パンデミック明けの世界に襲いかかった鋼鉄神の50周年ツアー“50 HEAVY METAL YEARS”。公式ライヴアルバムの残されなかったツアーを脳みそに流し込んでくれるマトリクス・アルバムが登場です。そんな本作が記録されたのは「2022年7月26日ヴィエンヌ公演」。そのオリジナルIEM音源と極上オーディエンスを駆使したマトリクス音源です。“50 HEAVY METAL YEARS Tour”は半世紀の集大成という一大事業だったにもかかわらず、公式ライヴアルバムが制作されなかったどころか、結局フル・サウンドボードも1本も登場しませんでした。本作は、そんな歯がゆい想いを払拭してくれる復讐の一撃。コレクター待望の極上マトリクス・アルバムなのです。その気になるクオリティの前に、まずはショウのポジション。そもそも50周年ツアーは2020年に計画されていましたが、新型コロナ禍によって延期。2021年からスタートしました。すでに2年以上が経っていますし、今一度スケジュールから振り返ってみましょう。2021年・8月15日『BLOODSTOCK OPEN AIR 2021』・9月8日ー26日:北米#1(13公演)《9月26日:リッチー・フォークナー緊急手術》2022年・3月4日ー4月13日:北米#2(23公演)←※OAKLAND 2022他・5月31日ー8月7日:欧州(33公演)←★ココ★《セットの大幅変更》・10月13日ー11月2日:北米#3a(14公演)・11月5日:ロックの殿堂セレモニー・11月7日ー12月6日:北米#3b(17公演)・12月9日ー18日:南米(5公演)オリジナルIEMシリーズでも最高傑作となるサウンド これが“50 HEAVY METAL YEARS Tour”の全体像。実施が遅れただけでなく、ツアー中にリッチー・フォクナーが大動脈解離を発症して緊急搬送。半年ほど延期となるトラブルも起きました。本作のヴィエンヌ公演はツアー再開してから凱旋した「欧州」レッグ。その27公演目にあたるコンサートでした。熱心なコレクター諸兄ならお気づきかも知れませんが、このショウはツアーを代表する極上級オーディエンス録音が残された事でも有名。『VIENNE 2022』も定番となってきましたが、もちろん本作は完全に別モノ。記録家本人から譲られた本作だけのオリジナルIEM傍受音源を最大限に活かした新名盤なのです。そのサウンドは、まさに「サウンドボード代わり」。オーディエンス録音由来の生々しい手拍子も吸い込まれていますが、肝心要の演奏音&ヴォーカルは完全にゼロ距離&ド密着。実のところ、1曲目「One Shot At Glory」のイントロまではオーディエンス録音のみなのですが、歌い出しと共にIEMサウンドに様変わり。一気に鮮やかになるサウンドの向上ぶりに、IEMソースの凄まじさが体感できるでしょう。しかも、本作はマトリクス基準でも大傑作クラス。本稿に目を留められた方なら昨年末の『LYON 2024: IEM/AUD MATRIX』『PARIS 2024: IEM/AUD MATRIX』も体験されていると思いますが、本作はあの2連作よりも良い。2024年篇の2連作はIEMソースのクセが強くて詰まり感がありましたが、本作は艶やかリッチ。この感触差をラジオに喩えるなら、2024年編はAM放送っぽく、本作はFM放送っぽい。本作の方がより「サウンドボード代わり/オフィシャル代わり」に相応しい逸品なのです。50年の鋼鉄史を濃縮したフルショウそんな極上級マトリクス・サウンドで描かれるのは、半世紀の鋼鉄史を総括するフルショウ。その豪華っぷりを思い起こすため、最後にフルセットを整理しておきましょう。ペインキラー(3曲)・One Shot At Glory(★★)/Hell Patrol(★)/Painkiller その他(12曲)・殺人機械:The Green Manalishi (With The Two Prong Crown)/Hell Bent For Leather・ブリティッシュ・スティール:Breaking The Law/Living After Midnight・復讐の叫び:You've Got Another Thing Comin'/Electric Eye・背徳の掟:Freewheel Burning(★)/The Sentinel・その他:Victim Of Changes/Diamonds & Rust/Turbo Lover/Lightning Strike ※注:「★」印は50周年ツアー以降に演奏していない曲。特に「★★」印はこのツアーだけの限定曲。……と、このようになっています。3曲選ばれているのは『PAINKILLER』だけで、他アルバムはすべて1?2曲のみ。幅広く栄光の50年を濃縮しているのがよく分かります。その中で特別中の特別なのが「One Shot At Glory」でしょう。『PAINKILLER』35周年を掲げる今年の“SHIELD OF PAIN Tour”での復活も噂されていますが、今のところ“50 HEAVY METAL YEARS”でしか披露されていない限定曲です。半世紀に及ぶ鋼鉄史を約90分に濃縮した超剛金ライヴアルバムです。本来であれば、公式ライヴ作が残されて然るべきフルショウを脳みそに刻みつけてくれるオフィシャル代わりの待望作。「2022年7月26日ヴィエンヌ公演」のマトリクス・アルバム。本作だけのオリジナルIEM音源と極上オーディエンスを駆使した銘品で、FM放送級の新名盤。これまでフル・サウンドボードの1本もなかった「50周年ツアー」を脳みそに刻み込んでくれる「サウンドボード代わり/公式代わり」を務める絶対作です。Theatre Antique de Vienne, Vienne, France 26th July 2022 IEM (from Original Masters) Disc:1 (40:32) 1. Intro: War Pigs 2. Battle Hymn 3. One Shot At Glory 4. Lightning Strike 5. You've Got Another Thing Comin' 6. Freewheel Burning 7. Turbo Lover 8. Hell Patrol 9. The Sentinel Disc:2 (48:59) 1. Victim Of Changes 2. The Green Manalishi (With The Two Prong Crown) 3. Diamonds & Rust 4. Painkiller 5. The Hellion 6. Electric Eye 7. Hell Bent For Leather 8. Breaking The Law 9. Living After Midnight