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Paul McCartney ポール・マッカートニー/Tokyo,Japan 3.9.1990 Upgrade

ポール・マッカートニーの初来日は結果大成功に終わったのですが、それまでのツアーで重なった過労から、直前になって日程が変更されるという、それまでウイングスで二回の来日中止を味わされた日本のファンに対する最後の試練ともいうべきハプニングが起きました。この変更によって東京ドームに行けなくなったファンが居たわけで、それ以前に土壇場での変更というアクシデントに対する善後策として導入されたのがコンサートのパブリック・ビューイング形式での生中継で、当時はクローズド・サーキットと呼ばれていたもの。先の問題があまりに土壇場での変更だったことから、今さらどこかのテレビ局にライブ収録と放送の契約を結ぶには時間がなさすぎる。そこで考えられた苦肉の策でした。皮肉にもこの方針のおかげで結果的にポール初来日公演で二日分のプロショット映像が残されることになったのは幸運でした。奇しくもビートルズの初来日公演と同じ状況です。クローズド・サーキットで生中継するからには準備が必要となり、そこで3月9日に予定されていた本番と同じセッティングによるテスト収録が7日のショーで実行されます。一か月前に東京ドームで行われていたローリング・ストーンズのテレビ用収録においてもテスト撮影の日が設けられていたことからも分かるように、当時はこうした念入りな準備が欠かせませんでした。そして無事に9日のクローズド・サーキットによる各地でのコンサート生中継が遂行された訳ですが、どちらの映像もクローズド・サーキットのイベントに絡んだ地方局を介して録画されたビデオが流出、コンサートの終了から半年足らずで二つのショーのプロショット映像が流出したことにはひどく驚かされたものです。いま振り返ってみてもインターネットもない時代、よくぞあれほどのスピードで流出してくれたと感心させられます。もっとも二公演もプロショットが見られる…と手放しで喜べる状態でなかったのが一筋縄ではいかないところ。7日の方は完全収録ながら画質が粗く、反対に9日の方は当時としてはかなりクリアーな画質でしたが「Let It Be」が始まったところで録画が終了という不完全収録。それぞれ一長一短な状態だったのです。よくできたものですね。いずれにせよストーンズと違ってテレビ放送が実現しなかったポールの初来日公演から二種類ものプロショット映像が出回ったことで、当時全盛を極めていたブートビデオ店へ瞬く間に広まり爆発的なセールスを記録。当時入手したマニアも多数おられるのでは。それらをご覧になられた方なら分かるように、当時から粗い画質に感じられた7日の映像は今見ると厳しいものがある。よってDVDの時代を迎えるとアイテムがリリースされる頻度は9日の方が圧倒的になりました。とはいえ多くのアイテムがリリースされてきた9日の映像に関してもDVDにするレベルとしては粗い画質な感は否めません。おまけにビデオの流出からDVDのアイテムが登場するまでに15年ほどの歳月が経過しており、入手したビデオのダビング回数はもちろん、経年によるテープそのもの劣化という現実的な問題が付け加えられることになったのです。実際、現在手に入るDVDバージョンの多くでは、画面の上下にノイズが入り、なおかつ揺れが生じるといったビデオテープの劣化特有の症状が見られます。しかし今回マニアから提供されたベターコピーのビデオテープはコンディションが非常に良好で、そうした経年特有のノイズがほとんど入らなかったのです。もちろん今回もまだマスタークオリティと呼べるようなレベルの画質ではないのですが、それでも過去にリリースされてきたアイテムよりは若干ながら画質の向上も見られたことからリリースと相成りました。そのリリースに際しては、映像や音声の問題も可能な限りレストア。面白いことに本映像はどのバージョンでも「Band On The Run」で画質の劣化が集中しており、アイテムによってはビデオの劣化による横線が周期的に入ってしまう状態のままでDVD化されたものまであるほど。しかし今回のバージョンは微弱な音切れだけにとどまっており、これがベターコピーの証となるでしょう。それでいてこの問題に関してもレストアしています。ポール1989年から90年にかけてのワールドツアーといえば映画が作られており、それが「GET BACK SPEED CORRECTED EDITION」としてリリースされたのは記憶に新しいところ。あの演出感が満載な映画(笑)のピッチがようやく補正されて一気に見やすくなったものです。それと比べて純正のライブ映像というのはやはり格別。色々と違和感のある仕上がりが今となっては目立つ映画「GET BACK」は観客の姿が映りすぎるきらいがありましたが、反対に本映像はステージそのものを生中継という目的から、客席がほとんど映らず演奏をじっくりと鑑賞できる。また、これまでリリースされてきたDVDアイテムと違い、コンサート開始前に楽屋入り口で行われたポールのインタビューと同年のグラミーにおける特別功労賞を授与される場面が収録されているのもポイントが高い。当時すでにグラミー賞の場面はリアルタイムで日本でも放送されていましたが、その時より的確な字幕が加えられているのがまたポイント。グラミー賞での放送時には「レイ・チャールズやスティービー・ワンダーには背中がチクチクした」とおかしな訳がされていたのに対し、ここでは「背中がゾクゾクした」とより正確に訳されているからです。そして各地で公開されるクローズド・サーキットということから、ポール以下バンドが明らかに収録を意識している様子が微笑ましい。ただしポールの歌声自体はスケジュールを組みなおした程の不調に見舞われたせいで「Got To Get You Into My Life」や「Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band」辺りになると歌うのが辛そう。この辺りがテレビ放送の実現しなかった理由かもしれません。しかし、それを押しての熱演ぶりが小細工のない映像故に伝わってくるのも確か。また意外なところではロビー・マッキントッシュが客席に向かって何度か手を振ってみせている。あるいはウイングス時代にはデニー・レインが叩いていた「Let 'Em In」の太鼓をリンダが叩いてみせる姿が大写しとなるのも今となっては貴重かと。こうした場面も含め、今となっては懐かしさ一杯の初来日公演から生み出された定番プロショット映像。まさに定番中の定番ではあるものの、画質という点では未だに不満の残る映像でもある。それが今回のベターコピーからのDVD化によって、過去のアイテムよりもずっと安定した状態で楽しめるアイテムのリリースが実現します。かといって日本公演後に行われたリオでのライブ映像より見やすいのも確か。それに何といっても小細工なしの純正ライブ映像として見られる1990年東京ドームは実に素晴らしい! Live at Tokyo Dome, Tokyo, Japan 9th March 1990 PRO-SHOT DVD (121:56) 1. Interview ★既発未収録2. Opening Film: Grammy Awards 1990★既発未収録 Grammy Awards honoring Paul McCartney with the Lifetime Achievement Award on 21st February 1990 3. Figure Of Eight 4. Jet 5. Got To Get You Into My Life 6. Rough Ride 7. Band On The Run 8. We Got Married 9. Let 'Em In 10. The Long And Winding Road 11. The Fool On The Hill 12. Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band 13. Good Day Sunshine 14. Can't Buy Me Love 15. Put It There 16. Things We Said Today 17. Eleanor Rigby 18. This One 19. My Brave Face 20. Back In The U.S.S.R. 21. I Saw Her Standing There 22. Coming Up 23. Let It Be PRO-SHOT COLOUR NTSC Approx.122min.

Paul McCartney ポール・マッカートニー/Tokyo,Japan 3.9.1990 Upgrade

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