クラプトンの一つのピーク「ジャーニーマン・ツアー」の未公開オーディエンスショット映像!エリック・クラプトンの90年の「ジャーニーマン・ツアー」と言えば、中盤にアコースティックセットを設けることなく、徹頭徹尾エレクトリックでギンギンにロックしていたステージで、そこでのクラプトンの弾き捲りぶりは長い彼のキャリアでも一つのピークだったと考えられています。さらにロングヘアにジャンニ・ベルサーチのドレススーツを身に纏ったメガネなしのルックスは非常にかっこいいもので、特に人気の高いツアーでした。今年オフィシャルリリースされた「THE DIFINITIVE 24 NIGHTS」でもその圧倒的なかっこよさとパフォーマンスの凄さは実感できました。そんな中、突如8月29日の全米ツアー・セカンドレグ中盤、セントルイス公演の良好な未公開オーディエンスショット映像が出現しました。これまで完全に未公開だったものです。アングルはステージに向かって左45度くらいの2階スタンドからのもので、前方には一切障害物がない状態で良好に収録されています。クラプトンを二―アップで捉えており、ビデオテープ時代だったため、若干ピントは甘いものの、表情まで分かるレベルです。方向的にギターがよく見え、ベストアングルと言えます。但し、ステージ後半部分からの収録となっているところと、三脚でしっかり固定した映像ながら、時折フレームアウトする箇所があったりするのが残念な点です。しかし終始クラプトンを中心に捉えており、音声にも問題はないことから、かっこいいクラプトンのステージに観入ってしまいます。この日のクラプトンは、ベルサーチデザインのラメホワイトのストライプ入りのブラックスラックスに無地のブラック半袖Tシャツといういで立ちです(恐らくスラックスとセットアップのジャケットは、ステージ中盤までに脱いだのでしょう)。ロックファンなら観ておいて損はないレベルの映像です。「決意」のクラプトン。その迫力のステージ!それでは1990年の「ジャーニーマン・ツアー」の日程を振り返ってみましょう。《1989年11月7日:アルバム「JOURNEYMAN」リリース》・1月14日~2月10日:ロンドン、ロイヤル・アルバート・ホールにて18夜連続公演「18 Nights」を含むイギリス国内ツアー・2月14日~3月5日:北欧を含むヨーロッパツアー ・3月24日~5月5日:アメリカンツアー・ファーストレグ ・6月6日:ニューヨーク、レキシントンのアーモリーにて、「インターナショナル・ロック・アワード」受賞・6月30日:イギリス、ネブワースにて行われた「シルバークレフ・アワード・ウィナーズ・コンサート」(通称ネブワース・フェスティバル)に出演・7月21日~9月29日:アメリカンツアー・セカンドレグ ←★ここ★・10月3日~10月21日:南米ツアー・11月7日~11月29日:オセアニア&東南アジアツアー・12月4日~12月13日:ジャパンツアー これを見ると、文字通りのワールドツアーに明け暮れた年だったことがお分かりいただけるでしょう。その中にあって、この日はヨーロッパツアーの最終日、ロンドンで「18Nights」を成功させて脂が乗ってきた時期であり、一つの節目を迎えたタイミングでもありました。クラプトンの気合が入らないわけがありません。オープニングから飛ばし捲っています。各曲のギターソロはもうギンギンの弾き捲りです。冒頭2曲は当時の最新アルバム「JOURNEYMAN」からのナンバーで、あの名盤の楽曲のライブ映えするバージョンを目にすることができます。Old Loveの泣きのプレイにはぐっと来ます。CocaineもLaylaも凄いです。顕著なのは、オーディエンスの歓声、拍手、喝采が異常なほどに凄いことです。心からクラプトンのプレイを称えていることが判るような物凄い盛り上がりです。それもそのはず、この日は、ツアーで共演したスティーヴィー・レイ・ヴォーンがヘリコプターの墜落事故で命を失って僅か3日後(2公演目)だったのです。レイ・ヴォーンとともに親しいツアースタッフも失ってしまったクラプトンは、そのショックの大きさからツアーの続行を断念しようとしました。しかしバンドメンバーとも協議し、亡くなった人たちの遺志も継いで待っていてくれるファンのため、ツアーを完遂することを決意したのでした。それを知ったセントルイスのファンが感激しないはずはなかったのです。事故を起こしたレイ・ヴォーンのヘリコプターには、本来クラプトンが乗る予定だったとのこと。生き残った自分の運命を噛みしめながら全身全霊を込めてプレイするクラプトンの姿がここにあります。アンコール1曲目のCrossroadsでは、ソロに入ろうとする瞬間にギターの弦が切れてしまい、ソロをセカンドギターのフィル・パーマーに譲りながらギターをチェンジするという珍しいシーンもあります(クラプトンのソロはその後たっぷり聴けます)。クラプトンが自ら「世界最高のバンド」と称えた、このツアーのみのサポートミュージシャンたち このツアーをここまでクオリティの高いものにしたのは、実力のあるバンドメンバーに負うところが大きかったと言えます。ベースのネイザン・イースト、キーボードのグレッグ・フィリンゲインズ、ドラムのスティーヴ・フェローン、コーラスのテッサ・ナイルズ&ケイティ・キスーンは86年の「AUGUST」以来の信頼関係にあるメンバーで、クラプトンとの呼吸を知り尽くした人たち。セカンドギターのフィル・パーマーは89年からバンドに加わったセッションマン上がりの実力派のプレイヤーでした。決して「七光り」ではありませんが、キンクスのデイヴィス兄弟の甥に当たる人で、まったくミストーンのない的確で器用なプレイぶりは大いにクラプトンをフォローしていました。クラプトンにスカウトされたきっかけは、86年のイギリスのシンガーソングライター、ポール・ブレイディのアルバムセッションで出会い、88年のプロデューサー兼アーティストのジョン・アストリーのアルバムセッションで再会したことだったようです。キーボードのアラン・クラークは、87年のジャパンツアー時に フィリンゲインズのスケジュールが合わなかった際にクラプトンが親交のあるダイアー・ストレイツのマーク・ノップラーに相談して借り受けた人物でした。ダイアー・ストレイツでもシンセ担当のガイ・フレッチャーとの対比、役割分担をうまくこなしていた彼なので、クラプトンバンドでもフィリンゲインズとのすみ分けは見事です(フィリンゲインズはピアノとシンセ、クラークはオルガンメインです)。そしてイギリスでは古参のパーカッショニストであるレイ・クーパー(元エルトン・ジョン・バンド)がいました。改めて「世界最高のバンド」をこの映像でご確認ください。St. Louis Arena, St. Louis, MO, USA 29th August 1990 1. Before You Accuse Me 2. Old Love 3. Badge 4. Wonderful Tonight 5. Band Introduction 6. Cocaine 7. A Remark You Made 8. Layla 9. Crossroads 10. Sunshine Of Your Love Lineup: Eric Clapton - guitar / vocals Phil Palmer - guitar Greg Phillinganes - keyboards Alan Clark - keyboards Nathan East - bass / vocals Steve Ferrone - drums Ray Cooper - percussion Katie Kissoon - backing vocals Tessa Niles - backing vocals COLOUR NTSC Approx.77min.