サウンドボードとしての魅力が十分すぎる程に溢れている。最初に触れたように拡散されたことから他レーベルからもリリースされること必須な新発掘サウンドボードではありますが、そこらじゅうで散見された曲間カットにaudを駆使してこれほどまで緻密にアジャストしてみせたのは本作だけ。リマスター・メモ 曲間は繋げる所は全て繋ぎました。(SBDは完全モノラルなので、AUD音源は場面によってモノラルにしたりイコライズしたりして繋ぎました) 基本AUDはピッチが合っており、SBDは遅いので修正しました。Expo Hall Municipal Auditorium, Mobile, AL, USA 29th April 1976 Evening Show SBD★初登場 Disc:1 (70:33) Bob Dylan 1. Mr. Tambourine Man 2. It's Alright Ma 3. Vincent Van Gogh 4. I'll Be Your Baby Tonight 5. Maggie's Farm 6. One Too Many Mornings 7. Isis Roger McGuinn: 8. Eight Miles High 9. Jolly Roger 10. Lover of the Bayou 11. Chestnut Mare Joan Baez: 12. Do Right Woman, Do Right Man 13. Turn Me Around 14. Love Song To A Stranger, Part II 15. The Night They Drove Old Dixie Down 16. Diamonds and Rust Disc:2 (78:40) Bob Dylan & Joan Baez: 1. Blowin' in the Wind 2. Railroad Boy 3. I Pity the Poor Immigrant Bob Dylan: 4. Shelter From the Storm 5. I Threw It All Away 6. Stuck Inside of Mobile with the Memphis Blues Again 7. You're Gonna Make Me Lonesome When You Go 8. Going Going Gone 9. Lay, Lady, Lay 10. Silver Mantis 11. Mozambique 12. Idiot Wind 13. Knockin' On Heaven's Door 14. Gotta Travel On SOUNDBOARD RECORDING