ザ・フーはアメリカでの成功を目標として1967年から精力的なツアーを行いますが、その初期の行程からしてオーディエンス録音が存在するという信じられないほど恵まれた音源環境にあります。おまけにザ・フー最初のアメリカツアーはハーマンズ・ハーミッツの前座というもの。立場上それほど脚光を浴びる立場でない時期のステージがオーディエンス録音が残されているというのは驚きでしかない。6月のモンタレー・ポップ・フェスティバルで衝撃のアメリカ・デビューを飾ったフーではありましたが、本格的なアメリカツアーとなると先の理由から前座扱い。おまけにハーマンズというアイドル・グループの前座。67年くらいまでは「ロック」というくくりよりも「ポップ」という括りだった時代ゆえの扱いでアメリカでのツアーをスタートさせたのでした。そんな時期のステージが録音されていたとは。それが今回リリースされる8月30日のロチェスター。それは30分ちょっとの長さなのですが、何しろアイドル・グループの前座ステージです、これで完全収録。この時代の記録ともなれば欠片のような録音というだけでも価値があるというのにコンプリートというのはそれだけで奇跡に等しい。もちろん1967年のオーディエンス録音ですからラフさが否めないモノラル音質ではあるものの、驚いたことに大きな音像で捉えられている。これはアイドルの前座で実質的にドサ回り。そして何よりロックライブの音響などがまったく確立されていない時期(ジミヘンなどのおかげもあって68年からアメリカのロックライブ音響が急速に発達)にあって、よくこれほどの録音ができたものだなと。実際ロジャーの歌声もまた驚くほどの大きさで捉えている。またこのツアーは爆音ザ・フーのステージと文字通りソフトなハーマンズのステージというギャップもあったはずで、この音像の大きさは彼らが67年の時点で既に爆音ロックを響き渡らせていたことを伺わせてくれる貴重な資料でもある。一番の驚きはそうしたフーの演奏に黄色い歓声が飛び交っているという事。ピートの自伝ではハーマンズ目当てのオーディエンス(主に十代の少女たち)を前にして反応が鈍く、このツアーで我々が得るものはなかった…と振り返っていましたが、この音源ときたらフーの激しい演奏にハーマンズ目当ての少女たちが熱狂しているではありませんか。この時期ならではの「演奏はハードだけど曲調はポップ」なフーの演奏、さらに67年ならではの貴公子然とした彼らのルックスに彼女たちもまんざらではなかったのかと。そして演奏やセットリストもレアさの極み。『A QUICK ONE』から『SELL OUT』にかけてのポップ期ザ・フーならではのレパートリーが30分に凝縮されたセットでありながら、それでいてアメリカ人へのサービスかつビーチボーイズ大好きなキース・ムーンが歌う「Barbara Ann」が組み込まれているという驚きの構成。前年までは好んで演奏されてきたカバーでしたが、そろそろセットから落とされつつあった時期だったことを考えるとコレは貴重。反対に「Summertime Blues」はこの年から導入されたのを皮切りとして代表曲の一つにまで上り詰めるカバーですが、この時点ではまだまだ粗削り、さすがにこなれてない演奏が何とも初々しい。68年以降の堂々たる演奏ぶりとは様子が違い、この曲にもこんな時代があったのだなと…新鮮に映ること間違いなし。そんな貴重極まりない音源がこの8月に改めてトランスファーされたバージョンからリリース。そもそも音源が残されているというだけでもありがたい時期のザ・フーのステージをド迫力のオーディエンス録音で収録。これはもう考古学レベルの発掘!前座時代の貴重な32分のステージを完全収録。これは奇跡!!Rochester Community War Memorial, Rochester, NY, USA 30th August 1967 The Who and The Blues Magoos played in support of Herman's Hermits (32:51) 1. Substitute 2. Pictures Of Lily 3. Summertime Blues 4. Barbara Ann 5. Boris The Spider 6. A Quick One While He's Away 7. Happy Jack 8. I'm A Boy 9. My Generation