巨漢ケイン・ロバーツを従え、新進気鋭の重金属スタイルで復活を果たした80年代のアリス・クーパー。英国の象徴フェスへ殴り込んだ歴史的な体験型映像が登場です。その象徴フェスとは「1987年8月30レディング・フェスティバル」。カルトな現場を真空パックした伝説オーディエンス・ショットです。1987年と言えば、『CONSTRICTOR』の“THE NIGHTMARE RETURNS Tour”と、『RAISE YOUR FIST AND YELL』の“LIVE IN THE FLESH Tour”が切り替わる端境期。微妙な時期の違いで意味もショウ内容も変わってしまいます。まずはMCA時代をトータルで俯瞰しながら本作のポジションを探っていきましょう。1986年《9月22日『CONSTRICTOR』発売》・10月23日ー11月19日:北米#1(20公演)←※公式・11月23日ー12月5日:欧州#1(10公演)・12月12日ー12月31日:北米#2a(15公演)1987年・1月2日ー4月1日:北米#2b(59公演)・8月30日:レディング・フェス出演 ←★本作★9月28日『RAISE YOUR FIST AND YELL』発売》・10月15日ー12月31日:北米#3a(44公演) ←※NEW HAVEN 1987 1988年・1月1日ー3月6日:北米#3b(38公演)←※TORONTO 1988・4月1日ー5月6日:欧州#3(25公演)これが1986年ー1988年の帝王アリス・クーパー。本作のレディング・フェス出演は『RAISE YOUR FIST AND YELL』リリースの約1ヶ月前というタイミングでした。時期的には新作に伴う“LIVE IN THE FLESH Tour”のウォームアップでもおかしくないのですが、まだそこには踏み込んでいない。むしろ、半年前に終了していた“THE NIGHTMARE RETURNS Tour”の追加公演的なショウでした。そんな現場を伝える本作は、カルトなムードも満点のリアル映像。やや右寄りの中距離から撮影されているのですが、不思議なほど視界が広い。野外フェスは前方客で遮られやすく、あまりオーディエンス撮影向きとは言えないのですが、本作はその頭上を素通りしてステージを直写。さすがにビデオ普及期の80年代なので「プロショットのようなドアップ」とは行きませんが、シアトリカルなステージの様子が手に取るように観られるのです。そして、特筆すべきはサウンドで、野外だけに音を反射する天井や壁がない。そのため、PAが吐き出す出音を反響ゼロで拾っており、輪郭もくっきり鮮やかでディテールも微細部まで鮮明。すべての楽器がセパレート感もたっぷりに描かれるのですが、特に素晴らしいのはアリスのヴォーカル。えらくクリアに捉えられており、歌詞の一語一語どころか、そこ込められたニュアンスまでしっかりと味わえるのです。そんな映像美で描かれるのは、MCAメタル時代だからこそのフルショウ。前述のように、本作は“THE NIGHTMARE RETURNS Tour”の追加公演的なスペシャル・ステージ。同じ1987年ではあっても『NEW HAVEN 1987』では演奏しない曲もありますので、ここで比較しながら整理しておきましょう。コンストリクター(3曲)・The World Needs Guts(★)/Give It Up(★)/Teenage Frankenstein クラシックス(14曲)・ビリオン・ダラー・ベイビーズ:Billion Dollar Babies/No More Mr. Nice Guy/Sick Things(★)/I Love The Dead(★)/Elected(★)・悪夢へようこそ:Welcome To My Nightmare(★)/Cold Ethyl(★)/Only Women Bleed・その他:Be My Lover(★)/I'm Eighteen/Go To Hell/Ballad Of Dwight Fry(★)/School's Out/Under My Wheels※注:「★」印は“RAISE YOUR FIST AND YELL Tour”では演奏しなくなった曲。……と、このようになっています。ぶっちゃけた話が公式映像と同一セットなわけですが、本作のポイントはリアルな雰囲気。野外フェスではあるものの、アリスが出演したのは最終日の大トリ。現場は深い闇夜に覆われ、そこに赤系を基調とした照明に浮かぶステージがやたらと不気味なのです。そして、そのステージを見つめる現場ムードもやたらとカルト。ホラーなショウと夏フェスだからこそのスケールと開放感が何とも言えないマッチングなのです。例えば、母国アメリカのホール会場ではお馴染みの英雄を迎える熱狂に包まれるわけですが、本作は大洋を渡った英国。アリスはロック史の向こうからやって来た畏怖の対象なのです。本作からは、その異国情緒が肌感覚で味わえるのです。真夏の狂乱が終わり、忍び寄る秋の気配が混じり始めた英国フェス。その夜風がスピーカーから噴き出してきそうな体験型映像の傑作です。筋肉ギタリストを連れていたMCA時代そのものがアリス全史でも独得なムードでしたが、本作はその中でも濃厚なカルト感がムンムン。他のどの時期/会場でも味わえない唯一無二のショック・ロック。「1987年8月30レディング・フェスティバル」の伝説オーディエンス・ショット。野外フェスながら前方客の頭上を素通りする視界は広々としていて観やすく、音を反射する天井や壁がないために反響ゼロなサウンドもえらくクリア。ホラーなステージを英国ファンが畏怖の視線で見つめる中、筋肉ギタリスト:ケイン・ロバーツが暴れる異様な雰囲気。アリス全史でも他では味わえないカルトなムードがムンムンの1枚です。Little John's Farm, Reading, England 30th August 1987 AMAZING SHOT!!! 1. Pre-Show 2. Intro 3. Welcome To My Nightmare 4. Billion Dollar Babies 5. No More Mr. Nice Guy 6. Be My Lover 7. I'm Eighteen 8. The World Needs Guts 9. Give It Up 10. Cold Ethyl 11. Only Women Bleed 12. Go To Hell 13. Ballad Of Dwight Fry 14. Teenage Frankenstein 15. Sick Things 16. I Love The Dead 17. School's Out 18. Elected 19. Under My Wheels COLOUR NTSC Approx.78min. Alice Cooper - Vocals Kane Roberts - Lead Guitar Devlin 7 - Rhythm Guitar Kip Winger - Bass Paul Horowitz - Keyboards Ken Mary - Drums