長きに渡ったJEMSによるミラード・マスターの公開も今回で打ち止め。255本めの発掘は意外にもロン・ウッド1992年の『SLIDE ON THIS』ツアー。これまでそうそうたるビンテージ・レコーディングを発掘してくれてきたJEMSにしては地味なフィナーレでは?と感じられる方も少なくないのでは。そこはJEMSも確信犯というべきか、まだミラードによる録音の事実が知られていながらもマスターが行方不明となっている公演が50本もあり、さらに晩年の知られざる録音が存在する可能性までもほのめかしてくれています。よって今回で一旦は打ち止めとなるも、まだミラード・マスターのすべてにケリが付いた訳ではないよ…という意思表示が今回のフィナーレに現れたのでした。しかも今回はミラードによる珍しいDATを用いた録音の一つ。そう、盟友キースの『LOS ANGELES 1993: MIKE MILLARD MASTER DAT』と同様、晩年のミラードがDATを用いて録音した公演が同じくストーンズ・ソロだったというのは面白い新事実。それ故、いつものナカミチ・デッキ&カセット録音のようなミラードならではの音圧は感じられないのですが、代わりにDATならではのクリアネスが輝きを放っている。さらに録音が『SLIDE ON THIS』収録曲の「Show Me」の後半から始まっている状態を差し引いても楽しめるクオリティ。実際JEMSをして「ミラードの不慣れなDAT録音ながら十分に楽しめる音質」と評しているのも納得というもの。何より今となっては懐かしさいっぱいの『SLIDE ON THIS』ツアー。ロニーが出した久しぶりのソロ・アルバムであったことが大きな話題を呼び、翌年早々には来日公演が実現したことで我々にとってはなおさら懐かしさを覚えるツアーかと。そうして話題を呼んだが故に当時はいくつかのアイテムがリリースされたのも今は昔。同ツアーから本当に久しぶりの発掘音源というだけにとどまらず、それが高音質のミラード録音ともなればマニア感涙の発掘ですらある。ライブの六割でリード・ボーカルをストーンズ・サポートのバーナード・ファウラーが歌うという構成も今となっては懐かしく、彼がリードを取る「It's Only Rock 'N' Roll」でのアツい盛り上がりも改めて聞くと新鮮の一言。未だストーンズでのライブ演奏が叶わない「Pretty Beat Up」は当時も大きな話題を呼びましたが、改めて聞いてみてもバーナードとロニーが掛け合いで歌うライブアレンジは充分にカッコイイ。そして何と!録音の最後にはミラードの話し声まで入っています(!)。過去にもフロイドの75年LAスポーツ・アリーナの録音開始時に彼の声が少しだけ入っていたことがありましたが、今回は録音を終えて友人たちと和やかに会話し、なおかつ会場を出てレコーダーに向かってマイクテストして録音を止めるところまでがっつり捉えてくれている。なるほど、これをJEMSがミラード・マスター公開のラストに選んだのも納得の新発掘DAT録音。単なる新発掘オーディエンスだけにとどまらない、晩年のミラードを偲ばせてくれる驚きのドキュメント。The Palace, Los Angeles, CA, USA 18th November 1992 PERFECT SOUND Disc:1 (60:49) 1. Show Me 2. Flying 3. Breathe On Me 4. (I Know) I'm Losing You 5. Josephine 6. Black Limousine 7. Pretty Beat Up 8. Seven Days 9. Band Introductions 10. Silicone Grown 11. Little Red Rooster Disc:2 (24:40) 1. I Can Feel The Fire 2. It's Only Rock 'N' Roll 3. Guitar Medley includes That's All You Need Gasoline Alley Prodigal Son Amazing Grace 4. Stay With Me 5. Millard Outro Ron Wood - Guitar, Vocals Bernard Fowler - Vocals Ian McLagan - keyboards Johnnie Lee Schell - Guitar Shaun Solomon - Bass Wayne P. Sheehy - Drums