脱毛症をカミング・アウトし、大胆なイメージ・チェンジを図ったジョー・リン・ターナー。心境の変化なのか、大きく変わったソロ・ライヴの変化前/変化後を目撃できる極上映像が登場です。そんな本作に収められているのは、ロシアのクラブ“1930モスクワ”の2公演。「2023年3月9日公演」をDISC 1、「同10月3日公演」をDISC 2に配した絶景オーディエンス・ショット2枚組です。現在のジョーはベラルーシ人の女性弁護士と結婚して当地に移住。先月は72歳にして授かった愛息の誕生もニュースになりました。その一方で2018年に心臓発作で倒れて以降、音楽活動はヨーロッパ圏内に限られているようです。まずは、そんな彼の近況をスケジュールで振り返りつつ、本作のポジションを確かめてみましょう。2021年・7月2日:Tuska Open Air出演《8月26日:脱毛症を公表》・9月24日:サンクトペテルブルク公演《10月28日『BELLY OF THE BEAST』発売》2022年・3月7日:サンクトペテルブルク公演・3月9日:モスクワ公演 ←★本作DISC 1★・9月10日ー17日:ブルガリア(6公演)・10月3日:モスクワ公演 ←★本作DISC 2★ これが2021年/2022年の活動概要……です、たぶん。いきなり頼りなくて申し訳ないのですが、心臓発作以降のジョーは情報が極端に少ない。身体を気遣って活動を抑えているのか、東欧の情報は伝わりづらいのか、あるいは昨今の世界情勢のせいなのか。ともあれ、旧共産圏と北欧フェスへの出演が活動域のようです。ここ数年はコロナもあってか年2ー3回のライヴ記録しかありませんでしたが、2023年は久々にブルガリアでミニ・ツアーも実施されたようです。本作のモスクワ2公演は、そんなミニ・ツアーを挟む前後のショウでした。究極絶景の最前列ショット そんな同会場2公演を捉えた本作は、同一人物が公開した姉妹映像でもある。しかも、クオリティも酷似。なんと両公演とも前方客ゼロ最前列から撮影されており、ステージ中央よりやや左寄りな角度までほぼ同一。断言はされていませんが、恐らく公開した人物はバンドか会場の関係者ではないでしょうか。そうとしか思えないほどの奇跡の一致なのです。さらに強烈な関係者感覚を醸しているのが自在なカメラワークと極上のサウンド。もちろん主役のジョーを中心に追っているわけですが、3人のギタリストのソロもそれぞれ遮蔽物のないポジションですし、オリジナルで追加したオブリまでしっかり見逃さない。一介の観客がこれほどの映像を撮影できるわけない……そう思えるほどの映像美と撮影技なのです。半年の間に生まれ変わったジョー 会場・視点・クオリティが酷似していながら、本作の2公演はまるで違う。まず第一に、ジョーのルックス。上記のように昨年のうちに脱毛症をカミング・アウトしていましたが、3月公演(DISC 1)では以前と同じようにウィッグを着用していた。その一方で10月公演(DISC 2)になるとスキンヘッド姿に変貌しているのです。ロブ・ハルフォードと言うかトニー・マーティンのような風貌だけでも新鮮ですが、実は見た目だけではなくショウ内容も大きく変化しました。これは曲目を見ていただくのが一番。ここで整理してみましょう。3月公演(DISC 1)《オリジナル:5曲》・レインボー:Death Alley Driver/Jealous Lover/I Surrender/Spotlight Kid・パープル:The Cut Runs Deep《カバー:10曲》・パープル:Hush/Perfect Strangers/Pictures Of Home/Black Night/Highway Star/Smoke On The Water/Burn・レインボー:Man On The Silver Mountain/Catch The Rainbow/Long Live Rock 'N' Roll 10月公演(DISC 2)《オリジナル:13曲》・レインボー:Death Alley Driver/Jealous Lover/Street Of Dreams/Stone Cold/Spotlight Kid・ソロ:Blood Money/Blood Red Sky/Angel/No Salvation・その他:The Devil's Road(HTP)/King Of Dreams(パープル)/The Cut Runs Deep(パープル)/Rising Force(イングヴェイ)《カバー:5曲》・パープル:Perfect Strangers/Pictures Of Home/Highway Star/Smoke On The Water・レインボー:Long Live Rock 'N' Roll ……と、このようになっています。ひと言で言えば「3月公演(DISC 1)」は従来通り。RAINBOW/DEEP PURPLEのグレイテスト・ヒッツで、イアン・ギランやロニー・ジェイムズ・ディオの曲もたっぷり歌っています。ところが「10月公演(DISC 2)」になると一転、自分の持ち歌とカバーの割合が逆転し、多彩なレパートリーをこれでもか!とブチかましてくれる。もちろん軸はRAINBOW/DEEP PURPLEにはなるものの、ギランやロニーの曲は激減してジョー自身のオリジナルが中心。さらにソロアルバムからも4曲を取り上げ、HTPの「The Devil's Road」やイングヴェイとの「Rising Force」まで披露してくれるのです。多彩な名曲群はショウの楽しさに直結するわけですが、それ以上に頼もしさに胸が熱くなる。ジョーのソロと言えば、お決まりの代表曲ラッシュと有名カバーと相場が決まっていました。それもジュークボックス的な良さもあったものの、「そんなに他人の曲ばっかりやらなくても……」という寂しさも拭えませんでした。ところが、本作(DISC 2)のジョーは違う。スキンヘッドも、今まで作ってきた名曲群も、実に誇らしげなのです。もっと早くこんなショウが観たかった……と思いつつ、まだ遅くないと思わせてくれるのが歌声。キーは下げ気味ではあるものの、ほとんど別人化している同世代のシンガー達とは違ってパワーも声質もジョーの魅力をしっかりと効かせてくれるのです。従来通りの人間ジュークボックなジョー(DISC 1)と、自身の多彩な名曲群を全肯定しているジョー(DISC 2)。たった半年で生まれ変わったような2公演を定点観測できる映像傑作です。MCで「次回は『BELLY OF THE BEAST』もやるぜ」と語り、さらなる進化を宣言したジョー・リン・ターナー。72歳にして「これから」が楽しみになる映像傑作の誕生です!「2023年3月9日/10月3日モスクワ公演」の最前列オーディエンス・ショット。2公演とも同じ人物が公開しており、ポジションも匠のカメラワークも同じ。恐らくは関係者が撮影した姉妹作と思われます。ただショウ内容は大きく異なり、「3月映像(DISC 1)」は従来通りながら「10月映像(DISC 2)」ではスキンヘッドを公開し、ソロやHTP、イングヴェイの曲も披露するキャリア全肯定のショウ。生まれ変わったジョーの清々しさに胸が熱くなる映像傑作です。1930 Moscow, Moscow, Russia 9th March & 3rd October 2023 AMAZING SHOT!!! Disc 1 1930 Moscow, Moscow, Russia 9th March 2023 1. Death Alley Driver 2. Hush 3. Jealous Lover 4. I Surrender 5. Perfect Strangers 6. Man On The Silver Mountain 7. Catch The Rainbow 8. The Cut Runs Deep 9. Spotlight Kid 10. Pictures Of Home 11. Black Night 12. Highway Star 13. Smoke On The Water 14. Long Live Rock 'N' Roll 15. Burn COLOUR NTSC Approx.99min. Disc 2 1930 Moscow, Moscow, Russia 3rd October 2023 1. Death Alley Driver 2. Jealous Lover 3. Street Of Dreams 4. Stone Cold 5. Spotlight Kid 6. Perfect Strangers 7. Band Introduction 8. The Devil's Road★ 9. Blood Money 10. The King Of Dreams 11. The Cut Runs Deep 12. Blood Red Sky 13. Angel 14. Drum Solo 15. Pictures Of Home 16. No Salvation 17. Highway Star 18. Rising Force★ 19. Long Live Rock 'N' Roll 20. Smoke On The Water COLOUR NTSC Approx.115min.