ミラード・マスター公開は非常に意外なスティーブン・スティルス、しかも1979年のステージという意外さに輪をかけた音源が発掘されて世界中のマニアを驚かせています。これまでCSNYのステージを捉えたミラード音源がいくつか公開されてきましたが、メンバーのソロにまで出向いて録音と言えばニール・ヤング一択なイメージが強く、実はスティルスまで録音していたとは驚きです。しかも79年というのがまた特殊な時期。前年『THOROUGHFARE GAP』というアルバムをリリースし、名目上は同作を引っさげてのツアー…のはずでしたが、ここでスティルスはカリフォルニア・ブルース・バンドという新たなバックバンドを結成。その名の通りブルース中心のステージを繰り広げることになるのでした。実際『THOROUGHFARE GAP』からはライブ序盤で「You Can't Dance Alone」が演奏されるのみで、残りは自身のソロやブルースカバーという、同アルバムのプロモーションとは到底呼べないセトリが面白い。それはむしろ当時隆盛を極めていたディスコに媚びて不評を買った同アルバムの反省からブルースへと回帰したように思えます。実際JEMSもアルバムに関して今回のライナーノーツで「全然惹かれなかった」と素っ気なく述べていますが、らしかぬアルバムを作り上げてしまったことはスティルス自身が自覚していたのでしょう。そこから新バンドを結成した上でライブ活動に乗り出したであろうことが伺えます。そんな79年最初のライブ活動がLAはロキシーでの四夜連続かつ一日二回公演であり、これがカリフォルニア・ブルース・バンドのお披露目ショーとなったのです。チケットもすべての回が売り切れて大盛況というものでした。ミラードはロキシー三日目のレイトショーに参戦。元々が小さなハコですし、いかにも彼らしい音像の近さが今回も炸裂。スティルスのギターを始めとしたバンドの演奏がそれこそ「まるでサウンドボード」という近さで捉えられているのはもちろん、ハコならではのクローズさと相まってステレオ感まであるという超絶クオリティ。先の理由から意気揚々と活動を始めた時期ですので3月にはニューヨークのラジオ放送、さらにパサイックのステージを捉えた白黒ビデオなどマテリアルに恵まれた年でもあるのですが、それ以前でこれほどまで極上クオリティの音源が発掘されたというポイントも高い。それにCSNY時代からの頼れるドラマー、ダラス・テイラーが参加したのはロキシーのみで、先に触れた3月からは別のドラマーに取って代わられるのだから、その点においても1月のロキシーからの新発掘音源というのは価値が高い。そしてバンドにはボニー・ブラムレットも加入。彼女のおかげでバックコーラスやハモリが俄然充実しているだけでなく、彼女も持ち歌を披露。その内の一つがボブ・ディラン「Meet Me In The Morning」のカバーという驚きの選曲。しかもスティルス以下バンドがしっかりバックアップ。何より例のニューアルバムはおろか、伝家の宝刀たるCSNYクラシックすら封印して自身のソロとブルースカバーで構成された攻めのステージを楽しそうに披露するスティルスの様子まで感じさせてくれるウルトラクオリティ。ミラードによる驚きのスティルス録音というのはもちろん、彼が攻めに攻めていた79年という時期の中でも特に貴重なステージをいつものように最高の音質で捉えてくれた、これまた驚きの新発掘ミラード音源。今回もまた別格のクオリティが圧巻!The Roxy, West Hollywood, CA, USA 27th January 1979 Late Show TRULY PERFECT SOUND Disc:1 (47:47) 1. Precious Love 2. Go Back Home 3. You Can't Dance Alone 4. How Wrong Can You Be (Mike Finnigan) 5. Unknown (Bonnie Bramlett) 6. For What It's Worth 7. Make Love To You Disc:2 (34:33) 1. Meet Me In The Morning (Bonnie Bramlett) 2. Cherokee 3. Rock & Roll Crazies / Cuban Bluegrass 4. Band Introductions 5. Jet Set (Sigh) / Turn Back The Pages 6. Come On In My Kitchen Stephen Stills - vocals, guita Gerry Tolman - guitars George Terry - bass Joe Lala -?percussion, vocals Dallas Taylor - drums Mike Finnigan - organ Carl Pickard - keyboards Bonnie Bramlett - vocals