デヴィッド・カヴァデール、ジョン・サイクス、コージー・パウエル、ニール・マーレイ……史上最強のカルテットが揃っていた1984年のWHITESNAKE。その最重要プロショットが3DVDで復刻です。その最重要作に収められているのは「1984年8月11日+12日:西武ライオンズ球場公演」。35年前に実現した日本洋楽史に残る巨大イベント“スーパー・ロック’84”に参加した際のマルチカメラ・プロショットです。このフェスは、まさに時代の象徴でした。世界的にHR/HM黄金期を告げたのは1983年のUSフェスティバルでしたが、日本では間違いなく“スーパー・ロック’84”だった。しかも単に海外フェスの輸入ではなく、キッチリと日本主導だったのが大きい。後年になって映画化もされたANVIL、若き日のBON JOVI、一大ブレイクを果たしたSCORPIONSを従えてダブル・ヘッドライナーを務めたのがMSGとWHITESNAKE。数年違えばBON JOVIが、同年でも他国であればSCORPIONSが大トリだったでしょうが、あくまでも“1984年の日本人気”をストレートに反映。日本でもHR/HMが黄金時代を迎えた象徴だったのです。そんなフェスは列島をツアー形式で縦断しただけでなく、WHITESNAKEでの単独公演も行われました。記録の意味でも、当時の日程を振り返ってみましょう。 ・8月4日:ナゴヤ球場・8月6日:福岡スポーツセンター・8月8日:南港フェリーターミナル前広場・8月9日:南港フェリーターミナル前広場・8月11日:西武球場 【本作ディスク1&3】・8月12日:西武球場 【本作ディスク2】・8月15日:宮城県民会館(単独公演) ・8月16日:北海道厚生年金会館(単独公演)最後2公演は単独でしたが、本作の西武ライオンズ球場公演はその直前となるフェス・ツアーのハイライト。本作は、この2公演から生まれたマルチカメラ・プロショット3種を最高峰クオリティで永久保存した3枚組なのです。それでは、それぞれご紹介していきましょう。 【ディスク1:8月11日(夜)の完全版プロショット】 まず登場するのは、西武球場2DAYSの初日“8月11日”。このショウは公式でも映像がリリースされていますが、本作はその制作過程となる流出マスター。カットの多かったオフィシャル版とは違い、フルショウをシームレスに楽しめる完全版プロショットなのです。この完全版が初めて世に出たのは名作『KINGS OF THE NIGHT』。その登場は、まさに衝撃でした。オフィシャル未収録の「Walking In The Shadow Of The Blues」や「We Wish You Well」が観られるだけでなく、インタビューを挿入するために頭や後半が削られていた「Gambler」「Guilty Of Love」「Don't Break My Heart Again」やコージーのドラムソロも完全形。それどころか、開演前もサウンドチェックまで収録したフル・ステージだったのです。その衝撃は発掘と同時に伝説と化したのですが、本作はそんなLangley版さえも凌駕する最高峰バージョン。詳しいジェネは不明なのですが、本作はコージーが所蔵していたPALベータ・マスター(いわゆる“コージー・テープス”コレクション)からダイレクトにデジタル化したもの。Langley版をご存じの方ならご記憶と思いますが、初登場マスターには不自然な日付テロップが被せられていましたが、本作はそれもなく下地に隠されていたクレジットも生々しい大元バージョンなのです。もちろん、テロップはコージー・テープの証明にすぎず、それ以上に素晴らしいのは映像美とサウンド。グッと美しくなったクオリティは圧倒的で、見やすさも安定感もアップ。さすがにオフィシャル版には及ばないものの、間違いなく“完全版の最高峰”を更新しているのです。その映像美で描かれるショウは、全世界が望んで止まない“サイクス&コージー時代の頂点”。サイクス在籍時にはいくつかのサウンドボード録音も残されてはいますが、それらは前座公演がほとんどでやけに短いショウばかり。本作もフェス出演ではあるものの、大トリだけに長尺。実際、世界的にも4人編成でコージーのドラムソロまで行われたのは日本だけであり、本作はそのフル・スケールをマルチカメラ・プロショットで体験できてしまう。そのドラムソロも「Mars, The Bringer Of War」をテーマにしたバージョンであり、マルチカメラで観られる唯一のショウ(もう1公演プロショットが残されていますが、そちらはワンカメ)。バンド的にもコージー個人的にも頂点を究める完全映像なのです。 【ディスク2:8月12日(昼)の完全版プロショット】 そんな初日公演に続くのは西武球場2日目“8月12日”の完全版プロショット。初日と同時に『KINGS OF THE DAY』として発掘された映像ながら、ディスク1と同じく“コージー・テープス”コレクションからダイレクトにデジタル化されたアップグレード版です。そして、その衝撃はディスク1をも上回る。何しろ、2日目は初日とは違って一切の公式リリースがなかった。「あの曲が多い」「このシーンも観られる」ではなく、全曲・全シーンすべてが公式版とは異なり、1秒1秒が驚きの連続でフルショウを貫いてしまうマルチカメラ・プロショットなのです。しかも、単に演奏が違うだけでもない。“スーパー・ロック’84”はWHITESNAKEとMSGが日替わりでヘッドライナーを交換していたのですが、この日のトリはMSG。そのためコージーのドラムソロはないものの、それ以上に新鮮なのが光景そのもの。時間の早い出演のために日が高く、ステージの隅々までよーく見える。文字どおり、最強の4人が“白日の下に晒される”映像なのです。日の光に照らされたカヴァデールはマッチョで健康的なテンションを爆発させ、日本語MC「オゲンキデスカ」「ミンナゲンキ!?」も飛ばしまくりの絶好調。サイクス時代のプロショットと言えば、翌1985年のROCK IN RIOも有名ですが、そちらはカヴァデールの声が荒れ、コージーも脱退を決意していて殺伐としている。それに対し、本作は艶やかな歌声と一体化したアンサンブルが絶品なのです。その蜜月感を感じさせるのがサイクス。某ネズミ・キャラ(の偽物?)Tシャツで、初日の貴公子然とした佇まいとは違い、25歳になったばかりの無邪気さ丸出しで暴れまくる。しかも、このTシャツはコージーやカヴァデールも着ていた(公式プロショットのオフ・シーンで観られます)。お揃いで買ったのか着回ししたのか分かりませんが、現在では想像も付かない仲の良さです。そして、この2日目はニールもポイント。初日よりも大きくミックスされたベースが素晴らしく、流麗なラインがたっぷりと味わえるのです。さらにパフォーマンス以上に鮮やかなのが“1984年の日本”。初日の客席は闇夜に隠されていましたが、こちらは隅々までハッキリ。これがもう、凄いスペクタクル。単に前方席の盛り上がりが見えるだけでなく、各メンバーの表情ドアップも遠い遠いスタンド席の人の群れを背景にしている。日本公演の映像というとどうしても屋内や暗闇が多くなってしまうものですが、この映像には紛れもないスタジアム級の巨大スケールが画面いっぱいに広がる。1984年に爆発したHR/HMの熱気がダイレクトに吹き出してくる歴史的プロショットでもあるのです。 【ディスク3:8月11日(夜)の公式プロショット】 最後のディスク3は、ボーナス的な1枚。当時オフィシャルにリリースされた日本盤レーザーディスクを精緻にデジタル化したもの。もちろん、2014年に『LIVE IN '84: BACK TO THE BONE』として公式DVD化されていますが、本作はそれ以前に起こされ「レーザーディスク版の決定盤」として絶賛されたものです。実際、その映像美も音声もオフィシャルDVDに勝るとも劣らないから驚く。公式DVDもマスターテープからデジタル化されていました(ただし編集済みのもの)が、1ジェネ下なはずのレーザーディスク版はまったく劣っていない。これは恐らくレーザーディスクの保存性。磁気で記録されたテープよりもレーザーディスクの方が経年劣化に強く、本作はそのミント盤から起こされている。その瑞々しさは圧倒的で、色合いも派手好みな公式DVDよりナチュラルで、なぜかモノクロ加工されていたインタビュー・シーンもフルカラー。そのため、公式化が実現した現在もなお海外マニアの間で「35年前をより正確に描いているのはレーザーディスク」と言われ、他のアーティストでもまずますレーザーディスクが見直される契機とさえなりました。本作は、その最上級版を永久保存しているのです。WHITESNAKEの商業的な頂点は1987年以降ですが、バンドとして頂点を究めていたのは間違いなく1984年でした。その頂点となるショウを最高峰のクオリティで味わえるプロショット3枚組です。5年前の30周年にもご紹介したバージョンではありますが、その素晴らしさゆえにあっと言う間に完売・廃盤となりました。しかし、本作は白蛇栄光の歴史でも2つとない頂点作。それが入手できないのはロック文化の損失。あってはならない事です。35周年に再び甦った一大・超傑作。 Seibu Stadium, Saitama, Japan 11th & 12th August 1984 PRO-SHOT(from Original Video Masters) Taken from the original PAL Beta Video Tape (Sony L-750) belonged to Cozy Powell Taken from the original PAL Beta Video Tape (Sony L-750) belonged to Cozy Powell Disc 1(80:31) Live at Seibu Stadium, Saitama, Japan 11th August 1984 1. Soundcheck 2. Introduction 3. Gambler 4. Guilty Of Love 5. Love Ain't No Stranger 6. Ready An' Willing 7. Slow An' Easy 8. Crying In The Rain 9. Guitar Solo 10. Soldier Of Fortune 11. Drum Solo 12. Ain't No Love In The Heart Of The City 13. Don't Break My Heart Again 14. Walking In The Shadow Of The Blues 15. We Wish You Well PRO-SHOT COLOUR NTSC Approx.81min. Disc 2(64:26) Live at Seibu Stadium, Saitama, Japan 12th August 1984 1. Introduction 2. Gambler 3. Guilty Of Love 4. Love Ain't No Stranger 5. Ready An' Willing 6. Slow An' Easy 7. Crying In The Rain 8. Guitar Solo 9. Soldier Of Fortune 10. Ain't No Love In The Heart Of The City 11. Don't Break My Heart Again 12. Walking In The Shadow Of The Blues PRO-SHOT COLOUR NTSC Approx.64min. Disc 3 (55:24) Super Rock '84 In Japan: Laser Disc Edition Live at Seibu Stadium, Saitama, Japan 11th August 1984 Taken from the original Japanese Laser Disc (78C58-6092) 1. Introduction 2. Gambler 3. Interview (Coverdale) 4. Guilty Of Love 5. Love Ain't No Stranger 6. Ready An' Willing 7. Slow An' Easy 8. Crying In The Rain 9. Guitar Solo 10. Soldier Of Fortune 11. Interview (Sykes, Murray, Powell) 12. Drum Solo 13. Ain't No Love In The Heart Of The City 14. Interview (Coverdale) 15. Don't Break My Heart Again 16. Guilty Of Love (Outro.) PRO-SHOT COLOUR NTSC Approx.55min. David Coverdale - Vocals John Sykes - Guitar Neil Murray - Bass Cozy Powell - Drums Richard Bailey - Keyboards