同じクレイジー・ホースでも大々的なアメリカ・ツアーと、そこからの副産物カウ・パレスでの生中継ライブという決定的な存在があった1986年と違い、87年のクレイジー・ホースとのツアーに関してはライブ映像の存在そのものが乏しい時期でした。そうした恵まれない状況の中にあって唯一のプロショット映像と言っていいのがミラノ公演のテレビ放送でしょう。とはいっても実際の演奏時間の半分にまで短縮編集されてしまい、なおかつ80年代のPAL変換という障壁にも阻まれて画質が粗いという問題まで抱えていた癖アリ映像だったのですが。そこに加えて80年代のヨーロッパテレビ放送にありがちな野暮ったいテロップ、極めつけは上から被せられた不釣り合いな歓声が随所で登場するのもいただけなかった。こうした性質上、非常に貴重なプロショット映像でありながら、それでいて有難みの薄い存在でもあったミラノのテレビ放送なのですが、この秋YouTube上で未編集の元映像がひょっこりと流出して世界中のマニアを驚かせています。そもそも35年前のテレビ放送の未編集ビデオ素材が現存していたということは大きな驚きでしかありません。そこは流出映像ということで「Down By The River」で数回のカットが入ってしまう点が玉に瑕なのですし、それ以外は当時の放送でカットされていた曲もばっちり見られてしまう驚きのレア映像でもあるのです。それに何と言ってもあの野暮ったいテロップ、さらには曲間だけでなく間奏などにも挿入されてしまった歓声の演出が一切なく、元の放送とは比べ物にならないほど充実した状態で87年ヨーロッパ・ツアーを再現してくれる超貴重プロショット映像が現れてくれたのでした。元の映像はオープニング「Mr. Soul」の後半からの収録となっていましたので、今回のリリースに際して欠損部は当時の放送バージョンを補填。実に自然なつながりで演奏をフルに見られるのはもちろん、この一曲だけで放送時の不自然な演出と今回の映像を見比べられる状態となったのです。さらにYouTube上に現れた際には若干ながら画面が縦に圧縮されており、なおかつ音がずれてしまう箇所も散見されました。どちらの問題に関しても今回のリリースに際してアジャスト。DVDでのリリースではありますが、抜かりはありません。そして袖をちぎったネルシャツでステージを闊歩した86年ツアーと違い、鉄道模型メーカーのオレンジシャツを着たニールの姿はこれぞ87年の姿。映画「YEAR OF THE HORSE」で見られたように、メンバー間のもめごとも絶えなかったツアーとしても知られるところで、実際「Powderfinger」ではニールが構成を間違えてしまい、演奏中にもかかわらずベースのビリー・タルボットが彼に詰め寄る場面が捉えられているのがドキュメント性高め。もっとも、そうしたネガティブ要素まで演奏のボルテージに昇格させてしまうところがニール・ヤング&クレイジー・ホースらしいところで、当時の放送ではカットされてしまったラスト「Hey Hey, My My」におけるニールのハイテンションぶりは圧巻。そんな一番イイ演奏が初めて見られるようになったのはもちろん、レアな演奏として話題となった「See The Sky About To Rain」の場面も余計な演出なしでばっちり見られる。そもそも画質自体がテレビ放送よりずっと良い。PalaTrussardi, Milan, Italy 5th May 1987 PRO-SHOT (116:03) 1. Intro 2. Mr. Soul 3. Prisoners Of Rock And Roll 4. Computer Age 5. Cinnamon Girl 6. Down By The River 7. Comes A Time 8. See The Sky About To Rain 9. The Loner 10. When Your Lonely Heart Breaks 11. Drive Back 12. Opera Star 13. Cortez The Killer 14. Heart Of Gold 15. Mideast Vacation 16. Long Walk Home 17. Powderfinger 18. Like A Hurricane 19. Hey Hey, My My (Into The Black) Neil Young - vocals, guitar, piano, harmonica Frank Sampedro - guitar, vocals Billy Talbot - bass, vocals Ralph Molina - drums, vocals PRO-SHOT COLOUR NTSC Approx.116min.