大名盤『原子心母』で全世界にプログレッシヴ・ロックの扉を開いたPINK FLOYD。そんな当時を象徴するFMサウンドボードの特別バージョンがリリース決定です。そんな本作に封じられているのは「1971年9月30日ロンドン公演」。BBCの“パリス劇場”で記録されたステレオ・サウンドボード録音です。古くからFM放送が有名な定番中の大定番ですが、本作は冒頭で触れた「特別バージョン」というのがミソなのです。その詳しい内容の前に、まずはショウのポジション。1971年と言えば、時期によって“ATOM HEART MOTHER Tour”と“MEDDLE Tour”と切り替わるタイミングで、伝説の初来日や『ライヴ・アット・ポンペイ』など歴史的な出来事が山盛り。まずは、その活動概要を俯瞰してみましょう。“ATOM HEART MOTHER Tour”《1月『おせっかい』制作開始》・1月17日ー2月27日:欧州#1(10公演)・4月3日ー7月1日:欧州#2(18公演)・8月6日ー15日:日本/豪州(5公演)《8月『おせっかい』完成》・9月18日ー30日:欧州#3(5公演)←★ココ★《10月4日ー7日:ポンペイで撮影》・10月10日+11日:英国(2公演)“MEDDLE Tour”・10月15日ー31日:北米#1a(11公演)《10月31日『おせっかい』発売》・11月2日ー20日:北米#1b(16公演)・12月26日:ビートクラブ出演 これが1971年のPINK FLOYD。本作のパリス劇場公演は、かの『ライヴ・アット・ポンペイ』が撮影される数日前。「欧州#3」の最終日にあたるコンサートでした。このショウは名門BBCで放送された事でも有名で「モノラル版/ステレオ版」の2種が知られています。誤解されがちなのですが、この2種はミックスの違いではない。70年代初頭アメリカなどではステレオ放送も広まっていたのですが、BBCはまだモノラルが基本。そこで、BBCがライヴ録音の際には国内放送用の「モノラル班」と海外用「ステレオ班」の二班制で収録され、前者「モノラル版」は現場でミックス。それに対して後者「ステレオ版」は後日になってからBBCの編集室でミックスされて海外へ送られたのです本作は後者の「ステレオ版」になるのですが、ここにもポイントがあります。これまで海外放送版(ステレオ版)のベスト・マスターと言えば、BBC製作のトランスクリプション・ディスク(LP)起こしで、『BBC 1970/1971』もコレでした。しかし、本作の元になっているのはトランスクリプションLPでもない。BBCが米国”RKO Radio Network”向けに製作した7.5インチのリール・マスターから起こされたもの。8トラック・マルチから直接製作され、カッティングもスタンパーも経ていないサウンドが封じられているのです。実と申しますと、このリールは今週リリースされるビッグ・セット『THE COMPLETE BBC ARCHIVES VOL.2 1971-1974』でも使われています。そちらはライヴアルバムとしての完成度を重視し、ショウ本番に即した編集も施されていますが、本作はリール・マスターそのまんま。挿入された米国用のCMやわずかにカットされた「One Of These Days」も補填なし。放送そのもののスタイルで伝説的なマスターの真実をお楽しみ頂けるのです。そんなリール・マスターだけでなく、本作にはさらに同日ライヴ2曲「The Embryo」「Blues」をボーナス収録しています。これはニューヨークのラジオ局“WNEW-FM”で一度だけ放送されたもの。この放送にはトランスクリプションLPにも、リール・マスターにもない「The Embryo」「Blues」があったのです。前者「The Embryo」のステレオ版はこのテイクだけですし、後者「Blues」に至っては本国用モノラル放送版にさえない。まさに、たった一度きり世に出た幻のテイクなのです。大定番放送だけにライヴ内容は省略しますが、耳馴染んだステージもまるで違って聞こえるリール・マスター版なのです。ボーナス2曲も含め、音楽作品として楽しむのでしたら『THE COMPLETE BBC ARCHIVES VOL.2』をお薦めしますが、本作は貴重マスターの真実に触れられる1枚。『おせっかい』時代の有名FMサウンドボードがリリース。BBCが製作した超貴重なリール・マスターからデジタル化された銘品。ボーナスの「The Embryo」「Blues」も、たった一度だけ放送された激レアなステレオ版で収録しています。 BBC Paris Theatre, Lower Regent Street, London 30th September 1971 STEREO SBD RKO/National Tape Service 7.5ips 2 track stereo Reel To Reel Master (69:28) 01. Brian Matthews introduction 02. Fat Old Sun 03. Commercials 04. One Of These Days 05. Commercials 06. Echoes 07. Brian Matthews 08. The Embryo (WNEW-FM broadcast)★ 09. Blues (WNEW-FM broadcast)★